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データサイエンス学部生と大学院生の研究発表が高評価を獲得!若手優秀発表賞を同時受賞しました!

2022.06.22
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データサイエンス学部 鈴木 徳太さんとデータサイエンス研究科 折原 隼一郎さんが、2022年度日本計量生物学会年会で若手優秀発表賞を受賞!

2022年5月13日(金)および14日(土)に、東京理科大学葛飾キャンパス会場とZoomによるハイブリッド形式で開催された、2022年度日本計量生物学会年会(主催:日本計量生物学会、共催:東京理科大学、後援:応用統計学会)において、データサイエンス学部4年の鈴木 徳太さんと、データサイエンス研究科データサイエンス専攻博士後期課程3年の折原 隼一郎さんが、若手優秀発表賞に選出されました。なお、学部生での同賞の受賞は初めてとのことです。
鈴木さんが一般講演『疫学』の部で行った講演テーマは「アウトカム誤分類存在下での発生割合のバイアスに基づくカットオフ値の設定基準の提案」。また、折原さんが一般講演『因果推論』の部で行った講演テーマは「補助変数を用いた操作変数の選択法と操作変数を利用した漸近有効推定量の提案」という題目でした。それぞれ大変優れた研究発表であると評価を受け、若手優秀発表賞の受賞にいたりました。

学生会員部門 若手優秀発表賞受賞

受賞者
データサイエンス学部 4年  (受賞当時)   
鈴木すずき  徳太   のりひろ さん


発表題目
「アウトカム誤分類存在下での発生割合のバイアスに基づくカットオフ値の設定基準の提案」

研究内容
—今回受賞に至った発表内容について鈴木さんに解説していただきました。

近年の医学研究においては、実際の臨床現場から得られるリアルワールドデータの活用に注目が集まっています。その一つの例が、医療情報が集約されたデータベースを用いた観察研究です。この研究では、興味のある要因と結果の関連性を検討するために、データベースに記録されている情報から結果(Ex, 疾患発生の有無)を判定することがしばしば求められます。この判定にあたっては二つの基準が頻繁に用いられており、それらは解釈が容易なものの、効果指標の偏り(バイアス)という観点では最良な基準であるかどうかが明らかではありませんでした。
このバイアスという観点で既存の基準を評価すること、バイアスを最小化する基準を提案することの二つが本研究の目的です。今回の研究で提案した基準は、データベース研究においてより正確な結果を与えることにつながり、医学分野に対し広く寄与するものであると考えています。
鈴木さんのコメント
このような名誉ある賞をいただき大変光栄です。熱心にご指導いただきました田栗先生、コメントをいただいた多くの方に厚く感謝申し上げます。今回の受賞は、計量生物学会年会において初の学部生での受賞でもあり嬉しく感じております。同時に他の発表者と比べるとまだまだ基礎知識など至らない部分が多く、自らの未熟さを痛感した機会でもありました。今後は国際誌への掲載を目標として今回の研究内容をさらにブラッシュアップし、よりよいものにしていきたいと考えています。また、賞相応の学生となれるよう医学・疫学研究に関わる方と協力しつつ、社会に存在する様々な問題の解決に向けて引き続き精進していきます。

正会員部門 若手優秀発表賞受賞

受賞者
データサイエンス研究科データサイエンス専攻 博士後期課程3年 (受賞当時)   
折原おりはら  隼一郎   しゅんいちろう さん


発表題目
「補助変数を用いた操作変数の選択法と操作変数を利用した漸近有効推定量の提案」
研究内容
—今回受賞に至った発表内容について折原さんに解説していただきました。

今回受賞に至った研究は、統計的因果推論においてしばしば話題に挙がる、操作変数法に関するテーマになります。
統計的因果推論では、例えばある時点のBMIが糖尿病の発症に与える効果、つまり因果効果を、偏りなく推定することに興味があります。しかし、BMIと糖尿病の発症との間には、喫煙の有無や食事の質など、他に関連しそうな要素があります(例えば、偏った食生活の人は、BMIが高い傾向にあり、かつ糖尿病を発症しやすい、等)。こういった「他に関連しそうな要素」のことを「交絡因子」と呼び、因果効果を偏りなく推定するためには、交絡因子を適切に調整する必要があります。この交絡因子を適切に調整する方法の一つが、操作変数法になります。
操作変数法に利用される操作変数にはいくつか仮定が必要ですが、その中の一つに「交絡因子と関連がない」という条件が必要です。この条件から逸脱すると、適切に交絡因子の調整ができず、偏りのある因果効果を推定することに繋がります。そこで、この条件から逸脱した「妥当ではない操作変数」を除外しつつ、「妥当な操作変数」のみを利用して、操作変数法を適用することが望まれます。先行手法では、妥当ではない操作変数を除外するために、事前に判明している一部の妥当な操作変数の情報を利用するアプローチを採用していました。しかし、その情報が判明している状況は限られているため、このアプローチには限界があります。
そこで、本研究ではある条件を満たす補助変数を利用することで、事前に判明している一部の妥当な操作変数の情報を利用する必要はなく、妥当な操作変数の選択が可能、つまり偏りなく因果効果を推定できる方法を提案しました。さらに、提案方法は、ある条件下では最も効率的に因果効果を推定可能です。つまり、提案手法は、因果効果の推定値の偏り・ばらつきの観点で、優れた推定手法となっています。
折原さんのコメント
このような名誉ある賞をいただき、大変嬉しく思います。私が特に興味を持っている生物統計学の分野では、操作変数法に関する方法論の検討、及びその応用には、まだまだ発展の余地のあると考えております。今回受賞に至った研究にもまだまだ改善の余地があり、引き続き操作変数法に関する研究に励んでいきたいと考えております。こういった研究の積み重ねにより、生物統計学の発展に微力ながらも貢献していきたい所存です。最後にはなりますが、医学的な観点から多くのご助言をいただいたヘルスデータサイエンス専攻 後藤 温 先生、及び指導教官の田栗 正隆 先生の両共著者には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

指導教員 田栗 正隆 先生のコメント

折原さん、鈴木さん、この度は医療統計分野で日本最大の学会である日本計量生物学会での受賞、おめでとうございます!
折原さんは学位を持った研究者を含むレベルが高い正会員部門での受賞で、研究内容も操作変数法の分野で独創性のあるアイディアを取り入れた素晴らしいものでした。鈴木さんは、学生会員部門での受賞でしたが、研究の着想から学会までの期間が短い中、研究の実施をへて原稿作成から発表までの一連のプロセスを経験できた上、その内容が学会からも評価されました。とても喜ばしい成果です。鈴木さんの研究内容は、リアルワールドデータの疾患定義の新しい基準を提案するもので、実用性が高い方法論だと思います。これに満足する事なく、これからも向上心を持って、日々の勉強と研究に打ち込んでいってください。お二人の事はもちろん、データサイエンス学部と研究科の全ての学生の皆さんを応援しています。
この度は若手優秀発表賞の受賞、本当におめでとうございました!
※田栗先生は2022年度より非常勤

問い合わせ先

横浜市立大学 広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp


 

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