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活躍するYCU生—鈴木 凌さん(生命ナノシステム科学研究科 物質システム科学専攻)第46回結晶成長国内会議(JCCG-46)で講演奨励賞を受賞しました。

物質システム科学専攻の鈴木 凌さんが、第46回結晶成長国内会議(JCCG-46)にて講演奨励賞を受賞しました。今回の受賞について鈴木さんにお話を伺いました。

ー今回の学会では、どのような内容を発表されたのでしょうか?

今回の講演では「グルコースイソメラーゼ結晶の動力学的回折のロッキングカーブ測定」というタイトルで口頭発表を行いました。グルコースイソメラーゼとは“タンパク質”のひとつです。地球上には“タンパク質”とひとえに言っても、病気の発現に関わるタンパク質やその病気に対抗して薬として働くタンパク質など様々あります。そのタンパク質の機能や活性というのはタンパク質の3次元的な“形”から明らかにされています。しかし、タンパク質の大きさは数十nmで、人間の目で直接観察することはできません。そこで、タンパク質の形を観察するために、タンパク質を規則正しく並べた“結晶”と電磁波の一種である“X線”を用いて解き明かされています。ここで、タンパク質のより詳細な形を明らかにするためには、タンパク質の結晶の品質がカギになってきます。そのため、より品質の良いタンパク質結晶を作るために、「宇宙で作ってみよう!」といった研究をはじめ、世界でも様々な研究が行われています。一方で、品質の良いタンパク質結晶が出来上がってくると、従来のX線構造解析の手法ではカバーしきれない現象が生じてきます。その現象こそが発表タイトルにもある“動力学的回折”です。X線の動力学的回折は、完全結晶(いわば100%綺麗な結晶)をモデルにしており、みなさんのスマホやパソコン、車にも搭載されているシリコンや宝石として価値の高いダイヤモンドなどしかありません。本研究では「タンパク質結晶において世界で初めて動力学的回折効果を発見しました。つまり、タンパク質結晶であっても、シリコンやダイヤモンドのようないわゆる理想的な完全結晶に成り得ることを示しました。これは、従来のタンパク質の結晶構造解析手法には盛りこもれていない動力学的回折効果を取り入れる必要があることを意味します。これによって、タンパク質の形をこれまで以上の精度で解明できることを提案しました」ということが最大のポイントです。タンパク質の形を理解することは生命現象を理解することに繋がります。これまでタンパク質結晶では見られなかった新しい現象の発見と構造解析へのひとつの提案を聴講者の方々に分かりやすく、そしてインパクト性を重視し、発表を行いました。

ー受賞された感想や今後の抱負について教えてください

動力学的回折という現象や理論は1960年頃から見つかっている少し古い研究になります。そのため新規性という点では霞んでしまうところがあります。しかし、シリコンやダイヤモンドと比較して複雑な形状を持つこと、さらには高い品質が作りづらいとされるタンパク質の結晶であっても、動力学的回折が見られることは、構造解析などのタンパク質結晶を扱う分野にひとつ新しい風を吹かせることが出来るのではないかと考えています。その研究成果が講演奨励賞という形で評価されたことは非常に喜ばしく思うと同時に、自信やさらなる研究のモチベーションにつながりました。今後はより一層の努力をしていきたいと思います。

ー鈴木さんが思うYCUの魅力について教えてください

私が思うYCUの魅力はこぢんまりしているところです。この魅力は私だけでなく多くの方も思っています。特に学部時代の印象としては、理系文系に関係なく共通の講義で関りを持ち、視野が狭まることなく学問に励むことができる良さがありました。もちろん、研究に関しては焦点を絞って進めていくことになりますが、学部時代に広げた視野が少しは役に立っているのではないかと思うこともあります。また、こぢんまりしているがゆえに先生と学生の距離が近いといった点が大きな私立大学とは大きく異なるポイントなのではないかと思います。最後に、理系こそ人と話す力や人前で話す力、英語力が必要であると考えています。その点では、学部時代に理系文系関係なく過ごす講義や国際基準を目指した英語のカリキュラムはYCUのひとつ大きなアピールポイントであると思います。

橘 勝教授のコメント

日頃の実験が、このような学会賞に結びつき本当に良かったと思います。実験系では実験量がすべてです。鈴木君の強みは、誰よりも多くの実験を、誰よりも楽しくやれていることだと思います。鈴木君は、現在、大学院博士課程の1年生ですが、修士課程の時にも日本物理学会で学生奨励賞を受賞しており、今回で2つ目の学会賞になります。他にも、すでに学術論文を欧文科学雑誌に複数発表しており、学生としては世界トップレベルの成果を上げています。今回の成果は、タンパク質結晶の放射光X線トポグラフィといった当研究室でずっと世界をリードしてきた研究から生まれました。この受賞は、このような長年の当研究室の地道な研究が高く評価されたとも言えるでしょう。今回受賞の研究内容は、構造生物学や構造化学などの幅広い分野で興味がもたれているタンパク質結晶の完全性に関する研究において、回折物理学に基づく緻密な実験と解析によって、タンパク質結晶における動力学的回折現象を世界で初めて観測したことです。この成果は、広く知られているタンパク質結晶のX線構造解析を新たなステージに押し上げる可能性も秘めています。すでに世界的にも注目されており、今後の発展と鈴木君の益々の活躍が楽しみです。より一層の頑張りを期待しています。

(2018/2/26)

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