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附属病院 腎臓・高血圧内科 塚本 俊一郎 医師(医学研究科 博士課程3年)が、AHA Hypertension Scientific Sessions 2022にて若手研究者賞を受賞!

2022.09.27
  • TOPICS
  • 学生の活躍

心血管・腎臓分野における期待の新薬において、より良い治療効果が発揮されるかを探る上で重要な研究成果

附属病院 腎臓・高血圧内科 塚本 俊一郎 医師(医学研究科 博士課程3年)が9月7日~10日に、アメリカ合衆国のカリフォルニア州サンディエゴで行われた、AHA*1が主催する「Hypertension Scientific Sessions 2022」において、若手研究者賞を受賞し、研究成果について講演を行いました。
今回、塚本先生が受賞された若手研究者賞は、AHA主催のカンファレンスにおいて、日本高血圧学会とAHAが連携して設立した賞であり、多くの日本人若手研究者の中から選出されました。
受賞者
附属病院 腎臓・高血圧内科

塚本 つかもと 俊一郎   しゅんいちろう 医師/大学院生(医学研究科 博士課程3年)


指導教員:医学研究科 循環器・腎臓・高血圧内科学 田村 功一教授
発表題目
「Possible differential effects of angiotensin receptor-neprilysin inhibitor and angiotensin receptor blocker against hypertension and cardiorenal injury in a mouse model of cardiorenal syndrome」
(和訳)心腎連関モデルマウスにおけるアンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(ARNI)とアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)の高血圧および心腎障害に対する保護効果の違い

発表内容

—研究内容について塚本先生に解説していただきました。

今回、心血管・腎臓分野における期待の新薬であるアンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(ARNI)の臓器保護効果についての研究成果を発表しました。
アンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(ARNI)は近年発売された比較的新しい薬になります。世界的な大規模臨床試験において、心不全患者さんの新たな心血管イベントの発生を抑制するというデータが示されており、また日本においては優れた高血圧の薬としても使用されています。しかし、腎臓病や心腎連関症候群*2の病態では、どのような効果があるかは未知な部分も多くあり、今回、その心腎連関症候群の病態を模倣したANSマウス*3というモデルマウスを用いてARNIの心臓と腎臓への保護効果を検証しました。
結果は、ARNIは優れた降圧効果とともに心臓の収縮力の低下や心線維化を抑制するなどアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)*4と比較して良好な心保護効果を示しました。一方で、腎臓においてはむしろARB単独による治療の方が保護的に働く部分もありました。そこで、これらの臓器保護効果の違いが生じたメカニズムについてさらに詳細に解析したところ、腎臓においてAGE-RAGEパスウェイやPI3K-AKTパスウェイといった複数の分子シグナルメカニズムが関与していることが分かりました。これらの研究成果は、どのような病態でARNIのより良い治療効果が発揮されるかを探る上で非常に重要になります。また今後の研究によってさらなる治療効果が期待できる併用薬の発見や心腎連関病態における新たな治療ターゲットの解明につながることも期待されます。

塚本先生のコメント

 この度は、AHA Hypertension 2022 Scientific SessionsにおけるNew Investigator Awards for Japanese Fellows at Hypertension 2022 (若手研究者賞)を賜り、大変光栄に存じます。このような海外学会での口演は初めての経験でしたが、口演後には様々な方から興味深い発表だったとお話をいただけて大変うれしく思いました。また、様々な国の研究者の方々と交流を持つことができ、大変貴重な経験をさせていただきました。
本研究は、田村功一主任教授、涌井広道准教授をはじめ様々な先生方にご指導いただき、また同研究室の大学院生、医学部生の方々にもご協力をいただき、行うことができました。改めて感謝と御礼申し上げます。

指導教員 田村教授からのコメント

循環器・腎臓・高血圧内科学教室では、1853年黒船来航の横浜・神奈川の歴史に根ざす「門戸開放」、サイエンス・アカデミアの高みをめざす「研究重視」、 地域貢献重点の「患者第一」を理念としています。そして、循環器・腎臓・高血圧内科学教室のモットーは、『ともにめざそう! “心血管腎臓病”病態連関制御を通じた”From molecules to the whole body, and to the Society”実現のための横浜・神奈川発のエビデンス創出』です。
今回、大学院生の塚本医師が本賞を受賞したことは、多くの大学院生と指導教員にとっても今後の研究活動における大きな励みになると思います。
(用語説明)
*1 AHA:
アメリカ心臓協会(American Heart Association)の略称であり、心血管障害、脳卒中の研究および、心肺蘇生教育に関する情報を世界的に発信する、1924年設立のアメリカの患者支援団体。
*2 心腎連関症候群:
心臓と腎臓は密接な関係にあり、片方の臓器障害がもう片方の臓器障害にも影響を及ぼすことで、お互いに悪影響を及ぼしてしまう状態。
*3 ANSマウス:
アンジオテンシンⅡ投与 (A)と片腎摘出 (N)、食塩水負荷 (S)によって、高血圧と心不全、腎障害を同時にきたす心腎連関症候群のモデルマウス。
*4 ARB:
日本で広く使われている降圧薬であり、血圧低下効果に加えて心臓や腎臓を保護する効果も確認されている。

問い合わせ先

横浜市立大学 広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp


 

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