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第3期 戦略的研究推進事業「研究開発プロジェクト」(平成28~30年度)

第3期 戦略的研究推進事業「研究開発プロジェクト」(平成28~30年度)

この事業では、学長のリーダーシップのもと、大学の強みとなる研究領域やターゲットを明確化しながら、積極的かつ戦略的に研究費を投入し、大型研究費の獲得や研究成果の早期の社会還元を目指しています。「研究開発プロジェクト」の医学系の研究課題を先端研の研究開発プロジェクトに位置づけ、研究活動の一層の加速化を図ります。

分野 研究テーマ 研究者
研究概要
再生医療 ヒト細胞製造システムを用いた肝芽大量製造工程の構築
ヒト肝芽の製造工程では、ヒトiPS細胞由来肝内胚葉細胞・血管内皮細胞・間葉系幹細胞などの複数種の細胞を大量に製造した後、これらの細胞を共培養する。本学内の細胞プロセシング施設(Cell processing facility)内に導入した細胞製造システムは複数のアイソレーター、ならびに大量の資材を管理のためのストックユニットを有する独自のシステムであり、従来の細胞製造とは全く異なる新たな製造ラインを新たに構築することが必須となる。そこで、このシステムの構築・運用および臨床研究プロトコルおよび標準操作手順書の作成を行う。 
谷口 英樹
(臓器再生医学)
ゲノム

遺伝子
遺伝性疾患の診断技術の向上に関する研究
様々な遺伝性疾患(家族性腫瘍糖を含む)のゲノムDNA診断技術の高度化に関する研究を進める。現状のイルミナ社の次世代シーケンサーを用いた全遺伝子解析技術での難病の遺伝子異常解明率は37%である。つまり6割以上の症例では依然未解明の状態が続いている。これを打開するため新たなロングリードタイプのシーケンサーを導入し全ゲノム解析等を開始し未解明の疾患・症例の原因解明につなげる。新たなシーケンスプラットフォームでこれまで見えてこなかった病的ゲノム異常が明らかになると期待される。
松本 直通
(遺伝学)
がん 難治がんの微小環境からみた新規バイオマーカーおよび治療法の開発
新規化学療法が導入された現在でも依然として治療抵抗性で予後不良の癌腫が存在し、新たな突破口となる治療法が求められている。以前から癌およびその周囲の間質を構成する細胞が密接な相互作用を持つことが知られていた。種々の間質構成細胞が作り出す微小環境において、癌は免疫抑制状態に置かれていることも明らかになりつつある。近年、制御性T細胞や、リンパ球表面のPD-1が免疫抑制のメカニズムを担うことが認知され、新たな治療薬も開発されており、癌免疫治療は新たな時代に突入したと言われている。
教室では、難治癌に対して化学療法や放射線治療と外科手術を組み合わせる集学的治療を行ってきた。その切除標本の解析により大腸癌多発肝転移や膵癌では腫瘍周囲の間質に集簇する制御性T細胞、細胞障害性T細胞、肥満細胞の多寡が予後を左右することを報告してきた。そして、免疫抑制性の自己細胞が局所集簇する機序を明らかにするためプロテオーム解析を行ったところ、このような顕著な腫瘍局所浸潤リンパ球の変化を示す腫瘍では特定のたんぱく発現が見られることを発見した。また、先行研究によって全身のsubclinicalな炎症が局所の免疫環境に影響を与えることが明らかになりつつある。
今後このたんぱくや他の幾つかの候補たんぱくの機能を解析することによってがん免疫治療における新たなバイオマーカーとなることが期待される。また、これらのたんぱくの機能解析を通して新規がん免疫(補助)療法に繋がると期待している。すなわち、全身の炎症反応のコントロールによって局所の免疫機能が改善し、ひいては抗腫瘍環境が正に転ずるのではないかと考えている。
遠藤 格
(消化器・腫瘍外科学)
神経

