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循環器内科

成人先天性心疾患(ACHD:Adult Congenital Heart Disease)

先天性心疾患の人の生涯を見据えて適切なタイミングで治療ができるように、ていねいなフォローアップを目指して診療しています。と書かれたバナー画像。先天性心疾患の人の生涯を見据えて適切なタイミングで治療ができるように、ていねいなフォローアップを目指して診療しています。と書かれたバナー画像。

当院では、特に成人先天性心疾患(ACHD:Adult congenital heart disease)の方の治療・手術に積極的に取り組んでいます。

ACHD患者数の推移グラフ。ACHD患者数の推移グラフ。

先天性心疾患の手術ができるようになったのは今から約70年前ですが、治療成績は飛躍的に向上し、今では90%以上の先天性心疾患の人が大人になる時代になりました。国内で、すでに成人になった先天性心疾患の人は50万人以上いると言われています。

ただ、手術をした後、本当は定期的に病院にかかったほうがよい人が、「症状がない」「根治術と言われて完全に治ったと聞いている」「薬を飲んでいないし、困っていない」「小児科に行きづらくなった」「進学、就職、転居などで病院に行かなくなった」などで、病院にしばらくかかっていない人がいらっしゃると思います。
しかし、手術をして数十年経ってから、以前受けた手術の影響や、元々の病気の悪化で、何らかの症状や問題が出てくることがあります。何らかの症状が出て悪くなる前に、適切なタイミングで適切な手術や治療を受けることが、長く元気でいられるためにはとても重要です。
当院は、日本成人先天性心疾患学会認定の専門医総合修練施設です。と書かれたバナー画像。当院は、日本成人先天性心疾患学会認定の専門医総合修練施設です。と書かれたバナー画像。

当院は、日本成人先天性心疾患学会が認定した、専門医総合修練施設です(2023年4月1日現在、全国に総合修練施設は42施設、神奈川県には2施設)。また、神奈川県立こども医療センターでこどもの頃に手術をされて大人になった方を、連携して当院で引き続き診療できるように、定期的にカンファレンスを行なっています。
先天性心疾患の人は、特に症状がなくても以前の手術の影響などで治療が必要になることがあるため、専門施設で一度、病状を評価した上で、必要があれば地域の総合施設やかかりつけの先生に診てもらい、定期的に(1年に1回など)専門施設でも診てもらうことが推奨されています。当院では、先天性心疾患の人が長く元気でいられるように、地域の先生やさまざまな医療スタッフと連携して診療できるようにしていきたいと考えています。

1990〜2005年のカナダ・ケベック州71,467人の先天性心疾患の人の追跡調査のグラフ。1990〜2005年のカナダ・ケベック州71,467人の先天性心疾患の人の追跡調査のグラフ。
当院は、経カテーテル肺動脈弁置換術(TPVI)の実施施設認定を取得しました。と書かれたバナー画像。当院は、経カテーテル肺動脈弁置換術(TPVI)の実施施設認定を取得しました。と書かれたバナー画像。

当院は2024年、ファロー四徴症などの術後の肺動脈弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療(経カテーテル肺動脈弁置換術: TPVI)の実施施設認定を取得しました(全国で27施設目)。
ファロー四徴症の術後の人は術後数十年経ってから下記のような問題が生じることがあります。

  • 肺動脈弁の逆流がひどく、右心室の動きが悪くなる
  • 肺動脈や右心室の出口が狭くなる
  • 不整脈が出る(ひどい場合は突然死の原因になる)
  • 心室中隔欠損症が残っている
  • 大動脈弁がもれる、大動脈が拡大する

過去には「ファロー四徴症術後35年以内に約40%の人が肺動脈弁逆流に対して、肺動脈弁置換術(手術)が必要だった(Circulation. 2014, 25; 130: 1944-53)」の報告があります。これまでは、肺動脈弁は手術でしか治療ができませんでしたが、カテーテルで治療する選択肢があることで、手術よりも体への負担が少なく治療ができるようになりました。ただし、肺動脈弁置換術が必要な全ての人がカテーテルで治療できるわけではないため、この治療ができるかどうはについては、まずは受診してご相談ください。
ファロー四徴症以外でも、先天性心疾患で小さい頃に手術をしたけれど、しばらく病院にかかかっていない人、何となく調子が悪いが心臓の手術の影響かどうかわからない人など、ご自身の現在の病状が気になる人は、下記の外来受診の案内にしたがって、まずは地域の医療施設やクリニックなどを受診してください。
成人先天性心疾患の術後の患者さんを診てくださっている循環器内科の先生や開業医の先生で、再介入のタイミングや治療についてのご相談などあれば、いつでもご紹介ください(下記の「患者さんのご紹介について」をご参照ください)。

日本小児循環器学会の一般向けホームページ(当院心臓血管外科の立石が広報委員として担当しています)では、病気や手術・治療について、たくさんのイラストや動画を交えて説明しています。PDFファイルはダウンロードしてプリントアウトすることもできます。ぜひ参考にしてください。

先天性心疾患手術について

当院では特に、下記のことを大切にして手術を行っています。
 
  • ひとりひとりを丁寧に、ご家族の状況などにも配慮して、サポートしながら治療をしています
  • 先天性心疾患はわかりにく病気もありますが、病気のことをしっかり理解して、少しでも安心して手術を受けてもらえるように、なるべくわかりやすく、丁寧に説明しています。
  • 手術のあと、「痛い」「苦しい」などを訴えることが難しい小さいお子さんが辛い思いしないように、鎮痛薬などを使いながら治療をしています。
  • 傷は安全に手術ができる範囲でなるべく小さく、そしてきれいに治るように縫合し、手術のあとに傷がなるべく目立たないような処置をお伝えしています。

開業医の先生方、医学生・研修医の皆さまへ

日本循環器学会では、楽しくわかりやすい循環器領域の解説をYouTubeで動画配信しています。各動画は5〜10分でおもに医学生や初期研修医を対象としていますが、専門分野ではないベテランの先生にも学びの機会になることと思います。
当院の立石が「先天性心疾患の全体像をつかむ」と題して5つの動画を作成し、掲載されています。基本からフォンタン手術、先天性心疾患手術の全体の流れまで20〜30分で把握できるようになっています。よかったらご視聴下さい。

〜 先天性心疾患の全体像をつかむ〜

  • (1)心臓の基本と先天性心疾患の基本

  • (2)非チアノーゼ性心疾患の特徴

  • (3)心臓の発生とチアノーゼ性心疾患の特徴

  • (4)先天性心疾患の手術の特徴「段階的手術」「姑息術」とは?

  • (5)フォンタン手術について、先天性心疾患手術の全体像

5分で分る循環器Best Teacher Seriesの記載と日本循環器学会のWebサイトのQRコードが記載されたバナー画像。5分で分る循環器Best Teacher Seriesの記載と日本循環器学会のWebサイトのQRコードが記載されたバナー画像。