乾癬センター
乾癬の概要
乾癬は全身の皮膚に厚みと落屑を伴う境界明瞭な紅斑局面が多発して慢性に経過する皮膚の炎症性疾患です。本邦における乾癬の有病率は増加傾向にあり、最新の研究では人口の0.34%、約43万人の患者さんがいると推定されます。乾癬は皮膚疾患の中でも、その見た目と症状・経過から非常に患者さんの生活の質(Quolity of Life: QOL)を傷害することが知られています。その発症原因として、遺伝的な素因に加えて、肥満・喫煙・感染症などの環境的な因子が加わって発症すると考えられています。
以前は、乾癬は皮膚だけの病気として考えられていましたが、近年の研究により関節炎、眼のぶどう膜炎、炎症性腸疾患、心血管病変、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を合併しやすいことから、全身性の炎症性疾患として捉えられています。実際に肥満や生活習慣病を改善することで皮疹も改善することが知られています。また、乾癬の中でも、10~15%にリウマチや変形性関節症に似た関節痛を合併する乾癬性関節炎というタイプがあります。乾癬性関節炎は初期の診断が難しく、また、乾癬と関係があると患者さんも知らずに見過ごされてしまることがあります。しかし、治療の開始が遅れてしまうと、骨が破壊され、関節が変形してしまうリスクが高まるため、早期診断・早期治療がより重要となります。そのため、乾癬の治療には、皮疹の治療だけてはなく、関節炎やメタボリックシンドロームなどの乾癬に合併する疾患の生活指導やその治療も非常に重要となります。「乾癬の症状に悩まずに日常生活を過ごすことができる」という乾癬治療のゴールを目指すためには、皮膚科だけでなく乾癬に合併する疾患や生活習慣病に関わる各科との診療連携が必要となります。
挨拶
乾癬センター長 皮膚科 山口 由衣

念願であった乾癬センターを立ち上げることができ、嬉しく思います。乾癬は、皮膚だけではなく、関節炎や生活習慣病を含め、全身の様々な炎症とつながりのある免疫の疾患です。多くの方は、皮膚症状が先行しますので、早期から皮膚症状を上手にコントロールし、他の病状が出現してこないかに気を配り、もしくは、それら併存症もともに治療しながら、総合的にマネージメントすることが重要です。近年、乾癬の治療は驚くほどの進歩を遂げています。乾癬に関わる様々な診療科から専門医が診療に携わり、個々の患者さんの病状や生活環境に合わせた最善の治療を提案します。また、より良い医療を提供できるように未来志向の研究にも力を入れていきます。お困りの方は是非ご相談ください。
スタッフ紹介
副センター長 血液・リウマチ・感染症内科 桐野 洋平

乾癬は皮疹、関節炎など様々な全身症状を起こす疾患です。関節や腱の痛みは強いものの、あまり腫れなかったり、採血での炎症反応が軽微なことも多く、診断までにかなり時間がかかることがあります。また、様々な薬剤を使用しても症状が改善しないことも多いです。本研究センターでは、このような臨床現場での診断や治療の問題点に答えるために、リウマチ内科の立場から乾癬に関わる関節症状の診断と治療の最適化を図ります。また乾癬の治療開発や基礎研究も推進します。
副センター長 皮膚科 渡邊 友也

乾癬は皮疹だけではなく、様々な合併症を伴う全身性の炎症性疾患です。最初に乾癬の患者さんに接することが多いのは皮膚科医であり、皮疹のみならず全身を正しく評価し、リウマチ内科や糖尿病内科の先生方と適切に連携をとることが重要です。当センターでは、多職種の医師とコメディカルが密接の連携することで患者さんにより適切な乾癬の治療と全身の治療を行えるようにしていくことを目指しています。その強みを活かしつつ、皮膚科医の立場から乾癬の診断と患者さんの希望や意見を取り入れた適切な治療の提供を行っていきます。乾癬に関連した困ったことがありましたら、積極的に担当医にご相談ください。
糖尿病・代謝内分泌内科 奥山 朋子