難病
神経難病の病態解明とバイオマーカー・治療法の開発
我々は、脊髄小脳変性症(SCD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)をはじめとする神経難病の治療法開発へ向けた病態解明研究を行ってきている。SCDについては、新型DNAシーケンサーを使用したSCD家系例の解析により、新規遺伝子や新規表現型を明らかにしてきた。これらの研究成果に基づき、当科で同定したSCD原因遺伝子変異を導入したノックインモデルマウスを作成して解析をすすめ、疾患モデルとしての確立に成功した。そこで、次段階として治療法開発への展開を図る。また、ALSに関しても我々はALS病態関連遺伝子をノックアウトした複数の新規モデルマウスの作成に成功しており、これらの解析も行っていく。特にCRMP1, LOTUS, Ubiqulin2, Matrin3をターゲット分子とした研究を進めている。これら神経難病に共通した病態機序の一つとして慢性的な神経炎症が想定され、特に、神経細胞の周囲環境であるグリア細胞による神経炎症の慢性的な増幅機構が注目されているので、この観点からの解析も進めていく。一方、神経難病の研究において重要な課題として疾患バイオマーカーの開発が挙げられる。我々は、神経難病患者の髄液中から抽出したエクソソームの構成成分を網羅的に解析している。また、LOTUSを中枢神経炎症疾患のバイオマーカー候補として確立した。そこで、髄液のみならず血液でも検出可能なマーカー開発へと展開する。このようにオリジナリティの高い研究リソース、アプローチを駆使し、神経難病の病態機序解明をすすめ、新たな診断・治療戦略へと展開することをめざす。
田中 章景
(神経内科学)
神経・神経疾患の新しいPET診断法開発
様々な脳の活動や病態に関与していると考えられているAMPA受容体のイメージングを、ヒトで可能とするPETイメージング剤の開発に、世界で初めて生理学教室にて成功した。今後、放射線医学教室と共同して、横浜市立大学附属病院にて患者を対象とした臨床試験を行う。また患者の評価やリクルートに関して精神科や神経内科、患者管理に麻酔科、身体機能評価にリハビリテーション科の協力を得る。本研究により脳の様々な病態におけるAMPA受容体の関与を明らかにしたい。また、脳卒中等により損傷を受けた脳機能が回復していく過程の脳代償野を特定することができるマーカーとして本プローブを確立し、リハビリテーション効果を客観的に画像診断できる方法を開発していく。さらに、脳腫瘍において鑑別が困難であるとされているグリオーマと悪性リンパ腫の本PET probeを用いた非侵襲的鑑別方法の確立を目指す。さらに、肺癌の鑑別は生検が基本となっているが、最も悪性度が高いとされている小細胞癌の本PET probeを用いた非侵襲的鑑別方法の確立を目指す。
高橋 琢哉
(生理学)
内分泌・免疫・自律神経系制御系におけるドーパ性神経伝達機構の解析
パーキンソン病治療における第一選択薬であるL-DOPA (ドーパ) は、従来から単なるドパミンの前駆体であり、それ自体には生理活性がないと考えられてきた。我々は、生体内において神経刺激に応じて、ドーパが遊離されること、ドパミンへの酵素的変換を阻害した条件下においても、一定の薬理学的応答を示すこと、ドーパの作用を競合的に拮抗する拮抗薬ドーパシクロヘキシルエステル(DOPA CHE)が存在することを示し、ドーパ神経伝達物質仮説を提唱してきた。つい最近になり、 GPR143 が ドーパ 応答を媒介する分子であることを同定することに成功した。さらに GPR143 遺伝子欠損(GPR143-KO)マウスを樹立し、その表現型解析から GPR143 がアドレナリン α1 受容体と機能的相互作用を示し血圧調節を行う知見を得た。本研究は、GPR143 と α1 受容体が機能的連関を示すという知見を基に、内分泌・自律神経系における ドーパ の生理学的役割を解明することを目的とする。交感・副交感神経系の機能解析は、24 時間の行動・血圧・心拍数の日内変動、交感・副交感神経刺激、バソプレシン等による心血管応答、ドーパ 、GPR143、アドレナリン受容体、ムスカリン受容体との局在関係、血中ドーパ 、カテコラミン等の経時的変化などを測定し、GPR143-KOマウスと野生型マウスを比較•検討する。すでに動物実験の倫理委員会の承認は得ている(承認番号:F-A-14-046)。
五嶋 良郎
(薬理学)
植物 植物ゲノム科学を利用したオーキシン生合成の制御基盤の確立
植物ホルモンは、植物の成長と分化を制御しており、農業現場でも様々な局面で利用されている。その中でもオーキシンは植物の生育を様々な局面で制御しており、最も重要な植物ホルモンである。天然型の主要なオーキシンはインドール酢酸(IAA)である。当研究室は大規模ゲノムデータを活用して、世界に先駆けてオーキシン生合成阻害剤を発見した。また、その改良型薬剤の開発でも世界をリードしてきた。本プロジェクトではこの研究をさらに加速し、最先端の研究成果を目指す。具体的には以下の3つの項目の研究を実施していく。1つはこれまでに開発した阻害剤をさらに高活性に改良すると共に、その用途を共同研究を通して開発する。2つ目は阻害剤の標的酵素の機能解析である。3つ目はエピジェネティックな制御因子がオーキシン生合成制御に果たす役割について研究する。
嶋田 幸久
(植物応用ゲノム科学)
感染症

