横浜市立大学では、複数の病院の集中治療室の医療情報をネットワーク通信でつなぎ、中心となる病院に設置する「支援センター」から集中治療専門の医師等が患者さんをモニタリングし、遠隔で現場の医師等に助言する遠隔ICU事業に取り組んでいます。
令和2年から段階的に運用を拡大し、現在は横浜市立市民病院、横浜市立脳卒中・神経脊椎センター及び国際医療福祉大学病院(栃木県)に対して、24時間365日の診療支援を実施しています。
この事業により、各病院での医療の質の向上や医師・看護師等の負担軽減に寄与しています。
令和6年度診療報酬改定では遠隔ICU事業が保険収載され、更なる事業拡大が期待されています。
支援センターには、医師1名、看護師1名、医師事務作業補助者1名が常駐し、生体情報モニター、患者さんの映像、電子カルテなどの情報を参照しながら、ビデオラウンド※1による診療支援や連携先病院からの診療・看護ケアの相談への助言を行います。また、定期的にカンファレンスに参加し、アドバイザー的な役割を果たす取組も行います。
遠隔ICUシステムの機能には主に4つの特徴があります(下図参照)。
※1 遠隔ICUシステムにより、医師等が遠隔で回診を行い、患者さんの病状を確認すること。
※2 重篤な患者さんの治療に必要な指示や記録等に特化したICUなどの医師や看護師をサポートする情報システム。
遠隔ICUの導入効果として、医療の質の向上、労務効率の改善やタスクシフト・タスクシェア等による医師や看護師の働き方改革の推進が図られることが期待されています。また、新型コロナウイルス感染症のような新興感染症が発生した場合に、感染リスクがある患者さんを遠隔で観察できるため、医療従事者の感染リスクの防止や感染防護着等の消費削減などにつながります。
今後、事業効果の検証を行いながら、連携先病院の拡大に加え、少ない人員で稼働している夜間休日の負担軽減のために運用時間の拡大を検討していきます。併せて、集中治療領域において蓄積されるデータの利活用を進め、重症化予測などの医学研究の発展に寄与することを目指します。