乾癬患者においては、肥満や糖尿病(耐糖能異常)、脂質異常、高血圧をはじめとするメタボリックシンドロームの合併率が高いことがよく知られています。乾癬は全身性の炎症を介してインスリン抵抗性を惹起し、メタボリックシンドロームや心血管疾患といった併発症を引き起こす “全身疾患である” という概念が提唱されており、乾癬診療においては皮膚科医と内科医との連携が重要であると考えます。早期から併発症を発見し、その治療を行うことは、乾癬自体の改善にもつながっていくと期待しています。私自身はインスリン抵抗性や、皮膚と代謝疾患との相互作用に関して興味を持ち基礎研究にも従事してきました。乾癬とメタボリックシンドロームの関連についてはまだ不明な点も多くありますが、乾癬センターにおける多面的な診療によって、乾癬治療の発展に努めたいと思います。
乾癬センターの体制と特色
乾癬治療においては皮膚科医のみならず、乾癬の合併症に関係する各科と連携していくことが乾癬治療において重要となります。乾癬センターでは皮膚科、リウマチ内科、糖尿病・代謝内分泌内科が中心となり、乾癬とそれに関連した合併症を多診療科・多業種が協力して、一括的に診察・治療できる体制をとっています。特に早期の診断と治療が難しい乾癬性関節炎については、関節エコーやMRIなどの積極的な画像検査に加えて、皮膚科とリウマチ内科の合同外来で患者さんを同時に診察することで診断のみならず、治療方針についても情報共有し、早期の診断と適切な治療介入を目指していきます。また、乾癬の皮疹や関節炎の悪化にかかわる肥満やメタボリックシンドロームについても評価を行い、治療や生活習慣の改善が必要な患者さんには糖尿病・代謝内分泌内科の診察や栄養部での食事指導も行っていきます。このように皮膚だけではなく乾癬に関連した合併症のトータルマネージメントを行うことが乾癬センターでは可能となります。
また、乾癬センターで治療を行い、症状が安定した患者さんについては、ご紹介頂いたクリニックや病院に逆紹介をすることで地域の病診連携を積極的に進めて参ります。
スタッフ集合写真
受診希望の患者さんへ
乾癬は、全身に皮膚が盛り上がった赤い発疹の上に、銀白色のフケのようなものがつき、ポロポロとはがれ落ちることを繰り返す皮膚の病気です。人によっては皮膚だけでなく、爪が変形したり、指の関節やアキレス腱などが腫れたり痛んだりして、日常生活にも影響をおよぼすことから、適切な治療を行うことが重要です。また、肥満や高血圧などのメタボリックシンドロームが病気の悪化にもかかわることから、皮膚だけでなく体全体の治療が必要となります。乾癬は、一昔前は“治らない”病気と言われていましたが、今は多くの新しい薬剤が乾癬に使用可能となっており、乾癬に悩まれることなく日常生活を送ることができるようになっています。乾癬の皮膚症状は勿論のこと、乾癬の合併症に悩まれている患者さんは是非当センターを受診ください。
外来日のご案内
外来の予約は当院の地域連携課より予約可能です。乾癬の皮疹の診断・治療をご希望される場合には月・火・金曜日午前の皮膚科初診枠にご予約ください。関節炎の診断・評価をご希望される場合は、月・木曜日午前または第1, 3水曜午後の内科初診枠にご予約ください。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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神奈川乾癬患者友の会について
神奈川乾癬友の会は、皮膚科専門医の指導のもと、乾癬患者さんやそのご家族・ご友人などが集い、ともに学んだり、悩みを相談しあったり、交流したりする「コミュニティ」として2012年に誕生しました。勉強会や懇談会の開催、会報の発行、乾癬患者さんに役立つ情報の発信、他の乾癬患者会との交流などを行っています。