生命医科学研究科 創薬有機化学研究室 永沼 美弥子さん、新たなタンパク質分解誘導剤(PROTAC)の開発に成功!
2022.01.28
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生命医科学研究科 永沼 美弥子さんらの論文が、ACS Medicinal Chemistry Lettersに掲載されました。
生命医科学研究科 博士後期課程1年の永沼 美弥子さんら研究グループは、新たなタンパク質分解誘導剤(PROTAC*1)の開発に成功し、研究成果が「ACS Medicinal Chemistry Letters」に掲載され、Supplementary Journal Coverに採択されました。
論文著者
生命医科学研究科 博士後期課程1年
創薬有機化学研究室所属
永沼 美弥子 さん
論文タイトル
「Development of Chimeric Molecules That Degrade the Estrogen Receptor Using Decoy Oligonucleotide Ligands」
掲載雑誌
ACS Medicinal Chemistry Letters
生命医科学研究科 博士後期課程1年
創薬有機化学研究室所属
永沼 美弥子 さん
論文タイトル
「Development of Chimeric Molecules That Degrade the Estrogen Receptor Using Decoy Oligonucleotide Ligands」
掲載雑誌
ACS Medicinal Chemistry Letters
研究内容
ー今回の研究内容について永沼さんに解説していただきました。
近年、様々な疾患の発症に関与する標的タンパク質が解明され、それらを標的とした多様な創薬手法が開発されている中で、ケミカルプロテインノックダウン法を利用した分解誘導剤が注目されています。PROTACに代表されるケミカルプロテインノックダウン法は、UPSという生体内のタンパク質分解機構により、疾患関連タンパク質を強制的に分解することが可能です。
PROTAC は、E3リガーゼと標的タンパク質を近接させる分子メディエーターとして作用し、標的タンパク質のポリユビキチン化とそれに続くプロテアソーム分解を誘導することが可能です。現在、国内外で盛んに開発されていますが、既存のPROTACでは標的とすることが困難なタンパク質も存在し、中でも最適なリガンドが存在しない転写因子*2では、低分子型PROTACのデザインが困難です。
そこで、本研究ではPROTACの適応範囲拡大を目指し、リガンドにデコイ核酸(DNA)*3を用いた分子を開発することで転写因子の分解を可能にしました(図1)。
デコイ核酸型PROTACは、転写因子の一つであるERαをUPSによって分解することが明らかとなりました。本研究で提案したデコイ核酸型分解誘剤によって、標的とすることが可能なタンパク質の幅が拡大し、新規医薬品開発の一助を担うことができたと考えています。
本研究によって、分解可能な標的タンパ質の幅が広がることが期待できる可能性を見出した一方で、活性の向上および細胞内への導入方法については改善の余地があります。そこで今後は、核酸への修飾を検討し、分解誘導剤単体での細胞内導入を目指した分子設計を目指していきたいと思います。
ー今回の研究内容について永沼さんに解説していただきました。
近年、様々な疾患の発症に関与する標的タンパク質が解明され、それらを標的とした多様な創薬手法が開発されている中で、ケミカルプロテインノックダウン法を利用した分解誘導剤が注目されています。PROTACに代表されるケミカルプロテインノックダウン法は、UPSという生体内のタンパク質分解機構により、疾患関連タンパク質を強制的に分解することが可能です。
PROTAC は、E3リガーゼと標的タンパク質を近接させる分子メディエーターとして作用し、標的タンパク質のポリユビキチン化とそれに続くプロテアソーム分解を誘導することが可能です。現在、国内外で盛んに開発されていますが、既存のPROTACでは標的とすることが困難なタンパク質も存在し、中でも最適なリガンドが存在しない転写因子*2では、低分子型PROTACのデザインが困難です。
