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皮膚筋炎について

皮膚筋炎の疾患情報

主に皮膚と筋肉に炎症が生じる自己免疫疾患(自分の免疫が自己を攻撃する)です。
2009年の特定疾患認定患者数は17,000人と推定されていますが、患者数は年々増加傾向にあり現在は20,000人を超えているものと考えられます。男女比は1:3と女性に多くみられます。
この病気は全年齢層に見られますが、特に発症しやすい年齢は小児期(5~14歳)と成人期(35~64歳)の二つのピークを持つ二峰性の分布を示します。明らかな原因は不明ですが、免疫異常、ウイルスなどの感染、悪性腫瘍、環境要因、遺伝的素因が考えられています。

図1図1
図1

多くの方は、全身の倦怠感(筋力低下)や皮疹で発症することが多く、皮膚科や内科を受診します。
皮膚症状としては、上眼瞼部の腫脹と紫紅色変化(ヘリオトロープ疹)、手指関節背面や肘、膝等の盛り上がった暗紅色の皮疹(ゴットロン丘疹・ゴットロン徴候)、手指の爪の周囲の紅斑(爪囲紅斑)、手指の側面に生じる固い角質を伴う紅斑(メカニックスハンド)、頸部から胸部にかけての紅斑(Vネック徴候)、上背部から肩にかけての紅斑(ショールサイン)、背部や上腕の色素沈着や色素脱失・皮膚萎縮(ポイキロデルマ)などが特徴的です(図1)。また、爪の根元(爪郭部)の血管拡張や爪上皮の出血点を認めます。寒冷時に指先が白色や紫色に変化する、レイノー現象がみられることもあります。
また、筋炎を伴わない無筋症性皮膚筋炎という病型もあるため、皮膚症状の診断がとても大切です。

筋症状は頸部、上腕、大腿など体幹に近い筋肉におきやすいため、しゃがみ立ちが困難、下肢や腕を上げられないなどの症状がみられることが多いです。一方で物をつまんだり握ったりする力は保たれる場合がほとんどです。
筋症状が嚥下筋や構語筋に及ぶと嚥下障害や鼻声を生じることもあります。嚥下障害を生じると、食事摂取が困難となり、また一度失われた嚥下機能は回復に時間を要するため注意が必要です。

皮膚筋炎の一部の方は、悪性腫瘍に関連して生じるため、皮膚筋炎の診断時には、悪性腫瘍精査を行います。また、30〜40%の方に、間質性肺炎を合併するため、咳や息切れ、呼吸困難などの症状を生じます。聴診や胸部HRCTで肺の精査を行います。多くは慢性的に経過しますが、ときに急激に進行する急速進行性間質性肺炎という病型を取ることがあり、生命予後に関わるため、早期発見、早期治療が非常に重要となります。

皮膚筋炎の検査

血液検査では、自己抗体の存在や筋炎や間質性肺炎のマーカーを確認します。自己抗体は多岐にわたりますが、主要な5種類(抗TIF1γ抗体、抗MDA5抗体、抗Mi2抗体、抗ARS抗体、抗Jo-1抗体)について保険適応内で検査を行うことができます。抗体型によって、臨床病型や臓器障害の種類がある程度相関するため(図2)、抗体を測定することが症状の予測や治療の決定に有用です。

抗体 特徴、症状
抗TIF1-γ抗体 悪性腫瘍の合併、嚥下障害、広範囲の皮疹
抗MDA5抗体 急速進行性間質性肺炎、無筋炎性皮膚筋炎、逆ゴットロン徴候
抗Mi2抗体 高度なCK上昇、典型的な皮疹
抗ARS抗体 間質性肺炎、メカニクスハンド
図2

皮膚症状の重症度についてはCutaneous Dermatomyositis Disease Area and Severity Index (CDASI)という尺度を用いて評価をします。また、皮膚生検という皮膚を一部切り取って病理学的に詳細に観察する検査を行い、皮疹の確定診断を行います。筋症状を伴う場合には、筋力低下の程度を身体的所見で評価するほか、筋生検という、より深い部位まで組織を採取する検査を併用する場合もあります。
爪郭部血管異常については、キャピラロスコープ(図3)という機器を導入したことによりダーモスコープでは検知できなった微細な発症早期の病変も検出ができるようになりました(図4)。

  • 図3
    図3
  • 図4
    図4

筋症状については徒手筋力テスト(MMT:Manual Muscle Testing)によって重症度を評価します。また、MRIを撮影し炎症のある筋の部位を特定することもあります。

肺についてはレントゲン検査、HRCT検査、呼吸機能検査などを行います。特に抗MDA5 抗体陽性の皮膚筋炎を疑う場合には、急速進行性間質性肺炎の合併率が高いので、早急なHRCT検査が求められます。

また、皮膚筋炎では悪性腫瘍の合併率が高いことが知られており、特に抗TIF1-γ抗体陽性の皮膚筋炎ではその合併率が最大で70%程度にも及ぶとされるため、胃カメラや大腸カメラ、全身のCT検査を行います。また、男性の場合には泌尿器科、女性の場合には乳腺外科や婦人科とも連携し、それぞれの性別年代で起こりやすい悪性腫瘍の検索を行います。

図5図5
図5

皮膚や内臓の症状、これらの検査所見を厚生労働省の診断基準(図5)などと照らし合わせて診断の確定をします。

皮膚筋炎の治療法

急性期には安静にし、筋肉にできるだけ負担をかけないようにします。
全身性ステロイド薬が有効で、症状に応じて内服や点滴で投与を行います。重症の間質性肺炎や嚥下障害を伴う筋炎の場合にはステロイドパルス療法を併用する場合もあります。
さらに、状況に応じて免疫抑制剤を積極的に併用し、病勢の鎮静化を図ります。
アザチオプリンとシクロフォスファミドが保険適応されており、間質性肺炎のある患者さんにはタクロリムスも使用することができます。治療抵抗性の場合や嚥下障害のある場合には、免疫グロブリン大量静注療法を併用します。
また、急速進行性間質性肺炎の場合には、膠原病内科との連携により、集学的治療が行われます。
悪性腫瘍合併の皮膚筋炎の場合には、悪性腫瘍の治療により、皮膚筋炎が改善する例もあるため、まずは悪性腫瘍の治療が可能かを検討します。
一方で、嚥下障害など、治療が待てない場合は、筋炎の治療を先行することもあります。
当院では、多くの臨床的経験を有する専門医が存在し、臨床試験なども多く行われております。ご相談ください。