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中島淳教授らとスカイライトバイオテックの共同研究がJSTシーズ顕在化の課題に採択されました

2008.12.24
  • プレスリリース
  • 研究
本学医学研究科(附属病院消化器内科)の中島敦教授は、同教授、藤田浩司助教、米田正人助教らの研究グループが取得している特許を基に株式会社スカイライトバイオッテックと産学共同研究を組み、研究や開発を進めています。この研究成果は本学先端医科学研究センター[センター長 井上教授]のプロジェクトの成果の一つです。

研究内容

 お酒をあまり飲まないにも関わらず、食生活の欧米化や運動不足を背景に慢性的なエネルギー過剰を呈し、肝臓に脂肪が蓄積する病態を非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)といいます。神奈川県の調査では成人男性の約30%が罹患しており、健診で見つかる病気としては糖尿病や高血圧、高脂血症などを抜き、第一位の患者数を有する疾患となっております。中でも問題となっているのが、NAFLDの約2~3割は非アルコール性脂肪肝炎(NASH:nonalcoholic steatohepatitis)という進行性の病態を呈し、肝硬変や肝臓癌といった致死的な転帰を辿るケースが存在する事です。日本人は倹約遺伝子活性が高く、糖尿病の爆発的増加をみてもわかるように、エネルギー過剰に極めて弱い人種であることを考えると、今後脂肪肝からNASHに至るケースが急増し、NASHが新興疾患として国民生活を脅かすことが予想され、その対策は急務となっております。
 一般的に、健康診断等の血液検査で肝機能異常を指摘された事を契機に専門病院を受診し、精密検査を経てNASHの診断に至るケースが多いですが、1)肝臓は“沈黙の臓器”と呼ばれるほど自覚症状が乏しい事から受診せずに病気を放置しているケースが多いうえ、2)診断方法も入院して肝臓に細い針を刺して組織の一部を調べる肝生検が必須であり、時間的経済的制約から精査を希望されないケースが多く、NASHの診断に至っているケースは氷山の一角に過ぎず、潜在NASH患者の拾い上げが最重要課題となっております。
 この課題に対して、本学付属病院の藤田浩司助教、米田正人助教、中島 淳教授らの研究グループは、この病気の患者さんで血液中のコリンという分子が非常に多く存在することを発見し、これを測定することで非アルコール性脂肪肝疾患の診断が血液検査で出来ることを発見し特許を取得しております。今回この大学発の特許を基に株式会社スカイライトバイオッテックと産学共同研究を組み、診療所や病院でも血液中のコリンを測定できる簡易検査装置の開発を進めております。当該診断機器の開発により、将来的には血液を用いて低侵襲・簡便・安価に非アルコール性脂肪肝疾患の診断を可能とし、それにより数多の潜在NASH患者を拾い上げ、その治療に寄与できる事が期待されております。当大学では昔はなかった新しい病気と闘うために研究し、その知的財産を企業とともに市民のために実用化する努力をしております。本研究は本学先端医科学研究センター[センター長 井上教授]のプロジェクトの成果の一つです。
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