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運動失調症が引き起こされる新たなメカニズムを発見しました!

2017.03.24
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生命医科学研究科の鈴木厚准教授、佐竹智子特任助教は運動失調症が引き起こされる新たなメカニズムを発見しました!

概要

横浜市立大学 生命医科学研究科の鈴木厚准教授、佐竹智子特任助教は、自ら発見したMTCL1というタンパク質の遺伝子をマウスで変異させると、小脳性の運動失調が引き起こされることを見出しました。さらに、このマウスでは、電気信号を発するために必要な「軸索起始部」という構造が小脳の神経細胞(プルキンエ細胞)で損なわれており、微小管という細胞骨格線維を制御するMTCL1の働きがこの構造形成に不可欠であることを明らかとしました。このようなしくみで運動失調が発症することはこれまで知られていないため、今回の成果はヒトで確認されている原因不明の運動失調症の今後の研究に重要な手がかりを与えるものです。本研究は本学の「戦略的研究推進費」等の援助の下、医学部遺伝学教室の松本教授、附属病院遺伝子診療部の宮武助教、および、医学部神経内科学・脳卒中医学教室の土井准教授との共同研究として進められました。本研究成果は、科学雑誌『The EMBO Journal』(3月10日付オンライン)に掲載されました。

研究の概要

私たちが普段、特に意識しなくてもスムーズに様々な動きができるのは、後頭部にある小脳の中で働いているプルキンエ細胞という神経細胞のおかげです。神経細胞同士は様々な情報をやり取りするネットワークを作っていて、情報は電気信号によって伝わります。神経細胞は、細胞体から伸びる軸索という突起で別の細胞に信号を送り、他の神経細胞からの信号は樹状突起という別の突起で受け取ります。軸索の根元には「軸索起始部(AIS)」と呼ばれる電気信号を発する細長い構造があって、その内部には微小管という線維が密な束を作って存在しています。これまで、AISが形成されないと神経細胞は正常に信号を送れないことはわかっていましたが、AISが形成される仕組みはほとんどわかっていませんでした。私たちは、MTCL1という微小管制御タンパク質の生体での機能を明らかにするために、マウスでMTCL1遺伝子を変異させたところ、マウスは上手に歩けないなど運動失調を示しました。その原因を詳しく調べたところ、プルキンエ細胞のAISが正常な形態に形成されず、マウスの成長とともにプルキンエ細胞が徐々に変性することがわかりました。正常マウスのプルキンエ細胞でMTCL1タンパク質の量を減少させると、AISの形態が短くいびつになったり、ひどいものはAISが無くなったことから、プルキンエ細胞のAISを正常に形成するためにはMTCL1が必要であることがわかりました。MTCL1が無いとAIS内部の微小管の束は、乱れて隙間ができたことから、MTCL1は微小管を密な束にする働きによって正常なAISの形成に関わることがわかりました。原因不明の脊髄小脳変性症の患者さんの一家系でMTCL1の機能に影響するvariant(遺伝子の変化)が同定されたことより、MTCL1遺伝子の機能変化が脊髄小脳変性症に寄与する可能性も示唆されました。

今後の期待または研究成果報告者のコメント

本研究によって、神経細胞が電気信号を発する構造であるAISが正常に形成されるためには、その内部にある微小管が密な束になる必要があることが明らかになりました。MTCL1遺伝子が変異したマウスが示す運動失調やプルキンエ細胞の変性は、ヒトの脊髄小脳変性症の症状に類似していることから、プルキンエ細胞でのMTCL1の更なる機能解析によって、脊髄小脳変性症の発症機構の解明、ひいては新たな治療法の開発につながることが期待されます。
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