食道アカラシアに対するPOEM
食道アカラシアとは
食道アカラシアは、食道の蠕動運動が障害され、下部食道(下部食道括約筋の弛緩不全)が開かなくなり、食物の通過障害や食道の拡張が起こる病態です。それにより、食事のつかえ感、胸痛、体重減少などの症状がみられます。従来、外科手術によるアプローチが中心でしたが、近年では皮膚を切開することなく、内視鏡で経口的に行うPOEM(経口内視鏡的筋層切開術)が標準治療の一つとなっております。
治療の概要
食道アカラシアに対するPOEM(Per-Oral Endoscopic Myotomy:経口内視鏡筋層切開術)は2016年4月に保険収載され、その安全性、根治性および低侵襲性から、現在では世界で広く普及している標準的な治療法です。2025年3月時点でPOEMを行っている施設は神奈川県になく、当横浜市立大学附属市民総合医療センターが唯一のPOEMを行っている施設となります。
病態
食道の蠕動運動が障害され、下部食道(下部食道括約筋の弛緩不全)が開かなくなり、食べ物の通過障害が起こる病態です。それにより、食事のつかえ感、逆流症状、胸痛、体重減少などの症状がみられます。
検査
大きく拡張した食道内に食物残渣が貯留していることが典型的です。中には食道拡張を伴わない場合もありますが、食道内に泡沫状の唾液などが貯留していることにより食道アカラシアを疑うことができます。
食道造影検査
食道造影剤(バリウム)を用いた検査です。食道胃接合部の狭窄およびそれより口側食道の拡張がみられます。
食道内圧検査
下部食道や食道全体の内圧の上昇や、正常な蠕動運動が消失していることでこの病気の診断を確定することができます。現在、横浜市立大学附属病院(金沢区福浦)と連携して食道内圧検査を行っております。


治療
POEMは経口内視鏡筋層切開術という名前のとおり、内視鏡いわゆる胃カメラを用いて口から食道に入り、食道の内側より下部食道括約筋を切開します。全身麻酔で行いますが、一般的な外科手術と異なり、体の表面に傷が残りません。術後経過にもよりますが、治療後2日目より食事を開始し、入院日数は全体を通して約6日間となります。


受診について
食道アカラシアは食道粘膜に異常を認めないなどの理由から、内視鏡検査を受けても食道アカラシアと診断されない場合も少なからずあると思われます。検査で明らかな異常がなくとも、食事のつかえや食事と関連した胸痛などの症状がみられる場合は、消化器病センター内科へご受診ください。