免疫
新興・再興感染症に対する新たな診断・治療・予防法の開発
昨今の新興・再興感染症の流行は国際的な懸案事項であり、感染の蔓延を防止するためには、現場における迅速診断の実施が必須である。本研究課題では、我々が独自に開発したタンパク質合成技術を駆使して、ウイルスタンパク質を標的とするモノクローナル抗体を作製し、臨床現場即時検査;Point of Care Testing(POCT)として活用できる新規ウイルス検出法を開発する。また、分子疫学解析による感染伝播の予測を行うことで、感染予防や治療法の開発に役立てる。
梁 明秀
(微生物学)
ベーチェット病・自己免疫疾患の研究
ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎に対し、現在マウスとヒトのキメラ抗体である抗TNFa薬であるインフリキシマブが使用されている。しかし効果不十分例、効果減弱例、投与時反応によって使用できない例など、眼炎症発作を抑制できない症例が少なからず存在している。そこで本研究課題ではベーチェット病に関して、完全ヒト型抗TNFa薬であるゴリムマブの有効性及び安全性を検討する医師主導治験を計画し、実行していく。
水木 信久
(眼科学)
注目領域


 
NAFLD/NASH病態における腸内細菌と遺伝因子
NAFLD/NASHには様々な因子がその病態に関わっているとされる(Multiple parallele hits theory)。しかしながら、その全貌はいまだに明らかとなっていない分子生物学的手法が発達し、様々な疾患において腸内細菌や遺伝因子の関与が明らかとなっている。NAFLD/NASHにおける腸内細菌(メタゲノム解析、便中ムチン、血中エンドトキシン)や遺伝因子(ゲノム解析、メチル化解析、RNAシーケンス)を明らかにし、病態の解明、さらには新規治療の開発に役立てることを目的とする。
中島 淳
(肝胆膵消化器病学)
有機超弾性体の開発
申請者が2014年に本大学で発見した有機超弾体の科学を深め、純粋な学問的探究を目的とする。超弾性は全ての物質が持つ弾性と塑性に根ざす特異な物理特性であり、物理特性と化学特性双方を深化させて新しい学術分野創出に寄与しうる知識の生産と学問の統合化を目指す。
高見 澤聡
(物質システム科学)
精巣組織の機能と精子形成を維持できる培養系の開発
本研究では、器官・組織の培養に適した培養液の作成と、マイクロ流体技術を用いた微小循環系を作成する。こられにより、器官・組織の形態と機能を長期に亘って維持できる培養系を開発する。研究を遂行するにあたり、組織機能の評価に適した精子形成系を用いる。その成果は精子形成のみならず再生医療等における器官・組織再生にも応用可能である。
小川 毅彦
(創薬再生科学)
試験管内で臓器を作製する「臓器設計技術」の開発
本研究の目的は、臓器に類似した微細構造を持つ3次元培養組織を、試験管内で作製する技術を開発することである。細胞をハイドロゲルビーズや細胞外マトリクスなどとともに再構築して、産業や医療への応用を目指したミニチュア臓器を作製する。具体的には、(1)薬物動態試験に適した「肝臓様組織」、(2)インスリン分泌に優れた「膵島様組織」、(3)造血機能を再現する「骨髄様組織」、(4)効率の良い精子産生を目指した「精巣様組織」の作製に取り組む。さらには体内に存在しない新たな機能を持つ臓器、例えば5)特定の幹細胞の増幅に適した「幹臓」の開発に取り組む。
小島 伸彦
(再生生物学)
非営利組織における最適な利益水準とコストの変動要因に関する実証研究
