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生命ナノシステム科学研究科の竹下俊英さんと坂上弘輝さんの共同研究が、国際会議ACEM/JEMS 2019でベストプレゼンテーション賞を受賞

2020.02.10
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生命ナノシステム科学研究科の竹下俊英さんと坂上弘輝さんの共同研究が、国際会議ACEM/JEMS 2019でベストプレゼンテーション賞を受賞

生命ナノシステム科学研究科生命環境システム科学専攻 博士前期課程2年の竹下俊英さんと、物質システム科学専攻 博士前期課程1年の坂上弘輝さんが、11月18日(月)~20日(水)に一橋大学一橋講堂(東京都)で行われた第6回アジア環境変異原学会と日本環境変異原学会第48回大会の合同大会(ACEM/JEMS 2019)で共同研究について発表を行い、キヤノン賞(ベストプレゼンテーション賞)を受賞しました。

受賞者

生命ナノシステム科学研究科 生命環境システム科学専攻 博士前期課程2年
竹下俊英さん
指導教員:Kanaly Robert教授

生命ナノシステム科学研究科 物質システム科学専攻 博士前期課程1年
坂上弘輝さん
指導教員:立川仁典教授

研究内容

Verification of DNA adduct formation derived from chemical compound by combining the DNA/RNA adductome method and in silico ;ab initio calculation analysis (DNA/RNA アダクトーム法とin silico非経験的計算解析による化学物質由来 DNA付加体形成の検証)

医薬品・化粧品開発等、新規化学物質の創製において、候補化学物質の「遺伝毒性」の有無を把握する手法が必要とされています。遺伝毒性は、時に突然変異の引き金となるため、癌や老化をはじめとした多くの疾患の要因となります。 本研究では、この遺伝毒性を引き起こす根本的な要因の1つである「DNA付加体」と呼ばれるDNAへの化学修飾に注目しました。DNA付加体を直接検出できれば、多くの化合物の遺伝毒性ポテンシャルを評価できるという考えのもと、化合物による付加体形成の有無と付加体化学構造を推定する方法論に重点を置き研究を実施しました。化合物によるDNA付加体形成の有無を判断するため、DNA付加体の網羅的解析法であるDNAアダクトーム法をヒト肝臓由来培養細胞に適用し実験を行いました。また、DNAアダクトーム法データを補完する手法として、細胞内RNAの損傷にも着目し、RNA付加体の網羅的解析法(RNAアダクトーム法)の適用を行いました。これら生体細胞を用いた手法に加え、DNA/RNAアダクトーム法で得られたデータから付加体構造を予測し、それをコンピューター上での量子化学計算により解析するという手段が用いられました。 発表では、いくつかの芳香族アミン化合物、多環芳香族炭化水素、かび毒を対象にした上記研究の結果を基に、遺伝毒性の根本原因をアダクトーム法により「直接検出・構造予測」を行い、量子化学計算で「説明する」組み合わせ手法の有用性について議論を行いました。

竹下俊英さんのコメント

この度は名誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。
国際会議での口演発表(とポスター発表)ははじめてだったこともあり、自身の力不足を痛感するとともに多くの課題の発見に繋がりました。 もともと本研究は、立川研究室の現博士前期課程1年生の池田さんと議論していた質量分析中フラグメントイオンの予測という研究課題の中で、量子化学計算手法について知識を得られたことがきっかけでした。私が本研究への量子化学計算の適用と提案を進める上で、大事なきっかけを作ってくれた池田さんに感謝申し上げます。さらに、量子化学計算についての多くを御教授くださった立川研究室の小林先生と高木先生に、また何よりも今回の共同研究を快く引き受けてくださった立川先生と坂上さんに、改めて心より御礼申し上げます。

坂上弘輝さんのコメント

この度は竹下さんとの共同研究が受賞したこと、大変嬉しく思います。 今回私は反応経路の量子化学計算を行い、竹下さんと議論を行いました。 現在私の研究室では、金属内部や表面等で起きる反応を計算するための手法開発を行っています。今後手法の評価を行っていく上で、実際の実験データとの直接比較を行うために実験の方々と議論を交わしていく必要があると考えます。したがって、今回の共同研究で実際に生の実験を行なっている研究者と計算手法や結果を議論できたことは非常に良い経験になりました。 またこのように自分が関わった研究が世間に評価されたということは、喜ばしいことであり、研究を行っていくモチベーションにもなりました。
今後も、自身の研究分野での理解を深めるとともに、他分野の研究者との方との積極的なコミュニケーションを行っていくことで成長していけたらと思います。

指導教員 Kanaly Robert教授からのコメント

Congratulations Takeshita san!
Thank you for your hard work on this interdisciplinary project that joins different fields in toxicology and chemistry in regard to studying DNA damage! We are indebted to our colleagues in Tachikawa Labs for their strong collaboration. Thanks to all involved for their effort and support of our lab at YCU!

指導教員 立川仁典教授からのコメント

竹下君、坂上君、この度は国際会議でのベストプレゼンテーション賞のご受賞、誠におめでとうございます!
今回の受賞に輝いたことは、生命環境システム科学専攻と物質システム科学専攻の、専攻間での共同研究が評価されたとのことで、物質システム科学専攻専攻長としても、大変うれしく思います。 サイエンスの発展には、今回のような実験と計算の協働が不可欠となってきます。
今回の受賞を機に、今後さらなる共同研究に発展することを楽しみにしています。
竹下君と坂上君の、より一層の活躍を期待しています。
<日本環境変異原学会とは> 
人間・生物・地球環境における突然変異原※、とくに公衆の健康に重大な関係を有する変異原と、これに関連する基礎研究の推進ならびに関連情報技術の伝達を目的とする学会で、今回開催された年次大会は48回目となり、化学物質の毒性を研究対象とする学会組織の中では最も古い歴史を持つ学会です。
※変異原・・・遺伝子や染色体に突然変異を起こす物理的、化学的、生物的要因の総称で、DNAや染色体にダメージを与える化学物質のこと。
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