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経営学やマーケティングを医療・健康・介護に応用する研究を行っている原 広司准教授。研究範囲は幅広く、年齢層ごとの健康問題や子育て世帯が抱える問題、果ては介護施設における看取りの課題まで経営学のアプローチでそれらの課題解決策を模索しています。原准教授に研究の醍醐味や研究者としての心構えなどを伺いました。


好奇心と多角的な視点で社会の課題を科学的にとらえ、
解決策を提示する


現在の研究テーマについて教えてください。

世代ごとの健康や医療、介護の問題に対して、マーケティングや経営学の観点から研究しています。健康と経営は関係あるの?と疑問に思うかもしれませんが、実はあるんです!
たとえば、体脂肪を減らすお茶のCMをよく見ますよね。最近の消費者は健康への関心が高く、企業も健康につながる商品やサービスの開発を行っています。そこで、どんな商品だったら売れるのか、それは本当に健康につながるのかが重要になります。私はこうした課題をマーケティングなどを使って研究しています。
また、私たちは体調が悪くなったら病院へ行きますが、その病院にはたくさんの人が働いています。院内の職員同士が協力して働くことで、よりよい医療を提供することが可能となります。これは経営学で蓄積された理論や知見が役立ちます。さらに、病院は医療を提供するだけでなく、収入もしっかり確保しないといけません。収入のバランスをどう保つのかということも経営学を用いて研究しています。


研究者を志した理由やきっかけなどを教えてください。

経営に興味を持ったきっかけは高校時代、文化祭で食品模擬店の責任者になったことです。
当初は「冷やし茶漬け」を販売する予定だったのですが、保健所から食中毒リスクがあるからダメと指導を受け、8月に「熱いお茶漬け」を提供することになりました。「赤字は避けてくれ」という先生からのプレッシャーを受け、商品の味や種類、宣伝方法を工夫し、クラスメートの士気を上げる声掛けを行いました。その結果、無事に赤字を回避し、想定以上の成果を得られました。この経験がとても印象的で、経営学を学ぶきっかけになりました。
入学当初は経営者になりたかったので多くの経営者にお会いしたのですが、そこで自分は経営者の器じゃないと気づき、新たな進路を模索することに。就職活動中も悩み続けたのですが、最終的に自分の好きな経営学を極めてみようと決めました。指導教員や大学院の先輩もとても良い人で、それも大学院に進学し、研究者を志すきっかけになりましたね。


現在の研究テーマを決めたきっかけのようなものがあれば教えてください。

就職活動で、病院の採用説明会に参加したことが研究テーマとの出会いでした。当時は病院への就職にまったく興味がなかったのですが、目新しさに惹かれじっくり話を聞くうちに、病院には経営課題が山積していることに気が付きました。話を伺ったあとは病院への就職も検討しましたが、採用自体が見送りになり、それなら病院で働くのではなく、自分の好きな経営学と医療を結び付けた研究ができないか…という思いがつのりました。新しい研究領域である「医療経営」をテーマにした研究者は少ないのですが、その重要性を日々感じており、これからもっと広がっていくのではないかと考えています。


研究の面白さや醍醐味などについて教えてください。

医療経営は、まだまだ研究されていない領域であり、だからこそ新しい価値が生まれる可能性を感じています。また、この研究テーマは皆さんの健康に貢献できる可能性があることが最大のやりがいです。例えば、介護施設と医療機関の連携が密であると、介護施設利用者の健康状態の向上に寄与することが分かりました。こうした研究結果を発表し、介護施設や医療機関、行政に変化が生まれ、皆さんがより健康になってくれることがあれば、こんなにうれしいことはありません。
また、医療経営は医療者や自治体職員と協力して研究することが多い点も面白さのひとつ。2022年から始めたハマスタディ(横浜市民を対象に家庭と子育てに関する大規模なアンケート調査)では、YCU医学部の産婦人科や小児科の先生方にもメンバーに入っていただいてデータの収集と分析を行っています。医療現場の実情や政策課題とともに向き合い、解決策を導き出すこともあります。手掛けたい研究テーマが多すぎて、時間が足りないと感じる毎日です。


学生たちが研究を進めていくうえで、心がけてほしいことなどについて教えてください。

研究には、飽くなき探求心と忍耐力が不可欠です。「なぜ?」「どのように?」という疑問がすべての研究の出発点です。私の研究領域である経営学(医療経営を含む)は社会科学と呼ばれており、その名の通り社会に関する科学です。例えば、どんな声がけをしたらみんなの力が発揮できるのか、なぜ若者は映える写真を追い求めるのか、など日常にある数々の謎や疑問が研究の素材になります。研究はそれほど特別なものではなく、日々の生活にアンテナを張ると、皆さんの日常にそのヒントがちりばめられていることが分かります。一方で、何かを明らかにするのは時間がかかります。思い通りいかないこと、想定外の出来事が起こることもあります。それでも諦めない忍耐力があれば、研究の芽は出るはずです。未知の世界へ挑戦することを恐れず、好奇心に従ってやり遂げてほしいです。


研究者にとって一番必要な素養(能力)は何でしょうか。

研究においては、探求心と忍耐力に加え、研究対象者に対する誠実な態度が必要だと思います。研究対象者には貴重な時間を割いてインタビューやアンケート、実験などに協力していただいており、感謝の気持ちは忘れてはいけないと思っています。
同時に、研究の成果を研究対象者や研究に関わる方々に還元し、役立ててもらいたいという想いも、研究を続ける上で大切にしています。


研究をしていくうえで、大切にしていることは何でしょうか。

研究を進める上で欠かせないのは、研究対象者や社会の視点を理解し、相手の考えを尊重することです。社会科学は「社会」を中心に据えた学問であり、人間関係や感情、意思がからむため、これらの要素を忘れずに研究を進めることが不可欠だと思います。 その上で、私は純粋に好奇心に従っている感じですね。好奇心を抱いたこと、面白いと思ったことにまずトライします。現在取り組んでいる研究も10個以上あり、さまざまな先生と協力して多種多様なテーマを進めています。バラバラだった研究テーマが自然につながっていくこともあるので、物おじせずに新しいことにチャレンジする気持ちを大切にしています。


YCU受験生へのメッセージをお願いします。

私は高校生のころまで、集団行動が苦手で少し窮屈さを感じていました。しかし、大学生になると自由な環境で、好きなことを学び、好きなことを追求することができました。大学の先生と飲みに行ったり、経営者に会いに行ったり、自らイベントを企画することで、数々の刺激を受けました。大学という場所が本当に楽しかったので、大学教員を選んだという面もあります。
受験生の皆さんも大学では多くの出会いやチャンスに恵まれることでしょう。YCUは先生との距離が近く、医療経営のような他大学にはないテーマも学ぶことができます。先生と一緒にフィールドワークに行ったり、研究をすることもできるかもしれません。ぜひそうしたチャンスを掴み、皆さんの世界を広げてください。皆さんとYCUでお会いできる日を楽しみにしています。

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(2024/07/11)

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