本研究の目的は、非営利組織にとって長期的に最適となる利益水準とその要因を科学的に明らかにするとともに、利益水準達成の要因の1つとして考えられるコストの変動要因について実証分析することである。具体的には、データが取得可能な全国の地方公共団体、社会福祉法人、私立大学、公益法人、横浜市内の医療機関を対象として、1) 最適な利益水準の検討、2) 利益水準の決定要因(規制コスト、人的コストほか)、3) コスト(人件費、事業費、経費)の変動要因、を明らかにする。
黒木 淳
(経済科学)
横浜市を対象とした、広域災害後の避難から仮住まいへの被災者の居住需要シナリオの作成、および住宅再建の円滑化に向けた支援策の検討
本研究は、広域災害後(首都直下地震を対象とする)の避難から仮住まい円滑化への支援策・事前の広域的な需要供給シナリオの検討を行う。具体的には、次の2点である。1)首都直下地震後の避難から仮住まいへの移行の円滑化(賃貸空き家の借上による仮設住宅(みなし仮設住宅)の効果的な運用のために、国や都の専門委員会の議論に基づくシナリオの検討と対応についての検討。平常時の空き家活用施策との連携(モデル地区での住民需要調査・実装検討))、2)アメリカやヨーロッパを中心とした民泊ネットワーク組織(災害時に住居提供)のシステム、短期賃借法制の日本の仮住まい(短期賃貸)への援用の可能性の検討(入居前後の福祉的被災者支援も含めた仮住まいの提供方法、首都圏の需要推計と活用方法の検討)
石川 永子
(国際都市学)
コミュニケーションデザインを活用した疾病予防に関する戦略的研究
人びとの健康行動の持続的誘発には、対象属性に応じたコミュニケーションが重要である。広告医学という独自の概念を提案し、デザインやコピーライティングなどといった、わかりやすく、人々に影響を与える広告的視点を取り入れることで、生活する人々の行動変容を実現するコミュニケーション研究を進めており、クリエーターと共同で広告医学の概念に基づくアイテム開発・実証実験を継続していくことで、疾病予防に大きく寄与する独創的なコミュニケーション手法が生み出されるものと期待される。
本研究では、健康・医療分野における、世界で初めての取り組みである、コミュニケーションデザイン・センターの設立を試みる。YCUが提唱してきた広告医学(Ad-Med)という研究概念を核として、コミュニケーションの持つ力の最大化および、社会実装を通じ、自然に健康づくりが促進されるツール開発や商品化を試みる。以上を通じて、病のない社会を実現するため、デザインの手法で予防を実現する生活環境のデザイン体系の提案を目指す。 
 武部 貴則
(先端医科学研究センター)
iPS創薬プロテオミクス・グライコプロテオミクス基盤技術の開発
iPS細胞は、創薬ターゲットの探索、創薬非臨床薬理試験など創薬分野での利用が期待されている。早期実用化に向けて、薬理作用や安全性などの評価・予測に役立つ試験方法の開発は喫緊の課題である。現在、心筋細胞では電気生理学的評価法、また、神経細胞ではイメージングによるカルシウム測定などが用いられているが、高価な機器を必要とする上、定量性・再現性・頑健性に欠けるという課題がある。簡便・迅速な方法として、分子マーカーの利用が望ましいが、現在は、分化細胞の機能から予測される転写因子などが経験的に用いられているに過ぎない。
我々は質量分析法を用いたプロテオミクス・グライコプロテオミクスの手法により、iPS細胞とその心筋及び神経分化細胞に発現している5000~8000のタンパク質・糖タンパク質を定量的に解析し、それぞれのステージに特異的なタンパク質・糖タンパク質を特定することに成功している。本研究では、これらの手法とステージ特異的タンパク質・糖タンパク質を用いて、創薬シーズのスクリーニングや、医薬品候補の薬理作用・安全性評価に利用できる分子マーカーの開発を行う。
 川崎 ナナ
(創薬再生科学)

研究費