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ベーチェット病診療研究センター

ベーチェット病診療研究センターとは

ベーチェット病は日本をはじめ、韓国、中国、中近東、地中海沿岸諸国に多発し、ヨーロッパ北部やアメリカその他の地域では稀な疾患です。
ベーチェット病の病態は未だに不明な点が多く、病態の解明や有効な診療法・予防法の開発において、上記の国や地域の医療従事者・研究者が重要な役割を担っております。
日本においては、当院の大野重昭先生(横浜市大眼科前教授)、石ヶ坪良明先生(横浜市大第一内科前教授)、水木信久先生(横浜市大眼科現教授)が厚生労働省難治性疾患政策研究事業「ベーチェット病に関する調査研究班」の班長として、調査、研究、診療に尽力してきました。
この度、日本を代表するベーチェット病の診療と研究のエキスパートを様々な診療科から集結させ、患者さんの診療はもちろんのこと、ベーチェット病の病態解明および具体的な診療指針を作成し、世界へ発信していくべく、当センターを開設させていただきました。当センターは、ベーチェット病患者レジストリ解析室ベーチェット病臨床研究推進室ベーチェット病病因病態研究室から構成されています。

ベーチェット病全国レジストリ

ベーチェット病では、患者さんによってさまざまな臨床像がみられます。これまでに多くの研究がされてきたものの、個々の症状や重症度の違いが、どのような機序で生じているのか全容解明にはいたっておりません。ベーチェット病の研究において大きな障害となるのが難病疾患であるがゆえに患者さんの数が限られていることです。多くの患者さんの症状や経過のデータを解析することができれば、これまでにわかっていない新しい知見を得られることが期待されます。
そこで、全国のベーチェット病の専門家によってベーチェット病の全国データベース(レジストリ)が構築されることとなりました。当センターでは、全国レジストリの事務局として中心的な役割を担っています。本レジストリは患者さんの臨床情報や遺伝情報などを含めた統合的なレジストリであり、長期的にデータを蓄積していきます。レジストリのデータを解析することで日本発のエビデンスが創出されていくことが期待されます。レジストリ研究には患者さんの協力が必要不可欠でありますので、ぜひレジストリ登録へのご協力をお願いします。

センター長挨拶

この度、ベーチェット病診療研究センターのセンター長を拝命いたしました水木信久でございます。
私のライフワークはベーチェット病の診療と研究であり、平成26年度より厚生労働省難治性疾患政策研究事業「ベーチェット病に関する調査研究班」の班長を仰せつかっており、ベーチェット病の病態解明および新しい治療法の開発に全力を注いでまいりました。
当センターが、ベーチェット病で苦しむ日本中の患者さんの一助となり、かつ世界レベルの仕事も行っていく拠点となることができるよう精進して参りたいと考えております。
今後とも宜しくお願い申し上げます。


受診に際して

•当センターでは地域病診連携を推進させていただいているため、初診の方は必ず紹介状をご持参下さい。なお紹介状がないときは受診できない場合があります。
•眼科受診希望の方は平日午前、リウマチ内科受診希望の方は月曜日または木曜日午前に受診して下さい。
•水木信久教授は「ぶどう膜炎」を専門にしています。ぶどう膜炎クリニックは木曜日の午後に開かれています。現在は教授をはじめとする大学病院スタッフと、ぶどう膜炎診療に経験豊富な臨床教授石原麻美先生にも参加して頂き、診療にあたっております。
•専門外来はお一人お一人の患者様にお時間をかけて診察を行うため、一般外来よりも待ち時間が長くなる傾向がありますのであらかじめご了承下さい。

ベーチェット病患者レジストリ解析室について

ベーチェット病患者レジストリ解析室 室長 桐野洋平

最近本邦では眼病変を有するベーチェット病患者さんの割合が減少し、一方で腸管型が増加するなど、ベーチェット病の症状が変化しています。ベーチェット病患者レジストリ解析室では、全国より集めた臨床情報、ゲノム情報、血清サイトカインなどの様々な因子を統合的に解析して、ベーチェット病の予後や疾患活動性と関連する因子を同定し、臨床症状が変化している原因を明らかにします。本解析によって診断基準やガイドライン改訂につながることが期待されます。さらにトルコ、米国などとの国際共同研究を推進して世界中のベーチェット病患者さんの診療に役立つ臨床研究を目指します。

