医療関係者の方へ

連携NEWS「不妊治療の保険適用について」

2022年5月27日公開

診断・治療

2022年4月、自費診療であった体外受精などの不妊治療が保険適用となりました。
不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は18.2%で、夫婦全体の約5.5組に1組の割合になります。体外受精については、2019年に日本では60,598人が誕生しており、これは全出生児(865,239人)の7.0%に当たり、約14.3人に1人は体外受精児ということになります。

図1

原因検索のための諸検査の内容原因検索のための諸検査の内容

図2

排卵誘発→採卵/採精→体外受精または顕微授精→胚培養→胚移植・胚凍結保存からなる一連の治療の図排卵誘発→採卵/採精→体外受精または顕微授精→胚培養→胚移植・胚凍結保存からなる一連の治療の図
出典:令和4年度診療報酬改訂の概要 不妊Ⅰ(概要、先進医療、医薬品、移行措置)

①採卵 ②採精 ③体外受精または顕微授精 ④胚培養 ⑤胚移植

不妊治療は図1のような原因検索のための諸検査を行ったのちに、負担の少ないタイミング法から始まり、人工授精、体外受精へとステップアップします。図1の赤丸部分が今回保険診療可能となりました。体外受精は、図2に示されるように排卵誘発→採卵/採精→体外受精または顕微授精→胚培養→胚移植・胚凍結保存からなる一連の治療となります。これまで、体外受精を1回行う毎に50万前後必要だったものが15万程度になる計算です。女性の年齢が43歳未満であることや回数の制限があるものの、お子さんを希望している若い人々にとっては治療を受けやすくなったと考えられます。

注意点・フォローの仕方

今回保険診療の対象となっているのは、基本的な体外受精-胚移植の一連の診療です。多くの方は保険診療になりますが、基本的な診療の範疇から外れるものは保険診療外になってしまいます。着床不全の理由として免疫の異常が疑われ免疫抑制剤を使用する場合、精巣から採取された精子の選別法の一部などについては保険外診療となるため排卵誘発から胚移植までのすべての診療が自費診療となります。胚移植前の胚の細胞の一部を生検して行う着床前診断も保険適用となっておらず、これを目的とする体外受精も自費診療となります。がん等の妊孕性温存目的で精子・卵子・胚を凍結している場合、この卵子・精子を利用しての生殖補助医療(体外受精-胚移植)も自費診療となりますが、こちらはについては助成金があります。一方、先進医療として承認されている治療(タイムラプスインキュベーターによる胚培養・着床障害に対する子宮内膜スクラッチ)については保険診療と混合診療が可能です。
上述の診療のなかには現在先進医療として申請中のものもあり、今後先進医療として混合診療できる選択肢が増えたり、エビデンスが蓄積され保険診療となるものもある、と期待されます。

患者さんを紹介する際の必要な情報や基準について

初診時は、なるべくご夫婦で来院いただくよう説明していただけると助かります。

施設基準および連携体制について

一般不妊治療を行っている施設においては、治療計画書を交付することなどの条件をみたせば、3月に1回一般不妊管理料を算定することができます。施設基準として生殖補助医療管理料の施設基準にかかる届け出を行っているか、この届出を行っている保健医療機関との連携体制を構築していることが必要です。
人工授精の施設基準にも、一般不妊治療管理料の施設基準にかかる届け出を行った保健医療機関である必要があります。施設基準にかかる届け出のご相談につきましては地域連携担当にご相談ください。

診療科からのメッセージ

生殖医療センター 村瀬 真理子 担当部長

生殖医療センター 村瀬 真理子 担当部長の写真生殖医療センター 村瀬 真理子 担当部長の写真

以前の当院での不妊治療は、女性は婦人科、男性は泌尿器・腎移植科で行われていましたが、ご夫婦で受診される患者さんも多く、両科の連携強化と治療の効率化をはかるため男女の不妊部門を統合し、生殖医療センターとなり現在に至ります。
現在、県内で泌尿器科、婦人科が一緒に生殖医療を行っている施設はありませんが、当院ではご夫妻が同じ施設で治療可能です(もちろん男性・女性単独でも結構です)。とかく女性にまかせきりになる傾向の不妊治療ですが、男性も積極的に治療に取り組みやすい環境を整えおります。今回の不妊治療の保険化により、患者さんの医療機関への受診のハードルが下がり、一組でも多くのカップルに赤ちゃんが授かるように、また結果として少子化対策として貢献できれば、とスタッフ全員努力しております。

1993年 横浜市立大学医学部 卒業
1993年 横浜市立大学附属病院 臨床研修医
1995年 横浜市立大学附属病院 産婦人科
1996年 横浜南共済病院 産婦人科 
1998年 済生会横浜市南部病院 産婦人科
1999年 横浜市立大学附属病院・市民総合医療センター 助手
2004年 横浜労災病院 産婦人科医 医長
2006年 横浜市立大学附属病院・市民総合医療センター 助手
2012年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター講師
2016年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター担当部長

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