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日本語歌唱における飛沫、エアロゾルの可視化実験

2022.08.31
  • TOPICS
  • 研究

日本語歌唱における飛沫、エアロゾルの可視化実験

横浜市立大学附属病院感染制御部 加藤英明講師らの研究グループは、日本語での歌唱、発音による飛沫の飛ぶ距離や、エアロゾルの発生量を観察し、日本語歌唱では前方左右60–70cm程度に飛沫が拡大すること、微細なエアロゾルはu母音や「か行」「た行」「は行」「ぱ行」で多く発生することが観察されました。本研究成果は、『PLOS ONE』に掲載されました。(日本時間 8月 25日)
 研究成果のポイント

日本語歌唱による飛沫の飛距離は前方左右60–70cmである

・男声と比較して女声の口元、u母音の発音では微細なエアロゾルが多く発生する

研究の背景と内容

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は主に飛沫とエアロゾルにより感染が拡大します。合唱は流行初期から多くの集団感染事例が報告されており、飛沫、エアロゾル発生リスクが高いと考えられてきました。今回、全日本合唱連盟、東京都合唱連盟と共同で少年少女からシニアまで男女10人ずつアマチュア合唱団からメンバーを募集し、新日本空調株式会社のクリーンルームとレーザー光を用いた飛沫可視化装置を用いて日本語歌唱での飛沫観測研究を行いました。日本語歌唱(「大地讃頌」)では最大で前方61cm(ドイツ語「第九」では111cm)までの飛沫が観測され、歌唱者の横方向にも70cmまで飛沫が確認されました。飛沫飛行距離に男女差はありませんでした。反面、パーティクルカウンターを用いて口元で発生した微細なエアロゾルの数をカウントしたところ、男声よりも女声の方が有意に多く観測されました。また日本語の朗読ではaとe母音ではエアロゾルが少なく、u母音は有意に多くのエアロゾルの発生が確認されました。子音では「か行」「た行」「は行」「ぱ行」で多くのエアロゾルが確認されました。歌唱者が不織布マスクを着用するとエアロゾルは観察されなくなりました。
飛沫を直接吸入しないためには、前方左右に十分な距離(1〜2m)以上を保つことが重要と思われました。またエアロゾル対策として換気を十分確保することが肝要ですが、換気条件が不明なところではa母音での歌唱やマスク着用により、より安全な合唱練習が可能と考えられました。
図1. クリーンルームを用いて、多重録画を用いて歌唱による口元からの飛沫飛距離を測定した。日本語で前方61cm、ドイツ語で111cmまで観測された
図2. 日本語歌唱(左)、ドイツ語歌唱、日本語音読、あ母音での歌唱による飛沫の飛距離 

今後の展開

本研究(website上ですでに公開)をもとに「合唱活動における新型コロナウイルス感染症拡大防止のガイドライン(全日本合唱連盟)」が発行されました。徐々に対策を講じながら合唱活動は再開しつつあります。

論文情報

タイトル: Expansion of droplets during speaking and singing in Japanese
著者: Hideaki Kato, Ryuta Okamoto, Sohei Miyoshi, Sho Noguchi, Masakazu Umeda, Yuhei Chiba
雑誌名: PLOS ONE
DOI: 10.1371/journal.pone.0272122

 
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