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窪田教授らの研究グループが ミッションリハーサル型腹腔鏡腎臓手術シミュレータの開発に成功!

2009.04.20
  • プレスリリース
  • 研究
○世界で初めて,患者固有の情報を組み込み,ミッションリハーサルを主目的とした腹腔鏡腎臓手術シミュレータの開発に成功。
○このシミュレータにより,手術前に高度手術のプランニングとリハーサル及びトレーニングが可能となり,患者にやさしい高度手術の成績と安全性の向上が期待される。


横浜市立大学先端医科学研究センター及び附属病院・窪田吉信教授(くぼたよしのぶ・泌尿器病態学)らのグループは,手術前に,CTやMRI画像情報の高速演算処理とビジュアル画像化及びそれに連動する模擬操作機器の開発により個々の患者に対応した条件下での手術シミュレーションが可能となる世界初のミッションリハーサル型腹腔鏡手術シミュレータを開発しました。
このシステムの実用化により,術前に患者固有の解剖学的条件下での手術毎のシミュレーションとトレーニングが可能となり,高度手術の成績と安全性の向上への寄与が期待されます。
この研究は様々なシミュレーション技術に実績のある三菱プレシジョン株式会社(社長・北山忠善)技術開発部(チームリーダー・緒方正人)と独立行政法人理化学研究所・生体シミュレーションチーム(チームリーダー・姫野龍太郎,現情報基盤センター長),生物基盤構築チーム(チームリーダー・横田秀夫)との共同研究による成果です。

☆研究概要

医療技術と医療機器の進歩により,腹部手術の多くが急速に腹腔鏡下に行われるようになっています。この手術は患者の体にやさしい低侵襲手術と位置づけられていますが,手術手技は難易度が高く,それ故に手術技術習得には時間がかかりトレーニングとトレーニングツールが不可欠です。
腹腔鏡手術用シミュレータは,現在複数のメーカーから販売されており,Part task trainer(Box,器械のハンドリングの練習)やTask trainer(決められたシナリオに沿って練習)などは,基本技術の習得には有用です。
しかし,実際の腹腔鏡手術では患者の個々の体型が異なるのみならず,患者毎に血管の本数や走行,臓器の位置関係,腫瘍の位置や大きさが異なり,それぞれに対応した手術が要求されます。一般的に術者は,手術前に画像データを頭の中で再構築して手術に臨みますが,複雑な血管走行症例や解剖学的に珍しい症例ではこれが難しい場合が少なくありません。それ故,これらに対応した手術計画やリハーサルのできる手術シミュレータが望まれます。
本研究グループは,個々の患者のCT,MRIの画像情報をModel data generation systemに取り込み,手術予定患者の解剖学的要素(腎臓,腎腫瘍,尿管,腎動静脈,大動静脈及び周囲の血管系,腎の隣接臓器,体表と筋肉)を抽出し,Surgical simulatorの中で抽出した臓器を再現する実時間シミュレーションモデルと高速演算装置及び駆動装置を持つ操作装置を組み合わせ,腹腔鏡による腎臓がんに対する腎臓部分切除術や腎臓全摘出術をシナリオとした患者固有の訓練を模擬できる手術シミュレーションシステムと装置の開発に,世界で初めて成功しました。
このシステムと装置はすべての腹部手術へ応用可能で,実用化により手術前に患者固有の条件下で手術のプランニングとリハーサル及びトレーニングが行えるようになります。これにより,難易度の高い高度手術の成績と安全性の向上を期待しています。
今後,横浜市大では更なる手術シナリオの改良と開発されたシミュレータ使用による手術成績(手術時間短縮,出血量減少など)の検討を行う予定です。
また,共同研究機関である三菱プレシジョン(*)は商業ベースでの実用機の開発の検討に着手し,理化学研究所では,更なる生体計測データの集積と演算法や処理法の改良を行う予定です。

※本研究では,すでに2つの特許申請が行われ,また,4月24日からシカゴで開催されるアメリカ泌尿器科学会(American Urological Association Annual Meeting 2009)で発表される予定です。
※本研究は,横浜市立大学運営交付金,独立行政法人理化学研究所研究費,及び独立行政法人情報通信研究機構の民間基盤技術研究促進制度による委託研究「生体ボリュームデータに基づくネットワーク型VR手術手技教育訓練システム」(三菱プレシジョン株式会社受託)により行われています。
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