ベーチェット病診療研究センターとは
ベーチェット病は、日本をはじめ、韓国、中国、中近東、地中海沿岸諸国に多発し、ヨーロッパ北部やアメリカなどでは比較的稀な疾患です。
ベーチェット病の病態には未だ不明な点が多く、病態の解明や有効な診療法・予防法の開発においては、これらの国や地域の医療従事者・研究者が重要な役割を担っています。
日本においては、当院の大野重昭先生(横浜市立大学眼科学前教授)、石ヶ坪良明先生(横浜市立大学リウマチ・血液・感染症学前教授)、水木信久先生(横浜市立大学眼科学教授)が、厚生労働省難治性疾患政策研究事業「ベーチェット病に関する調査研究班」の班長として、長年にわたり調査、研究、診療に尽力してきました。本年度(2026年度)からは、桐野洋平先生(横浜市立大学血液・膠原病内科学准教授)が新たに班長を務めています。
このように本学は、歴代にわたりベーチェット病研究班の班長を輩出し、わが国におけるベーチェット病の診療・研究の発展に中心的な役割を果たしてきました。
当センターは、日本を代表するベーチェット病診療・研究のエキスパートをさまざまな診療科から結集し、患者さんの診療のみならず、ベーチェット病の病態解明や診療指針の策定を推進するとともに、その成果を世界へ発信することを目的として設立されました。
現在、センターは「ベーチェット病患者レジストリ解析室」「ベーチェット病臨床研究推進室」「ベーチェット病病因・病態研究室」の3部門から構成されています。
ベーチェット病全国レジストリ
ベーチェット病では、患者さんごとにさまざまな臨床像がみられます。これまで数多くの研究が行われてきましたが、個々の症状や重症度の違いがどのような機序によって生じるのかについては、未だ十分に解明されていません。
ベーチェット病研究における大きな課題の一つは、難病であるがゆえに患者数が限られていることです。一方で、多くの患者さんの症状や治療経過に関するデータを集積・解析することができれば、これまで明らかになっていない新たな知見が得られることが期待されます。
そこで、全国のベーチェット病専門医・研究者の協力のもと、ベーチェット病全国レジストリ(データベース)が構築されました。本レジストリは、AMED(日本医療研究開発機構)研究として採択され、2020年度から2025年度まで6年間にわたり実施されました。研究代表者は、2020年度から2022年度まで水木信久先生、2023年度から2025年度まで桐野洋平先生が務めました。
当センターは、本レジストリの事務局として中心的な役割を担っています。
本レジストリは、患者さんの臨床情報や遺伝情報をはじめとするさまざまなデータを統合的に収集し、長期的に蓄積するシステムです。また、遺伝子解析や血漿タンパク質解析などの研究に用いる血液検体を収集・保管するバイオバンク(デポジトリ)としての機能も有しています。
レジストリデータと生体サンプルを統合的に解析することにより、ベーチェット病の病態解明、新たな診断法や治療法の開発、さらには個々の患者さんに適した医療の実現につながることが期待されています。これらの研究成果は、日本発のエビデンスとして世界へ発信されていくことが期待されています。
本研究の推進には患者さんのご協力が不可欠です。ぜひベーチェット病全国レジストリへのご登録にご協力くださいますようお願いいたします。
センター長挨拶

ベーチェット病診療研究センター長の水木信久です。
私は長年にわたり、ベーチェット病の診療と研究に取り組んでまいりました。
平成26年度より厚生労働省難治性疾患政策研究事業「ベーチェット病に関する調査研究班」の班長を務め、全国の専門家の先生方とともに、ベーチェット病の病態解明、診断・治療法の向上、さらには患者さんのQOL向上を目指した研究を進めてまいりました。
ベーチェット病は、眼、皮膚、口腔粘膜、関節、消化管、血管、神経など全身に症状を呈する疾患であり、その病態にはいまだ多くの謎が残されています。一方で、近年は分子生物学やゲノム解析技術の進歩により、新たな知見が次々と明らかになりつつあります。
当センターでは、各診療科の専門医が連携して質の高い医療を提供するとともに、全国レジストリや生体サンプルを活用した研究を推進し、ベーチェット病の病態解明と新たな治療法の開発に取り組んでいます。また、日本から世界へ向けてエビデンスを発信し、国際的なベーチェット病研究の発展にも貢献していきたいと考えております。
当センターが、ベーチェット病に悩む患者さんやご家族にとって希望となる存在であり、診療・研究の両面において世界をリードする拠点となれるよう、スタッフ一同力を合わせて努力してまいります。
今後ともご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
受診に際して
- 当センターでは地域医療機関との病診連携を推進しているため、初診の患者さんは原則として紹介状(診療情報提供書)をご持参ください。紹介状がない場合には、受診をお受けできないことがありますので、あらかじめご了承ください。
- 眼科受診をご希望の方は平日午前、リウマチ・膠原病内科受診をご希望の方は月曜日または木曜日の午前にご受診ください。
- 水木信久教授はぶどう膜炎を専門としております。ぶどう膜炎専門外来は木曜日午後に開設しており、現在は大学病院スタッフに加え、ぶどう膜炎診療に豊富な経験を有する臨床教授の石原麻美先生にもご参加いただき、診療を行っております。
- 専門外来では、お一人おひとりの患者さんに十分な時間をかけて診察を行っております。そのため、一般外来と比較して待ち時間が長くなる場合がありますので、ご理解とご協力をお願いいたします。
ベーチェット病患者レジストリ解析室について
ベーチェット病患者レジストリ解析室 室長 桐野洋平

