- 研究
腎臓・高血圧内科の土師達也助教、藤原直樹大学院生らの原発性アルドステロン症の大規模レジストリを用いたAMED多施設共同研究成果がHypertension Research誌に掲載されました
2021年に血清アルドステロン濃度、血漿レニン活性の測定方法がRIA法からCLEIA法に変わったことから2021年に改訂された原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021(日本内分泌学会監修、日本高血圧学会連携)では機能確認検査であるカプトプリル試験において境界域(暫定陽性群)が設定されました。しかし、境界域における患者の臓器障害の程度の検討はなされておりませんでした。
横浜市立大学附属市民総合医療センター 腎臓・高血圧内科 土師達也助教、田村功一病院長、医学部循環器・腎臓・高血圧内科学 藤原直樹大学院生・医師、涌井広道准教授らは、横浜市立大学附属市民総合医療センターと横浜市立大学附属病院が参加している原発性アルドステロン症の国内大規模レジストリであるAMED研究のJPAS-II(Japan Primary Aldosteronism in Study-II)を用いて、境界域群の臓器障害の程度を確定陽性群、陰性群と比較検討しました。
その結果、境界域群における臓器障害は確定陽性群より陰性群に近い結果となり確定陽性群は境界域群と比較し有意に高い臓器障害リスクを認めました。血圧のコントロールに要する薬剤数も確定陽性群、境界域群、陰性群の順に多い結果となり確定陽性群と境界域群を区別することは理に適った結果となりました。また、血清アルドステロン濃度/血漿レニン活性比(ARR)の値によって患者を四分位に分け検討したところ、ARRの値が増すほど臓器障害リスクは有意差を持って増大することがわかりました。
本研究の結果から、境界域群を確定陽性群と区別することは必要でありながら、境界域群の性質は陰性群とも必ずしも一致するわけではなくARR値の上昇が臓器障害リスクの増大と関連することが示唆されました。
本研究成果は本態性高血圧と比べて臓器合併症による予後不良とされている原発性アルドステロン症の診断における重要な知見を提供するものであり、「Hypertension Research」誌に発表されました(2024年9月29日電子掲載)。
Differences in target organ damage between captopril challenge test-defined definitive-positive and borderline-range groups among patients with primary aldosteronism.
Naoki Fujiwara, Tatsuya Haze, Hiromichi Wakui, Kouichi Tamura, Mika Tsuiki, Kohei Kamemura, Daisuke Taura, Takamasa Ichijo, Yutaka Takahashi, Minemori Watanabe, Hiroki Kobayashi, Kenichi Yokota, Toshifumi Nakamura, Shoichiro Izawa, Norio Wada, Tetsuya Yamada, Mitsuhide Naruse, Masakatsu Sone, JPAS II study group
Hypertens Res. 2024 Oct 15. doi: 10.1038/s41440-024-01943-w. Online ahead of print.PMID: 39402300
2)AMED日本医療研究開発機構研究費(難治性疾患実用化研究事業)紹介サイト:
疾患レジストリを活用した原発性アルドステロン症の診療の質向上に資するエビデンス構築“Japan Primary Aldosteronism in Study II”(JPAS-Ⅱ)
3) 横浜市立大学医学部循環器・腎臓・高血圧内科学教室研究紹介サイト:
横浜市立大学医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学教室