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木原生物学研究所の辻寛之准教授らが、国際共同研究により、フロリゲン遺伝子の特徴的な制御を解明!

2021.05.07
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木原生物学研究所の辻寛之准教授、Babak Behnam博士らは、コロンビア・ベトナムとの国際共同研究で、コロンビア野外圃場で栽培したキャッサバにおけるフィールドトランスクリプトームを解析し、フロリゲン遺伝子の特徴的な制御を解明。論文がPlant Molecular Biology誌に発表されました。

木原生物学研究所の辻寛之准教授と、研究当時特任助教だったBabak Behnam博士、肥後あすか博士は、コロンビアの熱帯作物研究センター、ベトナム農業遺伝学研究所、日本の理化学研究所との国際共同研究により、コロンビアの野外圃場で栽培したキャッサバにおける全遺伝子の発現パターンを全成長ステージについて解明し、フロリゲン遺伝子の特徴的な制御を解明しました。
コロンビアの圃場でキャッサバの調査
キャッサバはデンプン原料として世界的に注目されている作物ですが、品種改良はそれほど進んでいません。キャッサバはタピオカや工業用デンプンの原料となる作物です。貧栄養環境でも旺盛な生産力を示すことから、気候変動に対応した持続的な作物生産や農家の経済的自立を助ける作物として世界的に注目されています。キャッサバの品種改良は非常に重要ですがこれまでうまく進めることが困難でした。交配によって品種改良するためには掛け合わせる植物同士が同時に花を咲かせる必要がありますが、キャッサバは花がいつ咲くのかを制御することが困難だからです。キャッサバが環境に応答してどのように花をつけるのかが理解されればこの問題の解決につながります。
本研究ではキャッサバをコロンビアの野外圃場で栽培し、成長期間に応じた全遺伝子の発現変動を解明しました。この解析によって、野外で栽培されたキャッサバは2段階の発生ステージ変換を経験していることを明らかにし、さらにフロリゲン遺伝子がステージに応じた発現変動をしながら花芽形成を誘導することを初めて明らかにしました。本研究の知見は将来的にキャッサバの花の咲く時期を制御可能にすることにつながり、交配育種による優良品種育成に貢献できると期待しています。
コロンビアCIATの実験室にてBabak Behnam 特任助教と辻准教授
Behnam, B., Higo, A., Yamaguchi, K., Tokunaga, H., Utsumi, Y., Selvaraj, M.G., Seki, M., Ishitani, M., Becerra Lopez-Lavalle L.A., Tsuji, H. (2021) Field‐transcriptome analyses reveal developmental transitions during flowering in cassava (Manihot esculenta Crantz). Plant Mol. Biol. DOI:10.1007/s11103-021-01149-5

本研究は、コロンビアの国際熱帯農業センター(CIAT)、ベトナムの農業遺伝学研究所およびキャッサバ分子育種国際研究所(AGI /ILCMB)、日本の理化学研究所・環境資源科学研究センター との国際共同研究で実施されました。


JSPS国際共同研究事業プロジェクト日本学術振興会の国際共同研究事業「頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラム(28年度・29年度)/国際的な活躍が期待できる研究者の育成事業(30年度)」(代表 辻 寛之)による支援を含む成果です。
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