都市社会文化研究科 大島 誠准教授 日本地方自治研究学会から学会賞を受賞しました
2021.11.08
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日本地方自治研究学会にて学会賞(論文部門)を受賞
横浜市立大学大学院都市社会文化研究科の大島 誠准教授が日本地方自治研究学会から学会賞(論文部門)を受賞しました。
【学会名】 日本地方自治研究学会
【受賞した賞】学会賞(論文部門)
【受賞者】 横浜市立大学大学院都市社会文化研究科 大島 誠准教授
【受賞論文】 水道PFI方式の有効性と限界—川井浄水場再整備事業を事例に
【受賞した賞】学会賞(論文部門)
【受賞者】 横浜市立大学大学院都市社会文化研究科 大島 誠准教授
【受賞論文】 水道PFI方式の有効性と限界—川井浄水場再整備事業を事例に
【論文内容】
本稿で対象にしているPFI(Private Finance Initiative)方式とは、政府等(国、都道府県、市町村、特殊法人等)が提供している行政サービスを、政府等が自ら供給するのではなく、事業者に委託する民営化手法の1つである。行政サービスの提供を事業者に委託すると、政府が直接提供する場合と比較して、安価にあるいは同一価格で上質のサービスを提供可能であると言われている。事業分野は社会教育施設、下水道施設、医療施設、福祉施設等の多岐にわたる。
また、全国の大半の水道事業は市町村が担っているが、人口減少に伴う財源不足、施設の老朽化、耐震化の遅れ、水道職員数の減少等の課題が山積している。つまり、財政状況の悪化や今後の持続可能性が危ぶまれている。さらに、水道は、通常の市場で取り引きされる商品やサービスと異なり、地域住民にとって必要不可欠である。
全国の大半の市町村の水道事業は上記の課題に直面している。横浜市も例外ではなく、横浜市は横浜市旭区の川井浄水場を対象に、水道事業をPFI方式で実施している。横浜市は、事業者の技術や経営ノウハウの活用・民間資金の活用により、コスト削減、横浜市と事業者間のリスク配分、環境への配慮等を期待している。
本稿では川井浄水場の水道事業を対象に、横浜市の水道事業の施策やPFI方式の導入背景の経緯、そしてPFI方式を導入した川井浄水場事業の効果と課題について検討した。
結論として、川井浄水場の事例ではPFI方式を導入しても、必ずしもコスト削減につながったとは言い難い。一部の費用は安価になったが、他の費用が増加した。また、事業内容や事業分野は異なるが、全国のPFI方式を導入した水道事業や横浜市の他のPFI事業との比較においても、PFI方式の導入がコスト削減に寄与していなかった。他方、大きな効果として、横浜市が有していない事業者の高い技術の活用が挙げられる。たとえば、水道事業で用いる膜ろ過方式や老朽化した旧施設を稼働させながら新しい施設へ切り替えるといった、事業者の技術や経営ノウハウが十分に活用されている。また、温室効果ガスの削減や省エネルギーに寄与している。しかしながら、横浜市から事業者への事業費の支払いスキームが適正ではないと思われる。仮に横浜市が事業者にサービス内容の1つとして環境への配慮を期待するのであれば、その評価手法や事業者に実現させるようなインセンティブを与えるような支払いスキームの必要性を指摘している。
本稿を通じて、水道事業に民営化方式の導入や、水道事業以外の多数の事業分野にPFI方式の導入を検討している地方公共団体は、PFI方式に安易にコスト削減やサービスの向上、リスク軽減を期待することに留意しなければならないと言えるだろう。
また、全国の大半の水道事業は市町村が担っているが、人口減少に伴う財源不足、施設の老朽化、耐震化の遅れ、水道職員数の減少等の課題が山積している。つまり、財政状況の悪化や今後の持続可能性が危ぶまれている。さらに、水道は、通常の市場で取り引きされる商品やサービスと異なり、地域住民にとって必要不可欠である。
全国の大半の市町村の水道事業は上記の課題に直面している。横浜市も例外ではなく、横浜市は横浜市旭区の川井浄水場を対象に、水道事業をPFI方式で実施している。横浜市は、事業者の技術や経営ノウハウの活用・民間資金の活用により、コスト削減、横浜市と事業者間のリスク配分、環境への配慮等を期待している。