▼ 論文について


ベーチェット病臨床研究推進室について

ベーチェット病臨床研究推進室 室長 吉見竜介

ベーチェット病の病因・病態はまだ不明な点が多く、エビデンスに基づいた治療法の確立が課題となっています。ベーチェット病は全身に多彩な症状をきたすことから、内科(リウマチ、消化器、循環器、脳神経)、眼科、皮膚科など、多くの科が診療に関わっています。そのため、質の高い臨床研究をベーチェット病に関して行うためには、各科の医師・研究者が診療科の枠を超えて協力することが非常に重要です。ベーチェット病臨床研究支援室では、ベーチェット病に関して各科が企画する臨床研究について研究デザインに関する提案と助言、共同研究体制の構築などに関するサポートを行い、円滑で質の高い臨床研究の企画と実行を目指します。ベーチェット病に関する臨床研究を促進させ、新しい診断法や治療法の開発を加速させていきたいと考えています。


ベーチェット病病因病態研究室について

ベーチェット病病因病態研究室 室長 竹内正樹

ベーチェット病は原因不明の疾患ですが、その発症には遺伝学的要因と環境要因の双方が関わっています。私たちはこれまでにアメリカ、トルコ、イラン、ポルトガル、韓国らの研究者とともにベーチェット病の発症に関わる遺伝子を多数同定することに成功しています※1。ベーチェット病病因病態研究室では全国から集められたゲノム情報や臨床情報を解析することで未知の遺伝要因の同定や遺伝要因と臨床像や病気の予後などとの関連を明らかにします。また、ベーチェット病の病態を解明することで新たな治療ターゲットを見出し、新規治療の開発に繋がっていくことが期待されます。
※1 Takeuchi M, et al.: Dense genotyping of immune-related loci implicates host responses to microbial exposure in Behcet's disease susceptibility. Nat Genet, 49:438-443, 2017.


医師紹介

水木信久(みずき のぶひさ) 眼科医師 医学博士

所属
横浜市立大学医学部眼科学主任教授 横浜市立大学大学院医学研究科視覚器病態学 教授(兼務)


▼ 専門分野、紹介、略歴、所属学会・資格・役職、受賞・著書・論文について



中島秀明(なかじまひであき) 血液・リウマチ・感染症内科医師 医学博士

所属
横浜市立大学医学部 血液・免疫・感染症内科学教室 主任教授
横浜市立大学大学院医学研究科 幹細胞免疫制御内科学 主任教授

▼ 専門分野、紹介、略歴、所属学会・資格・役職、受賞・著書・論文について



田中章景(たなか ふみあき)神経内科・脳卒中科医師 医学博士

所属
横浜市立大学大学院医学研究科 神経内科学・脳卒中医学 主任教授


▼ 専門分野、紹介、略歴、所属学会・資格・役職、受賞・著書・論文について



伊藤 秀一(いとうしゅういち)小児科医師 医学博士

所属
横浜市立大学 小児科学教室(発生成育小児医療学) 主任教授


▼ 専門分野、紹介、略歴、所属学会・資格・役職、受賞・著書・論文について



前田愼(まえだしん) 消化器内科医師 医学博士

所属
横浜市立大学医学部消化器内科 主任教授


▼ 専門分野、紹介、略歴、所属学会・資格・役職、受賞・著書・論文について



中島淳(なかじまあつし)消化器内科医師 医学博士

所属
横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授


▼ 専門分野、紹介、略歴、所属学会・資格・役職、受賞・著書・論文について


ベーチェット病の原因

原因は未だ解明されていない

ベーチェット病は難病に指定されて以来、研究班により原因などを探求されてきましたが、明確な原因は未だ不明です。
有力な説として、何かしらの遺伝的素因に、ウイルスや細菌といった環境的な素因が加わることで、白血球など免疫系の機能が異常を来し炎症を引き起こすことが挙げられています。

遺伝的素因の中でも特に重要視されるのが、HLA-B51抗原という白血球のひとつの型です。
このHLA-B51抗原をもっていると、ベーチェット病を発症する相対危険率が8倍にも上がります。

ベーチェット病と深く関係する「HLA-B51抗原」とは?

私たちの体は細菌やウイルス、花粉といった外来の物質(抗原)に常にさらされています。これらの物質(抗原)が体内に侵入した際に攻撃・排除してくれるのが免疫です。
HLA(Human Leukocyte Antigen: ヒト白血球抗原)は、こうした外来物質(抗原)を
最初に捉えて、その情報を体内のTリンパ球(免疫の中心的存在)へと伝える役割をもっています。つまり免疫系を作動させるためにHLAはとても重要な役割を果たしているということです。
HLAは機能的に大きく2つのクラスに分けることができ、全体では10種類以上になります。それぞれのHLAには様々なタイプがあり、所有しているタイプによって病気に対する免疫応答に差がでます。

