炎症性腸疾患とは?
炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)は、主に小腸や大腸に慢性的な炎症や潰瘍を起こす病気の総称で、「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」が代表的です。
発症の原因はまだ明らかになっていませんが、体質(遺伝)、食生活や喫煙といった生活環境、腸内細菌や免疫の働きなど、複数の要因が関わっていると考えられています。日本では患者さんが年々増えており、特に若い世代で発症することが多いため、学校生活や就職、結婚、妊娠・出産などの大切な時期に重なり、生活に大きな影響を与えることがあります。
治療は主に薬による内科的治療が中心ですが、重症の場合や薬が効きにくい場合には手術が必要になることもあります。現時点では「完治」できる治療はありませんが、新しい薬が次々と開発されており、治療の選択肢は広がっています。治療方針は、患者さんの症状や生活スタイル、ご希望に応じて、医療チームと相談しながら一緒に決めていきます。
センター概要
近年、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)の患者さんが増加しており、専門的で総合的な医療体制の整備が求められています。
本学ではこれまで市民総合医療センター内でIBD診療を行ってきましたが、患者さんの増加に伴い、より一層充実した診療体制が必要となってきました。
このたび新たに設立された 「炎症性腸疾患センター」 では、診断・治療に加え、栄養管理や薬物療法、妊娠や出産に関するサポート、さらに学校生活や就労への支援など、IBDに関連する幅広い課題に対応いたします。また、必要に応じて外科的治療を含む多方面からの支援を行い、患者さんにとって最適な医療を提供できる体制を確立しております。
当センターの特色
IBDは、消化管の症状に加えて、関節痛や結節性紅斑、ぶどう膜炎など、消化管以外の臓器にも症状がみられることがあります。また、他の自己免疫性疾患を合併する場合も少なくありません。
当センターでは、血液・リウマチ・感染症内科、皮膚科、眼科など関連する診療科と連携し、全身の症状に対して包括的に診療できる環境を整えています。
センター長挨拶


炎症性腸疾患センター長
消化器内科 前田 愼
このたび「炎症性腸疾患センター」を開設いたしました。潰瘍性大腸炎やクローン病をはじめとする炎症性腸疾患は、若年から発症し長期の医療を要する慢性疾患であり、患者さんの生活の質に大きな影響を及ぼします。当センターでは、消化器内科、外科、看護部、栄養部、薬剤部など多職種が緊密に連携し、診断から治療、生活支援、さらには先進的な研究まで一体的に取り組みます。患者さんに最適な医療を提供するとともに、最新の知見を積極的に導入し、次世代の医療発展にも貢献してまいります。地域の皆さま、そして患者さんとご家族の信頼に応えられるセンターを目指し、全力を尽くしてまいりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
副センター長
消化器内科・内視鏡センター 日暮 琢磨
副センター長
消化器内科 池田 礼
診療概要
<対象疾患>
潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管ベーチェット病、非特異的多発小腸潰瘍症、クロンクハイト・カナダ症候群 など。また、これらの疾患が疑われる未診断の腸炎・潰瘍患者の診療も可能とし、精度の高い鑑別診断と専門治療を提供します。
診療実績
センターとしては稼働したばかりですが、当院は日本炎症性腸疾患学会の指導施設としてこれまでも診療を行ってまいりました。今後はセンター開設により、さらに多くの患者さんをご紹介頂き、多職種連携を強化することによって、正確な診断と適切な治療を提供させていただきます。
受診を希望される方へ
当センターを初めて受診される方は、紹介状が必要です。
〇予約をご希望の場合
横浜市立大学附属病院ホームページ内の「初めて受診される方へ」をご確認ください。
〇予約をされていない場合
外来日当日の受付時間(8:30〜10:30)に紹介状をお持ちのうえ直接ご来院ください。診察までお待ちいただく場合がありますのでご了承ください。