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医学部医学科 前田和輝さん・松本憲燈さん、第43回日本高血圧学会において若手研究者奨励賞を受賞

2021.10.26
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医学部医学科 前田和輝さん・松本憲燈さんが第43回日本高血圧学会において若手研究者奨励賞を受賞しました。

医学部医学科 4年生の前田和輝さん・松本憲燈さん(指導教員:石上友章 准教授)は、2021年10⽉15日(金)~17日(日)にオンラインで開催された第43回日本高血圧学会において若手研究者奨励賞を受賞しました。
なお、お二人は、リサーチ・クラークシップ*1で循環器・腎臓・高血圧内科学(主任教授:田村功一 教授)に配属されており、医学部4年生ながら、並みいる研究者の中からの受賞となりました。

<受賞者> 
医学部医学科 4年生 前田和輝さん
医学部医学科 4年生 松本憲燈さん
第43回日本高血圧学会抄録より引用
指導教員である石上友章准教授にお二人の研究の内容について話を聞きました。

<研究内容>

 食塩の取りすぎは、高血圧や心不全、腎不全といった、心血管系の疾患の原因となる重要な生活習慣です。世界保健機構(WHO)や日本の厚生労働省は、健康な生活のために、一日の食塩摂取量を6グラム以下にすることを提唱しています。日本高血圧学会でも、減塩の日や減塩弁当、減塩キャンペーンを通じて、食塩摂取量の抑制の重要性を訴えてきました。しかしながら、全ての方々が、食塩摂取に反応して血圧が高くなることはなく、『食塩感受性(Salt Sensitivity)』といわれる病態をもった人に、より顕著に認められることが知られていました。この『食塩感受性(Salt Sensitivity)』には、遺伝性や家族性があり、遺伝子の働きが重要であると考えられてきました。横浜市立大学医学部循環器・腎臓・高血圧内科学の研究グループは、これまでに尿細管アンジオテンシノーゲン、尿細管レニンならびに、Nedd4-2というユビキチン化酵素に着目して、『食塩感受性(Salt Sensitivity)』の分子病態を明らかにしてきました。
 第43回日本高血圧学会(沖縄)において、横浜市立大学医学部医学科4年生の前田和輝君、松本憲燈君が、遺伝子の活性化や不活化に重要な働きをする核内転写因子として知られているAtf3を、腎臓の尿細管といわれる部位で機能を喪失したマウス(尿細管特異的Atf3ノックアウトマウス)を使った研究で、『食塩感受性(Salt Sensitivity)』の分子レベルでの機序に迫る成果を報告して、若手研究者奨励賞を受賞しました。
 前田君、松本君らの研究によると、Atf3の機能が尿細管だけで低下したマウスでは、レニンといわれる遺伝子の発現が、対照のマウスと比較して30-70%低下しているにも関わらず、フロセミドという利尿薬が投与された際には血圧が高値のまま、レニンが約2~4倍に上昇することが明らかになりました。免疫組織染色という特殊な技術を使って顕微鏡で観察すると、こうした逆方向の変化が、より明瞭に観察されたことを報告しました。利尿薬は、食塩の一部であるナトリウムを尿に排泄することで、血圧を下げる効果がありますが、Atf3という分子を失うと、この効果が認められませんでした。Atf3が、食塩とレニン、血圧の関係を結びつける重要な分子であることを、発見することができました。

<お二人のコメント>

(左から)田村功一教授、前田和輝さん、松本憲燈さん、石上友章准教授
前田 和輝さん
 今回の賞を頂戴したこと、とてもありがたく光栄に思います。食塩摂取が引き起こす高血圧の病態に関する基礎研究に携わらせていただき、また毎日マウスと格闘したリサクラ期間がこうして報われたことが何より嬉しいです。石上友章先生をはじめ、教室の先生方には、本当に最初から最後まで温かいご指導をいただき心から感謝しております。

松本 憲燈さん
 この度はこのような賞をいただくことができ大変嬉しく思います。研究室配属当初右も左も分からない状態から様々なことを教えていただきました。その結果がこのように形として出たのは大変貴重な経験となりました。石上先生をはじめとした教室の先生方には多くのご指導をいただき心より感謝申し上げます。

<指導教員 石上友章准教授のコメント>

 これまでの我々の研究から、尿細管におけるイオン・トランスポーターならびにその調節因子が、体液の質的・量的な恒常性の維持を通して、心疾患・腎疾患・高血圧の成因に関わっていることがわかってきました。こうした分子レベルでの機序を解明し、制御することで、心疾患・腎疾患・高血圧の制圧が可能になります。今回、本学のリサーチクラークシップに際して、当教室での研究実習を選択してくれた、前田君・松本君には、コロナ禍という環境のなか、これまでの研究の意図を理解して、休日を返上しながら、実験に取り組んでもらいました。その結果、リサーチクラークシップ期間内の内容を、その基礎検討を含めて尿細管特異的Atf3ノックアウトマウスの表現型の解析(第一報)、(第二報)という形で、発表してもらいました。(第二報)の演題に対して、若手研究者奨励賞のセッションで口演する機会を与えていただきました。学会長を務めた琉球大学大屋先生、ならびにセッションの座長を務めていただいた佐賀大学の野出先生には、心より御礼申しあげます。前田君、松本君にとってもこうした経験を通じて、医学研究に親しみをもって将来の医師生活に役立ててもらえると光栄です。

*1 リサーチ・クラークシップとは
基礎医学教室または臨床医学教室に一学期間所属して、医学研究を体験します。研究体験を通して、現在の医療がこれまでの膨大な医学研究の上に成り立っていることを知り、医療人として医学知識と医療技術を駆使できるだけでなく、今後の医療レベルの向上に対して、自分自身がどのように貢献できるかを考え、科学者として医学研究を実践していくための考え方や技術を学修します。

問い合わせ先

横浜市立大学 広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp

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