ベーチェット病患者の場合は、このHLAのB抗原の中でもB51という型をもっている人が多く存在しています。このHLA-B51抗原とベーチェット病の相関関係は、人種などに関わらず様々な民族で認められています。

「シルクロード病」とも呼ばれる環境的素因

遺伝的素因が考えられる一方で、環境的な素因の影響も挙げられます。
ベーチェット病は、トルコやイタリアなどをはじめとする地中海沿岸諸国から日本や中国などを含む東アジアといったシルクロード辺縁諸国に多発する疾患で、別名「シルクロード病」とも呼ばれています。このことから、これらの地域に共通して存在するウイルスや細菌、農薬などの外来抗原、あるいは天候など環境ストレス因子などがベーチェット病の発症に影響を与えているのではないか、と考えられています。

ベーチェット病の症状

【画像:ベーチェット病の症状 (水木信久先生随筆より引用)】


ベーチェット病(Behçet’s disease)は、全身の諸臓器に急性の炎症が起こる難治性の炎症性疾患です。ベーチェット病は、初めてこの病気を報告したトルコのイスタンブール大学皮膚科Hulsi Behçet教授が病名の由来であり、日本では、1972年に当時の厚生省が国として初めて難病に指定した8疾患のうちの第1号です。
ベーチェット病の主な症状として以下の4つが挙げられます。

①口腔粘膜のアフタ性潰瘍
4つの主症状のなかでも必発といえるのが口腔粘膜のアフタ性潰瘍です。口唇や舌、頬粘膜、歯肉などに円形の潰瘍ができ痛みを伴います。しかし、これだけでは診断に至らず、病院に来る方も少ないです。そのため、アフタ性潰瘍に加えて皮膚症状や眼症状が現れたときに初めてベーチェット病が疑われます。

②皮膚症状
皮膚症状としては、前腕や下腿に結節性紅斑様皮疹といわれる紅く腫れた発疹がみられます。また、皮下にしこりのようなものができ痛みを伴います。
顔や頸、胸部、背部などに、ニキビのような皮疹ができることや、皮膚が敏感になって‟かみそりまけ“などを起こしやすくなることもあります。その他にも、血栓性静脈炎という、主に下腿の皮膚表面に近い血管に沿って赤くなる症状がみられることもあります。

③外陰部潰瘍
男性の場合は、陰茎や陰嚢、亀頭に、女性の場合は膣粘膜や大小陰唇に痛みを伴う潰瘍がみられます。

④眼症状
ベーチェット病においてもっとも重要な症状といえるのが、この眼症状です。
ほとんどの場合、両眼が侵され、何度も繰り返すうちに視力が0.1未満になってしまうなど視機能障害を起こし、失明に至るケースも多いです。ただし、現在は薬の開発も進んでいるため、失明まで至ることは減っています。

これら4つの主症状に加えて、消化器病変や血管病変、関節病変、男性の場合は副睾丸炎などが現れる場合もあります。また、神経症状がでることもあり、全面に神経症状が現れる病型を「神経ベーチェット病」と呼びます。男性に多く、喫煙との関連も注目されている病型です。

ベーチェット病の症状はどのように起こるのか?

ベーチェット病は、誘因となる何らかの外来抗原が皮膚や粘膜などから侵入し、それによって免疫系が過剰に反応するため、症状が起こると考えられています。
免疫が過剰に反応してしまう理由として、先に述べたHLAが関係してきます。このHLAは、入ってきた抗原の情報を伝達する役割を持っていますが、HLA-B51抗原の場合、ベーチェット病の誘因となる抗原に対して過剰な情報を伝達してしまいます。
そのため、免疫系の攻撃部隊は抗原をやっつけようと過剰な攻撃を加え、攻撃する必要のない健康な組織や細胞までも同時に攻撃してしまうのです。
また、この免疫応答は記憶されるため、再度同じ抗原が入ってきた際には、より素早く以前と同じ過剰攻撃をします。これが、ベーチェット病が何度も繰り返し、急激に悪化する理由です。

ベーチェット病の診断基準

ベーチェット病の症状はさまざまであり、症状の現れ方も異なります。そのため、ベーチェット病には診断に直接結びつくような検査所見はなく、症状の組み合わせなどから考えられた診断基準によって診断されます。

診断基準ならびに重症度分類については、難病情報センターのホームページに掲載されていますので、そちらを参照してください。

ベーチェット病重症度分類(2016年⼩改定)

診断基準ならびに重症度分類については、難病情報センターのホームページに掲載されていますので、そちらを参照してください。

ベーチェット病の臨床調査個人票

関連リンク

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