本稿では川井浄水場の水道事業を対象に、横浜市の水道事業の施策やPFI方式の導入背景の経緯、そしてPFI方式を導入した川井浄水場事業の効果と課題について検討した。
結論として、川井浄水場の事例ではPFI方式を導入しても、必ずしもコスト削減につながったとは言い難い。一部の費用は安価になったが、他の費用が増加した。また、事業内容や事業分野は異なるが、全国のPFI方式を導入した水道事業や横浜市の他のPFI事業との比較においても、PFI方式の導入がコスト削減に寄与していなかった。他方、大きな効果として、横浜市が有していない事業者の高い技術の活用が挙げられる。たとえば、水道事業で用いる膜ろ過方式や老朽化した旧施設を稼働させながら新しい施設へ切り替えるといった、事業者の技術や経営ノウハウが十分に活用されている。また、温室効果ガスの削減や省エネルギーに寄与している。しかしながら、横浜市から事業者への事業費の支払いスキームが適正ではないと思われる。仮に横浜市が事業者にサービス内容の1つとして環境への配慮を期待するのであれば、その評価手法や事業者に実現させるようなインセンティブを与えるような支払いスキームの必要性を指摘している。
本稿を通じて、水道事業に民営化方式の導入や、水道事業以外の多数の事業分野にPFI方式の導入を検討している地方公共団体は、PFI方式に安易にコスト削減やサービスの向上、リスク軽減を期待することに留意しなければならないと言えるだろう。
【受賞のコメント】
先日、日本地方自治研究学会から学会賞(論文の部)を受賞致しました。受賞に関して、望外の喜びを禁じ得ません。日頃から、齊藤都市社会文化研究科長や鈴木国際教養学部長をはじめ、多くの先生方にご指導ご鞭撻を頂き、改めて御礼申し上げます。さらに、研究基盤課などの事務の方からも研究活動のサポートを受けております。特に、今回の受賞対象論文は2018年に外部資金である公益財団法人クリタ水・環境科学振興財団から研究助成金(研究区分:萌芽)を支援して頂きました。外部資金の受け入れに関して、担当の事務員の方にお世話になりました。学会賞受賞対象論文は横浜市が旭区で実施している水道事業を対象にしていますが、過去に何度か夏休みを利用して学生と視察に伺いました。市職員の方から事業内容の講演やヒアリングそして貴重な資料も頂戴致しました。これらの多大なるご支援を頂戴した結果、今回の受賞につながったと考えております。改めてこの場をかりて御礼申し上げます。
また、昨年度から齊藤研究科長の発案により、都市社会文化研究科において宇野先生と共同で「PPP/PFI*1研究会」を発足致しました。PPP/PFI研究会では官民連携や公共サービスの民営化などに関して、最先端の動向や知見そして内閣府や国土交通省そして横浜市役所などの実務家からのご講演や議論をする機会を与えて頂き、大きな刺激を受けております。
これで、以前受賞した経済学の応用分野を対象とする日本地方財政学会の学会賞(論文の部)と地方自治論を対象とする日本地方自治研究学会賞という2つの学会賞を受賞致しました。これらの研究成果を糧に、今後も引き続き教育、地域貢献そして研究に精進する所存でございます。
*1 PPP・・・Public Private Partnership(官民連携、または公民連携と訳されている。)
また、昨年度から齊藤研究科長の発案により、都市社会文化研究科において宇野先生と共同で「PPP/PFI*1研究会」を発足致しました。PPP/PFI研究会では官民連携や公共サービスの民営化などに関して、最先端の動向や知見そして内閣府や国土交通省そして横浜市役所などの実務家からのご講演や議論をする機会を与えて頂き、大きな刺激を受けております。
これで、以前受賞した経済学の応用分野を対象とする日本地方財政学会の学会賞(論文の部)と地方自治論を対象とする日本地方自治研究学会賞という2つの学会賞を受賞致しました。これらの研究成果を糧に、今後も引き続き教育、地域貢献そして研究に精進する所存でございます。
*1 PPP・・・Public Private Partnership(官民連携、または公民連携と訳されている。)
問い合わせ先
横浜市立大学 広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp