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横浜市立大学 YOKOHAMA CITY UNIVERSITY

第23回計算科学に関する国際シンポジウムで生命ナノシステム科学研究科物質システム科学専攻の3名が表彰!

2019.08.26
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大場優生さんがOral Award、岡野さくらさんと名城嗣敏さんがPoster Awardをそれぞれ受賞

大学院生命ナノシステム科学研究科物質システム科学専攻博士後期課程3年の大場優生さん、同研究科同専攻博士前期課程1年の岡野さくらさん、同研究科同専攻博士前期課程1年の名城嗣敏さんは、2019年6月27日(木)~29日(金)にタイ、チェンマイ大学で開催された第23回計算科学に関する国際シンポジウム(The 23rd International Annual Symposium on Computational Science and Engineering (ANSCSE23))において発表を行い、Oral Award(大場優生さん)、Poster Award(岡野さくらさん、名城嗣敏さん)をそれぞれ受賞しました。
賞状を手にする大場優生さん(左)、名城嗣敏さん(右)(上写真)、研究成果を説明する岡野さくらさん(下写真)
生命ナノシステム科学研究科 物質システム科学専攻
博士後期課程 3年
大場優生 さん
指導教員 立川仁典 教授

生命ナノシステム科学研究科 物質システム科学専攻
博士前期課程 1年
岡野さくら さん
指導教員 立川仁典 教授

生命ナノシステム科学研究科 物質システム科学専攻
博士前期課程 1年
名城嗣敏 さん
指導教員 北幸海 准教授

発表内容

大場優生さん

発表演題
「 Path Integral Molecular Dynamics Simulations for Muoniated Radicals (Mu-X)」

電磁石」というのを皆さんはご存知かと思います。ぐるぐる巻きにしたコイルに電流を流すと磁力が発生するというものです。これはミクロな世界でも起こります。陽子などの原子を構成する粒子は、スピンをもつことによって磁力を持つのです。この現象を使えば、未知の分子の中で「粒子が感じる磁場を観察する」ことによって、その分子を知ることができます。これが分子の磁気測定の基本的な考え方です。
私の研究に関連する測定法を実施する際には「分子の中で粒子のスピンがどう変化するか」という部分に着目し、ひと工夫します。測定に用いる粒子を、とても質量の小さなミューオンという素粒子に変えるのです。これにより従来の測定法よりも高精度な測定が行えるのです。私はそんなミューオンを使った次世代の測定法の理論を、計算によって創る研究をしています。計算について興味を持っていただけたならば、 過去の記事で優しく解説していますのでご覧ください。また、こちらの雑誌にはより詳しい内容が載っています。

岡野さくらさん

発表演題
「Path integral molecular dynamics simulations for muoniated and hydrogenated thioacetone radicals 」

わたしの研究テーマは大場さんと同様、ミューオニウム (Mu) 付加体に対するMuの超微細結合定数 (HFCC) についてです。HFCCとは、ラジカル中の電子と核のスピン間相互作用を表す定数で、磁性測定においては、その分子の構造の情報を得る手がかりとなる重要な値です。わたしはこのHFCCと構造の関係を、シミュレーションによって理論的に解析しています。


今回のポスター発表では、対象分子をチオアセトンのMu付加体 (Mu化チオアセトン, Fig.1中の分子) としてHFCCの予測を行い、その値に対する両側のメチル基の影響を解析した結果を報告いたしました。HFCCの分布 (Fig.1) には0 MHz付近と平衡構造付近にピークが立っており、Mu化チオアセトンのHFCCの予測値は、これら2つの寄与からなることが予測されました。そこで、これら2つのピークの由来を解析したところ、S-C-Muの角度の大小がMu上のスピンの存在の有無を決定し、メチル基の立体配座がMu上のスピンのメチル基水素への流入を支配していることがわかりました (Fig.2) 。

名城嗣敏さん

発表演題
「 Molecular dynamics study of coil-to-globule phase transition of thermoresponsive polymer in water solvent」

ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) (PNIPAAm) (Fig. 1) は、温度に応答して相転移現象を引き起こす温度応答性高分子の一つです。一般的な水環境では、PNIPAAmは32℃で相転移を示し、低温で親水性または高温で疎水性を示します。PNIPAAmの分子構造は、低温で直鎖状態または高温で凝集状態になります。この相転移は可逆的でコイル・グロビュール転移と呼ばれています。PNIPAAmのこのような熱反応特性は、本学の本多研究室が進める大気環境下で作動する新しい冷却材料の開発(Fig.2)に利用できるなど有効性が示されています。しかしながら、我々の知る限りでは、大気中でのPNIPAAmのコイル・グロビュール転移の詳細なメカニズムは、理論的にも実験的にもまだ未解明です。そこで本研究では、まず、大気中のPNIPAAmの可逆的な親水性 - 疎水性特性の理論的解明に向けて、バルク水環境下でPNIPAAmの分子動力学シミュレーションを行いました。

                 
     Fig. 1 PNIPAAmの構造図         Fig. 2 PNIPAAmを用いた冷却材料のメカニズム

学生コメント

大場優生さん

物理、化学、数学、生物と多岐な分野にわたる大きな学会で賞をいただき光栄です。他分野の方々にも私の発表を楽しんでいただけていたら嬉しいです。この記事を見て私たちの研究室に興味が沸いたら、お気軽に理科館4階440に来てください。


岡野さくらさん

今回の受賞は、ひとえに先生および先輩方の熱心なご指導によるものです。この場をお借りいたしまして、お礼申し上げます。有難うございます。今後、より一層勉強・研究に注力して参りますので、先生、先輩方には今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。


名城嗣敏さん

まさか授賞式の際に自分の名前が呼ばれるとは思いませんでした。他の方々の発表内容も興味がそそられるものばかりで、周りではポスターを見にきた方と白熱した議論が展開されているのを見ました。しかし、この日のために北先生や先輩の方々に添削をしていただいたのに手ぶらでは帰るわけには行かなかったので、負けじと自分のポスターにいらっしゃった方に対しては、わかりやすく、印象に残るような説明を英語で話し続けました。
その結果が実になったということでシンプルに嬉しい気持ちや北先生・先輩の方々に対して感謝の気持ちなどがこみ上げていきました。そして、今回の受賞が、今後の研究のモチベーション維持の大きな原動力となっています。

指導教員コメント

立川仁典教授

大場君、岡野さん、名城君、この度は国際会議でのOral AwardとPoster Awardの受賞、まことにおめでとうございます! 今回の受賞に輝いたことは、我々のグループとしても大変うれしく思います。
ミューオンや陽電子といった反物質は、必ずしもメジャーなターゲットではないかもしれませんが、現在では、工学や医学など、様々な応用分野で使われています。一方、その原子・分子レベルでのメカニズムは十分に解明されておらず、理論的な解析が必要不可欠となっていました。大場君や岡野さんがこのようなテーマに果敢に挑戦し、経路積分法で得られたビッグデータを根気強く解析し、また懇切丁寧に研究内容を英語で説明できたことが、今回の評価につながったものと思います。これを励みにより一層の活躍を期待しています。


北幸海准教授

名城くん、この度はPoster Awardの受賞まことにおめでとうございます。
高分子は材料としては一般的なものですが、その柔軟性に起因して原子・分子スケールからメソ・マクロスケールまで極めて複雑な構造を持っています。高分子の構造・振る舞いを原子・分子レベルで理解することは、そのような階層的複雑性の最下層を理解することに他ならず、メソ・マクロスケールで発現する高分子の特性との関連性を解き明かすことは、現在の分子科学分野においても非常にチャレンジングなテーマと言えます。名城くんは学部4年次より、この度受賞に至った研究課題に取り組み、持ち前の根気強さで丁寧に研究を行ってくれました。研究としては道半ばではありますが、来訪者の方々へ研究意義や現在までの成果を丁寧に説明できたことが、この度の受賞に至ったのだと思います。これを励みにより一層の活躍を期待しています。
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