横浜市立大学が、第49回構造活性相関シンポジウムのポスター賞4枠を同時受賞!! Vol.1
2022.01.14
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生命医科学研究科 博士前期課程 2年の伊藤 朱里さんが、第49回構造活性相関シンポジウムでSAR Award(ポスター)賞を受賞!
生命医科学研究科 博士前期課程 2年生の伊藤 朱里さんは、2021年11月18日(木)〜19日(金)にオンラインで開催された第49回構造活性相関シンポジウムにおいて「中分子シクロスポリンAとシクロスポリンEの分子ダイナミクスの比較」についてポスター発表を行い、SAR Award(ポスター)賞を受賞しました。
受賞者
生命医科学研究科 博士前期課程 2年
伊藤 朱里 さん
発表演題
「中分子シクロスポリンAとシクロスポリンEの分子ダイナミクスの比較」
生命医科学研究科 博士前期課程 2年
伊藤 朱里 さん
発表演題
「中分子シクロスポリンAとシクロスポリンEの分子ダイナミクスの比較」
発表内容
—今回の受賞に至った研究内容について伊藤さんに解説していただきました。
免疫抑制剤シクロスポリンA (CsA)は、非天然アミノ酸を含む11残基の環状ペプチド分子です。CsAは経口投与できる薬の中では、比較的大きな分子量をもった中分子医薬品でありながら、高い膜透過性を持ちます。その高い膜透過性がどのような理由で実現されているのか、そのメカニズムの解明が望まれています。これまでに、CsAが自身の形を、水中/膜中に適した構造へダイナミックに変えながら膜透過するモデルが提唱されています。しかし、実際の生体内に近い膜水系で、具体的に、水中・膜水界面・膜中で具体的にどのような形をしているのか、原子レベルの検証が求められていました。また、CsAにはシクロスポリンE (CsE)という代謝物が存在します。CsEとCsAとの構造の違いは、1つのアミノ酸主鎖のNメチル基の有無という1箇所のみしかありません。しかしながら、CsEは、CsAよりも10倍膜透過性が低いことが知られています。些細な構造の違いが、なぜ、膜透過性まで影響してしまうのか、その理由がわかれば、中分子医薬品の膜透過性デザインへつながると期待されます。
本研究では、CsAとCsEの膜透過メカニズムに迫るために、水中・膜水界面・膜中における構造分布を、分子動力学シミュレーションによる大規模サンプリングによって明らかにしました。幅広い構造サンプリングができるgREST法を、スーパーコンピュータで実行することでダイナミックなCsA/CsEの構造変化を捉えることができました。
その結果、CsAでは、水中では開いた形、膜中では閉じた形をとることが多く、界面ではその両方の形が出現しやすいことがわかりました。CsEの構造分布では、特に、膜中の分布がCsAと大きく異なることもわかってきました。 今後は、膜透過シミュレーションへ展開し、分子の形が変化していく途中の様子まで明らかにしていきたいと思います。
—今回の受賞に至った研究内容について伊藤さんに解説していただきました。
免疫抑制剤シクロスポリンA (CsA)は、非天然アミノ酸を含む11残基の環状ペプチド分子です。CsAは経口投与できる薬の中では、比較的大きな分子量をもった中分子医薬品でありながら、高い膜透過性を持ちます。その高い膜透過性がどのような理由で実現されているのか、そのメカニズムの解明が望まれています。これまでに、CsAが自身の形を、水中/膜中に適した構造へダイナミックに変えながら膜透過するモデルが提唱されています。しかし、実際の生体内に近い膜水系で、具体的に、水中・膜水界面・膜中で具体的にどのような形をしているのか、原子レベルの検証が求められていました。また、CsAにはシクロスポリンE (CsE)という代謝物が存在します。CsEとCsAとの構造の違いは、1つのアミノ酸主鎖のNメチル基の有無という1箇所のみしかありません。しかしながら、CsEは、CsAよりも10倍膜透過性が低いことが知られています。些細な構造の違いが、なぜ、膜透過性まで影響してしまうのか、その理由がわかれば、中分子医薬品の膜透過性デザインへつながると期待されます。
本研究では、CsAとCsEの膜透過メカニズムに迫るために、水中・膜水界面・膜中における構造分布を、分子動力学シミュレーションによる大規模サンプリングによって明らかにしました。幅広い構造サンプリングができるgREST法を、スーパーコンピュータで実行することでダイナミックなCsA/CsEの構造変化を捉えることができました。
その結果、CsAでは、水中では開いた形、膜中では閉じた形をとることが多く、界面ではその両方の形が出現しやすいことがわかりました。CsEの構造分布では、特に、膜中の分布がCsAと大きく異なることもわかってきました。 今後は、膜透過シミュレーションへ展開し、分子の形が変化していく途中の様子まで明らかにしていきたいと思います。
伊藤 朱里さんのコメント
この度は発表の機会をいただくとともに名誉ある賞を頂戴し、光栄に思います。研究や発表準備の際には、池口教授をはじめ、浴本助教、理化学研究所の山根上級研究員、生命情報科学研究室の皆様に大変お世話になりました。また、発表中は多くの専門家の方とより深いディスカッションを行うことができました。頂いた質問やご意見を糧に、今後も精進していきたいと思います。
指導教員 池口 満徳教授のコメント
学部のときから継続してきたテーマで、修士2年までよくがんばってやってきたように思います。今回は、日本薬学会の構造活性相関部会という、製薬企業の方も多数出席される、伝統ある部会でのポスター賞ということで、たいへん良かったように思います。中分子の膜透過は、非常に面白い現象だと思います。今後も、この経験を活かし、ぜひがんばってください。