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武部准教授(大学院医学研究科 臓器再生医学)が、「広告医学(AD-MED)~Activating Healthcare Behavior~」をテーマに、カンヌ、シンガポールの世界的フェスティバルで招待セミナー

2014.12.01
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武部准教授(大学院医学研究科 臓器再生医学)が、「広告医学(AD-MED)~Activating Healthcare Behavior~」をテーマに、カンヌ、シンガポールの世界的フェスティバルで招待セミナー

『広告医学』(AD-MED)とは?

従来の医学研究における中心的な考え方は、病気や症状への対処法の確立を目指すことです。一方、医療や健康に関する情報を扱う主体が一般の人々に急速に移りつつあるいま、病気に至る以前の方々、いわば、生活者にコミュニケーションを図る最適な手法を研究する活動の重要性が明らかに増しています。これらを実現するための新たな知の体系として、『広告医学』(AD-MED)が立案されました。
 『広告医学』(AD-MED)とは、武部准教授が本学医学部在学中に世界で初めて考案した概念で、平たくいえば広告の持つクリエーティビティーを活用した「コミュニケーション」を行うことで、生活者の目線からさまざまな医療問題の解決を目指す体系のことを示しています。

ライオンズヘルス(*)でのセミナー内容

世界最大のクリエイティブフェスティバルであるカンヌライオンズが新設したライオンズヘルスにおいて、「『広告医学』(AD-MED)—コミュニケーションでヘルスケア行動をアクティベートする」と題し、日本人として唯一セミナーを実施しました。
セミナーでは、横浜市立大学大学院医学研究科の武部貴則准教授と、広告医学の研究パートナーである電通ビジネス・クリエーション・センター プランニング・ディレクター清水真哉氏(横浜市立大学 客員研究員)が講演。「大学の医師」と「広告会社の人」の掛け合いを通じ、超高齢化により医療問題が発生する一方で、テクノロジーがこれを補完する、という現状を紹介しました。これは生活者視点からこの現状を見た場合、テクノロジーが生み出す情報を「どう使うか」という判断に常に直面することを意味し、それは「新しい常識」の時代を意味しています。
 次に、クリエーティビティーでこうした状況を解決した実例として企業社員食堂での減塩実験、「タニタ食堂」、健康テクノロジーを紹介する積水ハウス「住ムフムラボ」、地域を巻き込むアプリプラットフォームで住民の健康スコアアップを実現した「スマイル松山プロジェクト」を紹介。医学情報が分かりやすく「デザイン」されること、人がつい行動してしまう「アクティベーション」の工夫がされること、それを長続きさせるため多くの関係者を「コネクト」(つなげる)こと、という広告業の得意とする3要素を生かすことが、今後最低限のポイントになってゆくと述べました。
 先進国市場のソリューションに触れたセミナーが少なかった中で、会場の反応も上々。グローバル視点でも注目度が高く、今後ニーズが高まる「ヘルスケア領域」でクリエーティビティーができることには可能性が広がっていると感じさせました。ライオンズヘルスでのセミナーが好評であったことから、アジア最大の広告祭であるスパイクスアジア2014(http://www.spikes.asia/home/)においてもセミナーが予定されています。

『広告医学』(AD-MED)の今後

本学教員地域貢献事業の一環として、健康行動の常態化が最も必要である働き盛りの就労者を対象に、有効なコミュニケーション施策の立案を目指した研究活動を進めています。企業へのヒアリング調査などをもとに、デザインやコピーライティングなどの直感的でわかりやすい広告的な伝え方を取り入れることで、生活習慣の改善や生活習慣病の重症化を未然に防ぐための働きかけの開発に取り組みます。
さらに、10月18日には、市民向け講座(無料)「ついついすれ違ってしまう医療コミュニケーション ー調査でわかる医者とみんなのホンネー」を開催します。医療に関するコミュニケーション(*)を題材に、お笑い芸人やアナウンサーとともに、○☓カードで議論に参加しながら楽しめる全く新たな市民講座を提供します。会場であるパシフィコ横浜1F大ホールの周辺では、無料の健康チェックや、協賛物品なども提供予定。

用語説明

*ライオンズヘルス
今年から新設された医療・ヘルスケア分野の広告祭「ライオンズヘルス」は、6月13~14日に先駆けて開催された。主にセミナーとアワードで構成され、49カ国・地域から1423点の応募作品、広告主企業を中心としたセミナーが18件開催された。
*広告医学(AD-MED)の扱うコミュニケーションの範囲
 広告医学とは、いわばコミュニケーションの研究であるが、通常、わかりやすい情報提供の追究、と解釈される方が多い。しかし、広告医学が考えるコミュニケーションとは、より広範な概念であり、日常生活の中で活かせる環境や仕組みのデザインも含む。したがって、情報系(メディアサービス、スマホ・PCアプリサービス、医療機関向けサービス)に加え、デザイン系(プロダクトデザイン、住宅・職場・病院などのスペースデザイン、環境インフラデザイン)、教育系(保健指導プログラム、コメディカルサポート、義務教育プログラム)などの複数領域にまたがる研究活動を実施する。最終的には、発見された有効なコミュニケーション施策を統合し、コミュニティ開発へと応用していくことを目標としている。



(現地写真=Getty Images)
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