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【開催報告】さくらサイエンスプランによるスタディ・ツアー「アジアにおける都市再生」の実施

【開催報告】さくらサイエンスプランによるスタディ・ツアー「アジアにおける都市再生」の実施

横浜市立大学グローバル都市協力研究センターまちづくりユニットでは、科学技術振興機構(JST)の日本・アジア青少年サイエンス交流事業「さくらサイエンスプラン」の支援をうけ、ベトナム国家大学ホーチミン市校人文社会科学大学とマレーシア科学大学から学生を2名ずつ招聘し、「アジアにおける都市再生—持続可能な都市づくりのための技術交流—」をテーマとするスタディ・ツアーを実施しました(9月7日~12日)。JST招聘学生4名のほか、マレーシア科学大学からはさらに学生4名、韓国の仁川大学校都市科学大学から学生10名・教員2名、本学から学生8名が交流活動に参加し、活気あふれる1週間となりました。仁川大学校とは今夏8月に韓国で国際学生ワークショップを実施しており、その時の参加学生を横浜に迎えています。
このスタディ・ツアーは、急速な発展の最中にあるアジアの都市が、過度な人口集中、環境悪化、乱開発、災害への脆弱性等さまざまな共通の課題に直面していることを背景にプログラム設計を行っています。横浜と東京の都市再生の最新事例の講義・見学を通して環境配慮技術や計画論、歴史的建造物の活用手法など日本の都市工学の一端を紹介し、その上で、アジアにおけるこれからの都市計画について、都市の持続可能性に特に焦点をあてながら、議論・発表する機会を設けました。
スタディ・ツアーは、本学が中心となって設立したアジアの大学間ネットワーク組織「アカデミックコンソーシアム(IACSC)」の第6回総会の横浜開催に時期を合わせて実施しました。第6回IACSC総会・国際シンポジウムではプログラムの一環として、国際学生フォーラムを実施しており、スタディ・ツアーの成果もその中で発表しました。

プログラム内容

【9月7日(1日目)】

今回のプログラムは、関内の空きビルをリノベーションしたシェアオフィス「さくらWORKS」からスタートしました。学生たちは、日本の都市計画および横浜の都市デザインについて本学国際総合科学部国際都市学系の中西正彦准教授と鈴木伸治教授の講義をうけた後、ホーチミン、ペナン、仁川の都市計画について、大学ごとに用意してきたプレゼンテーションを行いました。学生、教員からの質問によどみなく応じる様子からは、周到に準備してきた様子がうかがえました。昼食をはさみ、午後は、国吉直行特別契約教授と鈴木教授がガイドをつとめ、午前中の講義の内容を確認しながら、関内のまちあるきを行いました。特にベトナム、マレーシアの学生たちは、歩道が整備されていることによる歩きやすさに驚いた様子でした。

【9月8日(2日目)】

地域再生の事例を学ぶため、横浜の黄金町地区を訪れました。横浜の創造都市政策や黄金町のまちづくりについて鈴木教授の講義をうけた後、黄金町エリアマネジメントセンターが管理するアートスタジオやギャラリーを見学しました。午後は、三菱地所株式会社の恵良隆二氏を講師に迎え、みなとみらい21地区の見学を行いました。みなとみらいの開発について、基本コンセプト、環境技術、防災計画、土木産業遺構の保存活用等の説明をうけながら、地区内をめぐりました。ランドマークタワーでは都市模型を見ながら解説を聞くことができ、明解な理解につながりました。

【9月9日(3日目)】

金沢シーサイドタウンを見学しました。本学拠点であるUDCN並木ラボで、1970年代末のニュータウン開発と現在進められているまちづくりについて中西准教授より講義をうけたのち、団地内を見学しました。その後、鎌倉へ移動し、鎌倉大仏と鶴岡八幡宮を訪れました。台風のために予定を早めに切り上げざるを得ませんでしたが、日本の古都で伝統文化の一端にふれる機会となりました。夕方には関内に戻り、さくらWORKSでグループディスカッションを開始しました。全26名の学生は5グループに分かれ、各グループが環境、経済、社会、文化、防災の5つのテーマをひとつずつ担当し、持続可能なまちづくりのため、それぞれのテーマに関してどのようなことを大切にするべきか、議論を行いました。国の発展段階、経済状況、文化、災害リスク等が異なる中で、共通の問題意識をもつことに苦慮するグループもありましたが、コミュニケーションを重ね、徐々に互いの意思への理解が進んでいきました。

【9月10日(4日目)】

六本木ヒルズと丸の内再開発地区の見学のため、東京に向かいました。六本木ヒルズでは、森ビル株式会社の松本浩一氏を講師に招き、六本木ヒルズのエネルギーシステム、緑化、防災、タウンマネジメント等の説明をいただきました。1000分の1縮尺の東京の都市模型も特別に見学することができ、東京の都市の広がりはもとより、模型の精巧さにも、学生たちは見入っていました。悪天候のために屋外庭園・田んぼの見学はかなわず、展望台からの眺めも限られたものになってしまいましたが、眼下にひろがる光景に、東京という都市の様子を感じてもらうことができたと思います。丸の内では、再び三菱地所株式会社の恵良氏にお越しいただきました。丸ビル、新丸ビル、明治生命館を含む複数のビルをめぐりながら、地域冷暖房とエネルギー利用、丸の内のアーバンデザイン、歴史的建造物の保存活用、環境制御技術、エリアマネジメントなど、再構築が進む丸の内について解説していただきました。

【9月11日(5日目)】

午後に行うアカデミックコンソーシアム国際学生フォーラムでの発表に向け、朝からグループディスカッションとスライド作りに取り組みました。午後の発表では、5グループ各々による、アジアにおけるこれからの都市計画についてのプレゼンテーションのほか、大学ごとによるホーチミン、ペナン、仁川、横浜の都市計画と課題のプレゼンテーションも行いました。時間の制約があり、質疑応答の時間がなくなってしまったのは残念でしたが、横浜市開港記念会館講堂という大きな会場で、アジア諸国から参加していた多くの教員・学生に向けて発表を行うことができたのはとてもよい経験になったと思います。夕方は本学が用意した学生向けイベント「浴衣でまちあるき」に参加し、浴衣の着付けを体験するとともに、学生間の交流を深めました。

【9月12日(6日目)】

アカデミックコンソーシアム国際シンポジウム、その後分科会に参加し、専門家・研究者の発表を聴講しました。都市計画に関する今日的課題、大規模災害と都市復興、アジアにおける都市保全について学びました。最後の振り返りの場では、交流の記念として本学教員より4つの大学のロゴ入りマグカップを贈り、再会を誓ってお別れをしました。

プログラムを終えて

およそ1週間にわたるプログラムを進めていく中では、日ごとに、学生間の交流が深まっていく様子が手にとるようにわかりました。招聘した学生は皆、日本のまちなみや都市計画に深い印象をうけたこと、またいつか来日したいという希望を口にしていました。今回の交流プログラムでは日本の都市計画のよい面だけではなく、例えば人口減少化にどう取り組むかといった、日本社会が抱えるこれからの課題も伝えています。4か国からの参加学生が、10年後、20年後も、こうした都市の課題にともに取り組む仲間であり続けてほしいと思います。