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コロナ禍での脳波検査技師の精神的ストレス要因を明らかに

2021.11.04
  • TOPICS
  • 医療
  • 研究

コロナ禍での脳波検査技師の精神的ストレス要因を明らかに

横浜市立大学医学部医学科脳神経外科学教室 池谷直樹 助教、Wayne State University 黒田直生人 研究員らの研究グループ(Japan Young Epilepsy Section:YES-Japan/日本若手 てんかん従事者部門)は、国内25箇所のてんかん*1医療施設と協力して、コロナ禍が日本のてんかん医療に与えた影響について全国規模の調査を行いました。
本研究では、性別、同居者の状況、 COVID-19(疑い)患者への検査の従事、経済的待遇がコロナ禍における脳波*2検査技師の精神的ストレスの要因となることが示されました。この成果は、脳波検査技師のストレスマネジメントにおける重要なエビデンスであり、臨床神経生理検査スタッフや医療者のコロナ禍での働き方・メンタルヘルスに関するガイドラインに反映される可能性があります。
本研究成果は、Epilepsy & Behavior誌に掲載されました。(2021年10月4日オンライン公開)
研究成果のポイント

  • コロナ禍の調査で、35.2%の脳波検査技師が精神的ストレスを抱えていた。
  • 精神的ストレスには性別(女性)、同居者(家族)との別居、COVID-19(疑い)患者への検査の従事、経済的待遇の悪化が関係していた。
  • 長引くコロナ禍では上記の項目をチェックすることが、脳波検査技師のメンタルヘルスマネジメントおいて有用である。

研究背景

コロナ禍において、医療従事者は様々な要因により精神的ストレスを抱えていると考えられています。その中でも脳波検査技師は、脳波検査の特性上、物理的に近距離での患者との接触が多くなるため、より多くのストレスにさらされている可能性があります。一方で、その実態については調査されたことがありませんでした。そのため、本研究チームは、コロナ禍における脳波検査技師の精神的ストレス状況と、ストレスに関連する要因の解明を行ないました。

研究内容

2021年3月1日から4月30日における生活、業務の状況とプロフィール、精神的ストレスの指標(K-6, Tokyo Metropolitan Distress Scale for Pandemic: TMDP)を取得し、精神的ストレスと関連する要因の解明を行ないました。
国内25箇所のてんかん医療施設に所属する173人の臨床検査技師にアンケートを送付して回答を依頼しました。142人から回答を得て(有効回答率82%)、その中から対象期間中に脳波検査に関わった128人の回答を解析対象としました。その結果、35.2%の脳波検査技師がコロナ禍において精神的ストレスを抱えている状態であることがわかりました。また、そのストレスには検査技師自身の性別が女性であること、医療従事者であるが故に同居者(家族)との別居、COVID-19(疑い)患者への検査の従事、経済的待遇の悪化が要因として関係していることが明らかとなりました。
図:研究結果の概要

今後の展開

本研究結果を臨床神経生理検査スタッフや医療者のコロナ禍での働き方ガイドライン等に反映させることで、脳波検査技師のメンタルヘルスの向上につながることが期待できます。

論文情報

タイトル:Risk factors for psychological distress in electroencephalography technicians during the COVID-19 pandemic: A national-level cross-sectional survey in Japan
著者:Naoto Kuroda*, Takafumi Kubota, Toru Horinouchi, Naoki Ikegaya*, Yu Kitazawa, Satoshi Kodama, Teppei Matsubara, Naoto Nagino, Shuichiro Neshige, Temma Soga, Daichi Sone, Yutaro Takayama, Izumi Kuramochi, IMPACT-J Epilepsy Study group *責任著者
掲載雑誌:Epilepsy & Behavior
DOI:https://doi.org/10.1016/j.yebeh.2021.108361

用語説明

*1 てんかん:脳の神経細胞の異常な活動によって引き起こされる一過性の症状(いわゆるてんかん発作)を主症状とする慢性脳疾患。

*2 脳波:脳神経細胞の異常なてんかん性活動を、頭皮につけた電極によって捉えて、記録する検査。てんかんの診断、治療の評価等に有用である。

問い合わせ先

横浜市立大学 広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp


 

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