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国際マネジメント研究科博士後期課程 2年 夏吉 裕貴さんの論文がジャーナルに掲載されました

2021.10.22
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公益法人における社員総会/評議員会の有効性 に関する証拠を発見

横浜市立大学大学院国際マネジメント研究科博士後期課程 2年 夏吉 裕貴さんが著者の論文が会計プログレス1に掲載されました。

夏吉さんに研究の内容や今後の展開について話を聞きました。
夏吉 裕貴さん
<著者>
横浜市立大学大学院国際マネジメント研究科
博士後期課程 2年 夏吉 裕貴さん

<論文タイトル>
非営利組織の最高意思決定機関とパフォーマンスにかんする実証研究 —公益法人を対象とした実証分析—

<掲載雑誌>
会計プログレス No.22

<DOI>
https://doi.org/10.34605/jaa.2021.22_17

研究内容

 公益法人をはじめとした非営利組織において、資金の私的流用や非効率的な経営といった事例が数多く発生しています。これらのずさんな経営は公共サービス供給の不足や政府の財政負担の増大というような問題を引き起こす可能性があります。2019年度から「公益法人のガバナンスの更なる強化等に関する有識者会議」の開催にみられるように、日本の公益法人に対してさらなるガバナンスを求まる声が高まっています。しかし、日本において非営利組織ガバナンスを対象とした研究は数少なく、学術面から知見を提供することが課題となっています。
 そこで、本研究は、公益法人ガバナンス強化に向けたこのような動きに資するため、日本において公益法人を監視する主体は誰かを明らかにすることを目的としました。非営利組織研究の進む米国では、監視主体は主に寄付者であることが発見されていますが、日本の寄附市場は米国と比較して小規模であり、寄付者による監視もまた小さいものとなっています。
 2013年度から2018年度における全公益法人のビッグデータを用いて実証分析を行った結果、公益法人における社員/評議員の数が多いほど公益目的事業費率が高くなることを発見しました。この結果は、公益法人の社員/評議員が公益法人を監視することによって、公益法人の財務パフォーマンス向上させることを示唆していると解釈できます。公益法人に対して監視するガバナンスの役割を、日本においては社員総会/評議員会が担っている可能性を示しています。

今後の展開

 社員総会/評議員会がガバナンスを高める役割を持つことは、公益法人をめぐる利害関係者に多くの示唆をもたらします。たとえば、公益法人の効率化を目指す資金提供者は公益法人に社員/評議員を増やすよう要求する、規制する、あるいは自ら社員/評議員となることでガバナンスの向上を通じ、公益法人が提供するサービスの質・量の改善をめざすことができるはずです。また、昨今問題が指摘される学校法人や社会福祉法人などでも、社員総会/評議員会という制度をうまく活用することで、非営利組織ガバナンスを強化することができるかもしれません。
 今後、さらに社員総会/評議員だけでなく、理事会などで役職を持つ人がどのような属性や背景(例:創業者一族、専門家、学歴など)を持つかを検証することで、ガバナンスに影響を与える要因をより精緻化させていく必要があります。

※1 会計プログレス:
日本会計研究学会が発行している会計学に関するジャーナル。

問い合わせ先

横浜市立大学 広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp


 

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