遺伝性腎疾患(常染色体顕性多発性囊胞腎)
常染色体顕性多発性囊胞腎(ADPKD)の疾患情報
常染色体顕性多発性囊胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)は、両側の腎臓に多数の囊胞が進行性に発生・増大し、腎臓以外の種々の臓器にも障害が生じる、遺伝性腎疾患です.加齢とともに囊胞が両腎に増加、進行性に腎機能が低下し、60 歳までに約半数が末期腎不全に至ります。遺伝形式は常染色体顕性遺伝ですが両親が罹患していなくても、新たな突然変異により発症する場合があります。 原因遺伝子として PKD1(16p13.3)と PKD2(4q21)が知られています。
合併症としては高血圧、脳動脈瘤、くも膜下出血、肝嚢胞、膵嚢胞、囊胞感染、囊胞出血、尿路結石、
心臓合併症(心臓弁膜症を含む)、大腸憩室、鼠経ヘルニアがあります。
ADPKD 診断基準
- 家族内発生が確認されている場合
1)超音波断層像で両腎に各々 3 個以上確認されているもの
2)CT、MRI では、両腎に囊胞が各々 5 個以上確認されているもの - 家族内発生が確認されていない場合
1)15 歳以下では、CT、MRI または超音波断層像で両腎に各々 3 個以上囊胞が確認され、以下の疾患が除外される場合
2)16 歳以上では、CT、MRI または超音波断層像で両腎に各々 5個以上囊胞が確認されているもの
以下の疾患が除外される場合 :多発性単純性腎囊胞 、尿細管性アシドーシス、多囊胞腎、多囊胞性異形成腎、多房性腎囊胞、髄質囊胞性疾患、若年性ネフロン癆、多囊胞化萎縮腎、後天性囊胞性腎疾患、常染色体劣性多発性囊胞腎
(厚生労働省進行性腎障害調査研究班「常染色体優性多発性囊胞腎診療ガイドライン(第 2 版)」)
ADPKDの検査
CT(腹部)、MRI(頭部、腹部)、心臓超音波検査、遺伝子診断
ADPKDの治療
根本的な治療は今のところありません。
のう胞が大きくなることを抑制しながら腎機能の悪化を抑制する目的で飲水の励行をします。
また、のう胞が大きくなることを抑制する薬剤としてトルバプタン(サムスカ)があります。
トルバプタン投与の基準は①総腎容積が750ml以上であることと②総腎容積の増加率が概ね1年あたり5%以上あることとなります。開始にあたっては入院が必要となります。
水分摂取困難、高ナトリウム血症、eGFR15ml/分/1.73m2未満、肝機能障害、妊娠している方などには使用できません。
高血圧に対してはRAS系阻害薬を用いた降圧治療、食事制限(蛋白、カロリー制限)
末期腎不全に進行すると、腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)が必要となります。