連携NEWS「横浜市大センター病院『膵臓がん早期診断プロジェクト』」
膵臓がん早期診断プロジェクトについて

膵臓癌は発見や診断が難しく、生存率の低い予後不良ながんとなっておりますが、大きさ10mm以下の早い段階で診断することで生命予後改善が期待されます。
膵臓がんの危険因子としては、慢性膵炎、家族歴、糖尿病の急激な増悪、肥満、腫瘍マーカーのCA19-9高値などが報告されており、これらの危険因子をお持ちの患者さんを拾い上げ早期発見・治療していくことが求められています。そこで、この度横浜市(医療局がん・疾病対策課)とプロジェクト実施病院(4病院)が共同して、膵臓がんを早期に発見して治療につなげる「膵臓がん早期診断プロジェクト」を開始しました。
このプロジェクトでは、地域の先生方と連携し、膵臓がんを疑う下記のような「膵臓がんリスク」が発見された場合に、すぐに精密検査を行い、適切な診断を行うことを目的としています。
そのため、地域の先生方には膵臓がんリスクのある患者さんいらっしゃいましたら、ぜひ一度当院
へご紹介ください。
なお、強い腹痛・黄疸など緊急性が伴う場合には、当日診療させていただきますので、お気軽に消化器病センター内科外来へお電話にてご相談ください。
症状 | 腹痛または背部痛・⾷欲低下・体重減少・⻩疸 |
---|---|
疾病 | 慢性膵炎・新規発症の糖尿病・糖尿病の増悪 |
検査異常 | (画像検査)膵管拡張・膵嚢胞 (血液検査)腫瘍マーカー異常(CA19-9等) |
膵臓がんとは
膵臓がんは近年増加傾向にあり、この30年間で約3倍に増加しています。発見や診断が難しく、全てのがんの中でも生存率の低い難治性のがんとして知られ、がんによる死亡数の順位も4位となっていますが、早期に診断できれば、比較的治療成績が良いと言われています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 |
---|---|---|---|---|
肺がん | 大腸がん | 胃がん | 膵臓がん | 肝臓がん |
症状としては、腰背部痛や黄疸、腹痛、食欲不振、体重減少などが起こります。その他にも、急激な糖尿病の発症または悪化が認められる場合もあります。 しかしながら、症状が出現するころには、既に進行していることが多いのが現状です。
膵臓がんの診断と治療
発見の契機となる所見
1) 血液検査
膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ)の上昇、 胆道系酵素上昇
腫瘍マーカー(CA19-9、CEAなど)上昇
2) 腹部超音波検査
低エコー腫瘤、膵管拡張、膵嚢胞など
3) 腹部造影CT検査(単純CTでは検出困難)
低吸収の腫瘤、膵管の拡張など
4) その他
MRCPなどで、膵管・胆管の狭窄あり
上記の検査で膵臓がんを疑う所見を認めた場合、超音波内視鏡検査(EUS)により詳細な観察を行います。
膵に腫瘤を認めた場合、超音波内視鏡下穿刺術(EUS-FNA)、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)などにより診断確定を行います。
図2 膵臓がんの診断
治療
造影CT、EUSなどの所見をもとに病期診断を行い、治療方針を検討します。
外科的切除術は、腹膜播種、遠隔転移がなく、主要な動脈への浸潤がない場合が適応となります。
外科手術の前後には抗がん剤治療を併用します。
手術適応がない切除不能膵臓がんの場合には、放射線治療や化学療法が行われます。
図3膵臓がんの治療について
逆紹介について
超音波内視鏡などによる精査の結果、明らかな異常を認めない方や膵臓がんのリスクが低いと判断された方については、ご紹介いただいた医療機関での経過観察をお願いする可能性があります。経過観察の方法は患者さんによって異なりますが、年1回の血液検査や腹部超音波検査などを想定しております。経過観察中に何らかの異常が出現した際には、お気軽にご紹介いただきますようお願いいたします。
診療科からのメッセージ
当院には、現在胆膵疾患を専門とする消化器内科医師が8名所属しており、内視鏡診療や外来化学療法などに従事しております。膵臓がんの診断に欠かせない超音波内視鏡は毎日行っており、概ね2週間以内の検査が可能です。今後とも迅速に診断・治療を行えるよう診療体制を整備して参りますので、膵臓がんの早期診断を実現するため、地域の医療機関の皆様にご助力を賜れれば幸いに存じます。「ひょっとしたら…」と思われる症例でも構いませんので、お気軽にご紹介いただきますようよろしくお願い申し上げます。

消化器病センター/ 内科
講師 杉森 一哉
1994年 弘前大学医学部卒
1994年 横浜市立大学医学部附属病院 初期臨床研修医
1996年 横浜市立大学附属病院 第3内科
1997年 藤沢市民病院 消化器内科
1999年 国立がんセンター東病院 放射線部
2000年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター
【メッセージ】
南区の弘明寺で育ち、現在も同じ区内のセンター病院で診療と研究に勤しんでいます。また、梅林小おやじの会に
所属し、地域の方々との交流を大切にしています。本プロジェクトを通じて、市民の皆様に貢献していきたいと、
思っておりますので、どうぞよろしくお願いします

消化器病センター/ 内科
講師 三輪 治生
2006年 信州大学医学部卒
2006年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 初期臨床研修医
2008年 藤沢市民病院 消化器内科
2014年 横浜市立大学附属病院 消化器内科 助教
2016年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 助教
2022年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 講師