ベーチェット病研究班は、50年以上にわたり疫学実態の把握、病態の解明、診断・治療水準の向上、新規治療の開発に取り組み、わが国だけでなく国際的にも重要な役割を果たしてまいりました。
私自身、大学院在籍時より、七代目班長の横浜市立大学名誉教授石ヶ坪良明先生、八代目班長眼科学教授の水木信久先生、九代目班長の日本医科大学前教授岳野光洋先生のご指導のもと、厚生労働省難治性疾患政策研究事業「ベーチェット病に関する調査研究班」に参加してまいりました。令和8年度より、10代目の研究班の研究代表者を拝命いたしました。
班として取り組むべき課題は多岐にわたります。
本レジストリ解析室を中心に、全国的なベーチェット病のレジストリの症例登録を一層推進するとともに、クオリティ・インディケーターを用いた診療ガイドラインの実装状況の評価、重症度分類改訂を見据えた臓器病変別の疾患活動性指標とアウトカムに関する調査、コルヒチンやアプレミラストのリアルワールドデータの解析、さらにベーチェット病の全般的疾患活動性指標と予後との関連解析を通じた治療目標などの提言など、本研究班の成果を次なる実装段階へと進めるための重要課題に取り組んでまいります。
さらに、新たなエビデンスの蓄積を基盤として、「ベーチェット病診療ガイドライン2020」の改訂も視野に入れて進めてまいります。全国の先生方、関係者の皆様のお力添えを賜りながら、診療の質の向上と新たなエビデンスの創出に努めてまいる所存です。
ベーチェット病臨床研究推進室について
ベーチェット病臨床研究推進室 室長 吉見竜介

ベーチェット病の病因・病態にはまだ不明な点が多く、エビデンスに基づく診断法・治療法のさらなる確立が求められています。
また、患者さんの生活の質の向上や社会参加の支援、医療提供体制の最適化などの社会的課題への対応も重要です。さらに、ベーチェット病は全身に多彩な症状をきたすことから、内科(リウマチ、消化器、循環器、脳神経)、眼科、皮膚科など、多くの科が診療に関わっています。
そのため、質の高い臨床研究を行うためには、各診療科の医師・研究者が診療科の枠を超えて連携し、多職種・多領域で協力することも必要です。
ベーチェット病臨床研究推進室では、各診療科や研究グループが企画する臨床研究に対して、研究デザインの立案支援や研究計画に関する助言、共同研究体制の構築支援などを行い、円滑で質の高い研究の実施をサポートします。また、患者実態の把握や社会的課題の解決に資する研究の推進にも取り組みます。
本推進室は、ベーチェット病に関する臨床研究を促進し、新しい診断法や治療法の開発を加速するとともに、患者さんがより良い医療と支援を受けられる社会の実現に貢献することを目指しています。
ベーチェット病病因病態研究室について
ベーチェット病病因病態研究室 室長 水木悠喜

ベーチェット病病因病態研究室では、国内外の研究者と連携しながら、ベーチェット病の遺伝的要因および環境要因の解明に取り組み、本疾患の病因・病態の理解を深めるための研究を進めています。
当研究室では、ベーチェット病全国レジストリや生体サンプルを活用し、ゲノム解析や分子生物学的手法を取り入れながら、早期診断技術の確立や新規治療法の開発につながる研究を推進しています。
また、国内外の共同研究を通じて、日本から世界へ新たな知見を発信し、国際的なベーチェット病研究の発展にも貢献してまいります。
ベーチェット病に苦しむ患者さんとそのご家族の支えとなれるよう、研究室一同、日々研究に取り組んでまいります。
今後ともご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。