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横山助教が日本小児循環器学会のYoung Investigators' Awardsを受賞しました

2008.07.16
  • プレスリリース
  • 研究
 若手研究者として活躍している本学 循環制御医学の横山詩子助教がヴィタミンAの母胎投与による動脈管の遺伝子発現と血管成熟度の変化の研究で日本小児循環器学会のYoung Investigators' Awardsを受賞しました。石川 義弘教授のもと横山 助教・南沢 早稲田大学教授らの研究グループは下記内容をマイクロアレイを用いて動脈管で網羅的な遺伝子解析を行い、分子生物学的に詳細な検討を加えました。

ヴィタミンAの母胎投与はラット動脈管の遺伝子発現と血管成熟度を変化させる

ヴィタミンAの代謝物であるレチノイン酸は、各種刺激への動脈管の反応性やリモデリングを制御しているとされている。我々はラット母胎にヴィタミンAを2-4日投与し、その後マイクロアレイを用いて未熟児、成熟児(出生直前の胎児)、生後0日の動脈管組織の遺伝子発現を網羅的に調べ、各発達段階に優位に発現する遺伝子を同定した。調べた8,740あまりの遺伝子のうち、ヴィタミンA投与により91遺伝子の発現が動脈管で2.5倍以上に増加した。未熟児、成熟児の胎児期の動脈管に優位に発現している遺伝子の半分はヴィタミンA投与で発現が変化したのに対して、生後の動脈管に優位な遺伝子では、そのうちわずか5%しかヴィタミンAに反応しなかった。このことは、胎生期の動脈管に発現している遺伝子はレチノイン酸シグナルに感受性が高いということを示唆している。またヴィタミンAを投与された未熟児動脈管にみられた51の遺伝子の種類と発現の程度は、未投与の場合の成熟児に優位に認められた遺伝子群と似ていた。つまりヴィタミンA投与によって、未熟児動脈管の遺伝子発現が全体的に成熟児の動脈管の遺伝子発現のパターンに近づくということが示唆された。組織学的検討では、母胎へのヴィタミンA投与により未熟児の動脈管でフィブロネクチンやヒアルロン酸の産生が増加し、動脈管の生理的リモデリングである内膜肥厚形成の促進を認めた。これは正常発達の胎児では成熟児でのみ見られる特徴的な所見である。本研究により、正常と全く同じ血管リモデリングのメカニズムではないものの、ヴィタミンAが未熟な動脈管の構造を成熟させることが示唆された。
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