世界初!ピザ型人工タンパク質の設計・製造に成功しました—ナノバイオテクノロジー中核部品の設計・製造方法確立に期待—
2014.10.09
- プレスリリース
- 研究
世界初!ピザ型人工タンパク質の設計・製造に成功しました—ナノバイオテクノロジー中核部品の設計・製造方法確立に期待—
平成26年10月8日
横浜市立大学研究推進課
理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター
横浜市立大学研究推進課
理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター
~米国科学アカデミー紀要『PNAS』に掲載~
(米国東部標準時間10月6日午後3時00分:日本時間10月7日午前4時00分)
横浜市立大学大学院生命医科学研究科のJeremy R.H.Tame教授と、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センターのKam Y.J. Zhang博士、Arnout R.D.Voet博士らの共同研究グループが、コンピューターによる完全回転対称プロペラ型(愛称ピザ型)人工タンパク質設計方法を開発し、設計通りのタンパク質が実際に製造できることを証明しました。
形状がイタリア料理のピザに似ていることから、このタンパク質は「ピザ型」と名付けられました。製造に成功したピザ型人工タンパク質は、極めて小さく、熱に対する安定性も高いため、ナノバイオテクノロジー分野での応用が期待されています。
本研究成果は、アメリカ合衆国の学術雑誌『PNAS』(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)(米国科学アカデミー紀要)」(日本時間 平成26年10月7日付)にオンライン掲載されました。
ポイント ○世界発の「完全回転対称型プロペラタンパク質」設計および製造の成功 ○ナノバイオテクノロジー中核部品への応用が期待される |
研究の内容と成果
生物の進化で「遺伝子重複」が重要な役割を果たした、という学説があります。タンパク質の設計図である遺伝子がコピーされて増えることで、様々な遺伝子へと変化していったという説ですが、この説に基づいた完全対称型タンパク質の設計や、構造解析による完全対称型タンパク質検索の試みに対しては現在まで成功例がなかったため、学説は間違っているのではないかという意見もありました。
今回、私たちは「プロペラ型ファミリー」と呼ばれるグループに属するタンパク質の人工設計に取り組み、完全回転対称プロペラ型人工タンパク質を設計し、世界で初めてそのタンパク質の製造に成功しました。設計方法の基本アイディアに「遺伝子重複説」を取り入れました。現在知られている類似タンパク質の遺伝子群は、同一の先祖タンパク質遺伝子が重複、変化してできたものである、という仮説に基づき、先祖タンパク質遺伝子をコンピューターによって予想しました。この先祖タンパク質は、6個の同一タンパク質が自己組織化により合体して、6回回転対称形状を持ち、非常に安定であると予想されました。この遺伝子を人工的に化学合成し、タンパク質を製造したところ、予想通りの形状を持つことを明らかにしました。
今回、私たちは「プロペラ型ファミリー」と呼ばれるグループに属するタンパク質の人工設計に取り組み、完全回転対称プロペラ型人工タンパク質を設計し、世界で初めてそのタンパク質の製造に成功しました。設計方法の基本アイディアに「遺伝子重複説」を取り入れました。現在知られている類似タンパク質の遺伝子群は、同一の先祖タンパク質遺伝子が重複、変化してできたものである、という仮説に基づき、先祖タンパク質遺伝子をコンピューターによって予想しました。この先祖タンパク質は、6個の同一タンパク質が自己組織化により合体して、6回回転対称形状を持ち、非常に安定であると予想されました。この遺伝子を人工的に化学合成し、タンパク質を製造したところ、予想通りの形状を持つことを明らかにしました。
図1 ピザ型人工タンパク質の構造
ピザ型人工タンパク質のリボンモデル図です。6個の同一部品が自己組織化により合体して、完全6回回転対称型構造になりました。左下の「1nm」は、1ナノメートルの大きさ(1ミリメートルの1,000,000分の1)を示しています。今後の展開
今回の成功は、遺伝子重複説を支持するだけではなく、シンプルな設計方法でタンパク質をデザインできることを示しています。今回私たちが開発したタンパク質設計方法は、簡単に他のタンパク質グループにも応用できます。自己組織化で形ができあがるナノスケール部品は、極小電子デバイスの製造などに役立ちます。今後様々な分野のナノバイオテクノロジーへの応用が期待されます。
※本研究は、理化学研究所外国人博士研究員助成プログラム、日本学術振興会科学研究費助成事業の助成を受けています。
※本研究は、理化学研究所外国人博士研究員助成プログラム、日本学術振興会科学研究費助成事業の助成を受けています。
図2 結晶化されたピザ型人工タンパク質の様子
ピザ型人工タンパク質は結晶化(写真)されて構造解析されました。下の図は、結晶中でどのようにピザ型タンパク質が互いに結合しているかを示しています。この性質を利用した極小部品や極小回路製造への応用が期待されます。図3 ピザ型人工タンパク質のバリエーション
ピザ型人工タンパク質は、工夫次第でいろいろな形にすることができました。
用語解説
ナノバイオテクノロジーナノテクノロジーとバイオテクノロジーを融合させた新しい技術。ナノテクノロジーは1ナノメートル(1ミリメートルの1,000,000分の1)程度の大きさの部品を制御する技術で、バイオテクノロジーは遺伝子工学や細胞工学、タンパク質工学などを利用する技術。
お問い合わせ先
(本資料の内容に関するお問い合わせ)○公立大学法人横浜市立大学 大学院生命医科学研究科
教授 Jeremy R.H. Tame
横浜市鶴見区末広町1-7-29
TEL:045-508-7228
E-mail:
(取材対応窓口、資料請求など)
○公立大学法人横浜市立大学 研究推進課長 嶋崎 孝浩
TEL:045-787-2019
○独立行政法人理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター
チーフ・サイエンスコミュニケーター 山岸 敦
TEL:078-304-7138