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生命医科学研究科の郡聡実さん、第49回構造活性相関シンポジウムにおいて、SAR Awardを受賞

2021.12.09
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生命医科学研究科・郡 聡実さんが日本薬学会構造活性相関部会主催のシンポジウムで口頭発表を行い、SAR Awardを受賞しました。

生命医科学研究科博士後期課程3年の郡聡実さん(指導教員:有田恭平教授)は、2021年11⽉18日(木)~19日(金)にオンラインで開催された第49回構造活性相関(SAR)シンポジウムにおいて口頭発表を行い、SAR Awardを受賞しました。
<受賞者>
生命医科学研究科博士後期課程3年 郡聡実さん
 
<指導教員>
生命医科学研究科 有田恭平教授
 
<発表学会>
第49回構造活性相関(SAR)シンポジウム
 
<受賞内容>
SAR Award賞

研究内容

 日本人の死因の第一位はがんであり、これには老化や生活習慣など様々な要因が挙げられます。この細胞のがん化の原因の一つに、DNAメチル化異常があります。DNAメチル化は細胞に不必要な遺伝子の発現を抑制することで、細胞固有の形や機能を決定する必須の情報です。重要なことに、一度確立したDNAメチル化パターンは個体の生涯にわたって正確に維持されます。これをDNA維持メチル化といい、UHRF1タンパク質が必須の因子として働きます。一方で、UHRF1はがん細胞で過剰発現し、がん細胞の異常増殖と関連することが報告されていることから、創薬の標的分子としても注目されています。
 我々は、DNA ligase 1 (LIG1) がDNA維持メチル化機構でUHRF1を複製部位へと呼び込むことを解明し、UHRF1のTTDドメインとLIG1の複合体のX線結晶構造解析に成功しました。この立体構造から、UHRF1とLIG1の結合にはUHRF1 TTDのアルギニン結合溝と名付けたポケットとLIG1のアルギニン121の相互作用が重要であることを明らかにしました。
 本研究では、がん細胞中でのUHRF1の機能を阻害するために、UHRF1 TTDのアルギニン結合溝に着目しました。UHRF1とLIG1の結合はDNA維持メチル化の最初の段階を担います。したがって、UHRF1とLIG1の結合を阻害する化合物は、がん細胞中でのUHRF1の機能を阻害し、異常なDNAメチル化を防ぐことができると考えました。
 はじめに、複数の計算科学的な手法で約20万個の化合物が含まれるライブラリーからUHRF1 TTDのアルギニン結合溝に結合する候補化合物を130種類まで絞り込みました。この候補化合物がUHRF1 TTDに結合するかを実験的に確認したところ、5-amino-2,4-dimethylpyridine (5A-DMP) が最も有力であることが分かりました。UHRF1 TTDと5A-DMPの複合体のX線結晶構造解析では、5A-DMPがUHRF1 TTDのアルギニン結合溝に安定に結合していることを明らかにしました。さらに、5A-DMPの結合がUHRF1とLIG1の結合を阻害することを生化学的な実験で明らかにしました。本研究で実施した計算科学と構造生物学を融合した手法により、UHRF1の機能阻害剤のリード化合物となる5A-DMPの同定に成功しました。

郡聡実さんのコメント

この度は、SAR Awardという名誉ある賞を頂き、大変光栄です。構造活性相関シンポジウムには、アカデミアの研究者のみならず、製薬企業の研究者の方も参加されていました。実際に創薬現場で活躍されている方々からは、「薬をつくる」という普段の研究活動とは少し違う視点からのご質問やご意見を頂き、大変有意義な時間を過ごすことができました。改めまして、今回の発表の機会を与えて頂き、また研究成果を評価頂きました学会関係者の皆様に深謝致します。また、有田恭平教授をはじめとする構造生物学研究室の皆様、共同研究としてお世話になりました生命情報科学研究室の池口教授、浴本助教、柴橋特任助手、本研究を遂行するにあたりご支援賜りましたすべての皆様に心より御礼申し上げます。

指導教員 有田恭平教授のコメント

おめでとう!!!
本研究は、2019年に郡さんが論文発表した基礎研究成果を出発点にして、阻害剤開発を目指した成果になります。これまでの一連の研究が評価されたことを大変うれしく思います。学部・修士・博士課程の間、郡さんの指導をしてきましたが、研究遂行能力に加えて、分かりやすく研究成果を伝える力も身につけたと思います。これを励みに、今後も自分の興味をとことん追求してほしいです。そして、研究を楽しみながら成長していく事を心から期待しています。

問い合わせ先

横浜市立大学 広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp
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