基本方針

~未来ある大切な生命の誕生のために~

採卵室

胚培養部では、お預かりした卵子(卵)と精子を受精卵と胚を最も適した環境で育んでいます。 大切なご家族の誕生を願い、胚培養士が一丸となってベストを尽くします。

部門の概要

胚培養士

当院の胚培養部は、日本卵子学会認定の臨床胚培養士5名のチームです。発生工学(着床前の胚を専門とする学問)分野の理学博士や他院を含む臨床経験10年以上を有する培養士が、各々の専門知識と技術を生かして日々、卵子(卵)・精子・胚と向き合っています。

胚培養室

機器・技術

紡錘体可視化装置

卵子の顕微授精での受精率と発生率を高めるために、卵子(卵)の紡錘体(染色体の分配装置として機能する細胞内構造体)の観察をしています。

マイクロマニピュレーター

採卵により複数個得られた卵子は、形態学的には(見た目では)第一極体を放出した成熟卵子であっても、その内側を覗いてみると受精のタイミングには少し早い、といった卵子も含まれており、それを推し測ることができるのが紡錘体を観察することです。当院では、可視化装置で紡錘体の確認ができない卵子は、数時間の追加培養で成熟を促した後にベストなタイミングで顕微授精を実施し、受精率や良好胚取得率の向上につなげます。

タイプラプス培養器

卵の受精から卵割の様式、胚盤胞形成過を連続撮影することで形態動態学的な胚の評価を行うことができる機器です。当院のタイムラプス培養器は患者さん毎にガス濃度と温度をコントロールする個別培養システムのGeri®を採用しています。また、他のタイムラプス培養器にはない加湿環境を保つシステムで、より体内に近い環境で受精卵や胚の成長を促していることが特徴です。

当院では、タイムラプスで得られる膨大な画像データを信頼性の高い文献を基にした様々なパラメーターを用いて解析し、独自の評価基準で移植胚を決定しています。場合によっては複数人で何度も分析し、「もっと培養室でできることはないか」と、常に次の一手を探しています。

分析図分析図
移植胚の選択は、受精様式、受精卵の第1分割様式、第1分割から第2分割の所要時間、4細胞期の核数、5細胞期到達時間など多数のパラメーターを用いて行っています。
妊娠率と流産率①妊娠率と流産率①
妊娠率と流産率②妊娠率と流産率②
表4,5 上野ら「初期胚移植における胚選別法mBSの有効性評価~保険導入で見直す初期胚の胚選択~」第68回日本生殖医学会 Nov., 2023, p-108,

バイオプシー

精子検査(SMAS)

バイオプシーは着床前診断(PGT)の際に実施される技術です。5日目または6日目の胚盤胞の一部の細胞をとりだし染色体を調べます。胚への侵襲性をできるだけ少なくするために、個々の技術の習熟度を上げることはもちろんのこと、検査に用いるバイオプシーピペットやハンドリングピペットも選び抜いて使用しています。 そのほか、精巣内精子回収術、精巣内精子を用いた顕微授精など、様々な高度生殖補助医療の技術を用いて患者さんひとりひとりに合わせた医療を提供しています。

精子調整室

クリーンルーム

総合病院ならではの施設管理を専門とする部門が、培養室と採卵室を手術室と同等のクリーン度に維持しています。

  • 前室・エアシャワー
  • タンク室

妊孕性温存療も実施しており、寛解された患者さんが妊娠・出産されています。

項目 令和4年度
採卵 241件
顕微授精 107件
融解胚移植 247件
妊孕性温存療 19件