そこで、本研究ではPROTACの適応範囲拡大を目指し、リガンドにデコイ核酸(DNA)*3を用いた分子を開発することで転写因子の分解を可能にしました(図1)。
デコイ核酸型PROTACは、転写因子の一つであるERαをUPSによって分解することが明らかとなりました。本研究で提案したデコイ核酸型分解誘剤によって、標的とすることが可能なタンパク質の幅が拡大し、新規医薬品開発の一助を担うことができたと考えています。
本研究によって、分解可能な標的タンパ質の幅が広がることが期待できる可能性を見出した一方で、活性の向上および細胞内への導入方法については改善の余地があります。そこで今後は、核酸への修飾を検討し、分解誘導剤単体での細胞内導入を目指した分子設計を目指していきたいと思います。
用語説明
*1 PROTAC :
ユビキチンリガーゼ(E3リガーゼ)リガンドと標的タンパク質リガンドを連結させた分子
*2転写因子:
DNAに配列特異的に結合するタンパク質で、プロモーターやエンハンサーといった転写制御領域に結合し、RNAポリメラーゼによる遺伝子の転写を活性化あるいは不活性化する。
*3 デコイ核酸:
デコイ(Decoy)核酸は、転写因子をターゲットにした核酸医薬であり、転写レベルで複数の遺伝子群を制御することができる分子である。転写因子の結合部位に対する相補的な塩基配列を組み込んで設計され、目的の転写因子と配列特異的に結合することで、DNAへの結合をブロックして機能する。
ユビキチンリガーゼ(E3リガーゼ)リガンドと標的タンパク質リガンドを連結させた分子
*2転写因子:
DNAに配列特異的に結合するタンパク質で、プロモーターやエンハンサーといった転写制御領域に結合し、RNAポリメラーゼによる遺伝子の転写を活性化あるいは不活性化する。
*3 デコイ核酸:
デコイ(Decoy)核酸は、転写因子をターゲットにした核酸医薬であり、転写レベルで複数の遺伝子群を制御することができる分子である。転写因子の結合部位に対する相補的な塩基配列を組み込んで設計され、目的の転写因子と配列特異的に結合することで、DNAへの結合をブロックして機能する。
永沼 美弥子さんのコメント
本研究は、近年注目されている創薬手法であるケミカルプロテインノックダウン法を利用した新規核酸型タンパク質分解誘導剤の創製研究です。研究を進める中で、特に評価系の構築に時間がかかり苦労することもありましたが、無事に一報まとめることができました。さらに、研究内容が評価され、Supplementary Journal Coverにも採択して頂きとても嬉しいです。
出水先生をはじめ、共著の先生方の丁寧で熱心なご指導に感謝すると共に、今後も学位取得に向けて日々、研究を進めていきたいです。
出水先生をはじめ、共著の先生方の丁寧で熱心なご指導に感謝すると共に、今後も学位取得に向けて日々、研究を進めていきたいです。
指導教員 出水 庸介 客員教授のコメント
論文アクセプトおめでとうございます!
今回の研究は、永沼さんが一から立ち上げたものです。コロナ禍で研究活動が制限されてきた中で、分子設計と合成、評価系の確立と実施、論文執筆を行い、まとめ上げることができたことは、本当に素晴らしいことだと思います。また、自らデザインしたアイキャッチ画像がCoverに採択されたことで、研究成果を視覚的にアピールする力も培うことができたと思います。
今後も博士学位取得に向け、楽しみながら研究活動に取り組み、成長していく事を期待しています。
今回の研究は、永沼さんが一から立ち上げたものです。コロナ禍で研究活動が制限されてきた中で、分子設計と合成、評価系の確立と実施、論文執筆を行い、まとめ上げることができたことは、本当に素晴らしいことだと思います。また、自らデザインしたアイキャッチ画像がCoverに採択されたことで、研究成果を視覚的にアピールする力も培うことができたと思います。
今後も博士学位取得に向け、楽しみながら研究活動に取り組み、成長していく事を期待しています。