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循環器・腎臓・高血圧内科学の涌井広道准教授が日本高血圧学会 第 12 回学術賞を受賞しました!

2022.10.31
  • TOPICS
  • 研究

ATRAPに関するこれまでの一連の研究成果が評価

横浜市立大学大学院医学研究科 循環器・腎臓・高血圧内科学の涌井 広道准教授は、国立京都国際会館においてISH2022 Kyoto(第29回国際高血圧学会)と同時開催された令和4年度日本高血圧学会において研究課題「アンジオテンシン受容体結合因子を標的とした脳心血管腎臓代謝内分泌病の病態連関制御」の研究成果により第 12 回学術賞を受賞しました。

この賞は、高血圧学の進歩に寄与する顕著な研究を発表し、将来発展の期待される研究者に対して授与される賞です。
受賞者
横浜市立大学大学院医学研究科
循環器・腎臓・高血圧内科学 准教授

涌井 わくい 広道   ひろみち


研究課題
アンジオテンシン受容体結合因子を標的とした脳心血管腎臓代謝内分泌病の病態連関制御

ー今回、受賞された研究成果について、涌井広道准教授に解説いただきました。

種々の病的刺激の持続による慢性的な細胞・組織の酸化ストレス増加や炎症反応亢進とそれらに伴う代謝系への悪影響によって、高血圧、腎臓病、糖尿病、脳心血管病などが発症・進展します。特に、組織局所における1型アンジオテンシン受容体(AT1受容体)情報伝達系の過剰活性化がもたらす組織レニン-アンジオテンシン系(R-A系)の異常亢進状態は、高血圧、腎臓病、糖尿病、脳心血管病を進展させる機序として重要です。一方、R-A系自体は生物の進化の過程で獲得されたように、生体内の水・電解質代謝や循環系の恒常性維持、および臓器発生・分化にとっては重要な生理的調節系でもあります。
AT1受容体結合性低分子蛋白(AT1 receptor-associated protein;;ATRAP)は、AT1 受容体への直接結合因子としてクローニングされ、心血管系細胞・組織におけるこれまでの検討から、ATRAPは、細胞・組織表面に存在するAT1受容体の細胞内取り込み(internalization)を促進し、臓器の発生・形態形成や恒常的生理機能維持を担うAT1受容体の生理的情報伝達系活性には悪影響を与えずに、病的刺激の持続によるAT1受容体下流の臓器障害と関連した情報伝達系の過剰活性化に対してのみ機能選択的な抑制作用を発揮できる可能性があります。そして、これまでに、ATRAPの発現調節異常が、高血圧-脳心血管腎臓代謝内分泌病の発症・進展に関わり、ATRAPの発現・活性制御により高血圧-脳心血管腎臓代謝内分泌病を克服できる可能性を報告してきました(英語原著論文・総説全39編)。今回の受賞は、ATRAPに関するこれまでの一連の研究成果が評価されたものです。現在、ATRAPを起点とした高血圧-脳心血管腎臓代謝内分泌病治療の創薬開発に向けた研究を展開しています。

ー涌井広道准教授のコメント

この度は大変栄誉ある賞をいただき、誠に光栄に存じます。循環器・腎臓・高血圧学教室の皆様、共同研究者の皆様、そして本学の関係者の皆様に心より御礼申し上げます。特に、今日までご指導いただいております、田村功一先生に感謝申し上げます。大学院に帰学後より、多臓器間ネットワークを介した病態連関に関する基礎・臨床研究を行ってまいりました。私が医学部を卒業した当時よりも、今日の臨床では臓器ごとの専門領域への細分化が進んでいます。しかしながら、生体の恒常性維持には多臓器連関が重要であり、様々な病的状態においては、病態連関を介して多臓器が相互に悪影響を及ぼしあうことが、近年広く認識されてきています。
例えば、高血圧、動脈硬化、腎臓病、糖尿病、脳心血管病等は分子レベルで互いに深く関係し、実際に一人の患者さんに併存することが多いのが特徴です。本受賞は、これまでに当教室が行ってきた、高血圧、腎臓病、脳心血管病などを病態連関病として包括的に捉えて、その克服を目指した数多くの基礎・臨床研究が高く評価されたものと考えます。今後も、多臓器・病態連関の視点から、国民の健康寿命延伸に少しでも寄与できるような研究を展開して参りたいと思います。

問い合わせ先

横浜市立大学 広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp


 

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