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第39回日本分子生物学会で医学研究科の奥田諒さんが優秀ポスター賞を受賞!

2017.01.23
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  • 学生の活躍

第39回日本分子生物学会で医学研究科の奥田諒さんが優秀ポスター賞を受賞!

奥田諒さん
2016年11月30日(水)~12月2日(金)にパシフィコ横浜で開催された第39回日本分子生物学会で、大学院医学研究科医科学専攻博士課程3年(臓器再生医学教室)の奥田諒さんが優秀ポスター賞を受賞しました。

第39回日本分子生物学会では、どのような内容を発表されたのでしょうか?また、どのような点が今回の受賞につながったのでしょうか?

【発表内容について】
 今回の学会では、「ヒト膵癌組織を生体外で作り出す」ための新規技術について発表しました。膵癌は非常に予後の悪い難治癌であり、高い治療効果を示す抗がん剤が開発されていないのが現状です。膵癌は、癌細胞の周囲に血管内皮細胞・間質細胞などが癌細胞を取り巻く形で存在し、これらの細胞から成る「腫瘍微小環境」と呼ばれる環境が、膵癌の抗がん剤耐性に非常に重要な役割を担っていることが明らかになっています。しかしながら、膵癌の腫瘍微小環境は人工的に再現する評価系が確立されておらず、全貌解明には至っていません。私は、腫瘍微小環境の再現系を開発することが、膵癌の新たな創薬につながると考え、膵癌を構成する間質細胞を含む「膵癌組織」を生体外で作り出すことを研究課題とし、その成果について今回発表しました。

【受賞につながった点】
 従来の癌研究は、癌を癌細胞の集合体として捉えていました。一方、我々は癌を「癌組織」として捉え、ヒトの癌組織を人為的に再構成するための基盤技術を開発しました。癌の特性を組織として捉えること、および、癌組織をハンドリングするための基盤技術を開発したことが受賞につながったと考えています。この技術は膵癌のみならず、乳癌や肺癌などの様々な癌に応用できることから、アカデミックの研究者の方々はもとより、製薬企業の方々からも高く評価していただけたのではないかと考えています。また、ポスター発表日の午前中にシンポジウムで発表を行ったことで、ポスター発表の際、多くの方々が意見交換に来てくださり、盛り上がったことも良かった点だと思います。

参加にあたって、事前準備など特に意識した点や工夫した点があれば、お聞かせください。また、苦労した点と、それをどのように乗り越えられたかも教えてください。

研究成果をできるだけ多くの方に理解していただけるよう、プレゼン資料の作成に際しては極力写真や図を多用し、興味を持っていただけるポスター作りを心がけました。幸いにして私は良き指導者に恵まれ、修士課程の時から実験データのとりまとめだけでなく、プレゼン資料作成についてもトレーニングを受けることができました。このような一貫した取り組みが大きかったと思います。谷口先生をはじめ、指導教員の方々や研究室のメンバーには大変感謝しています。

普段はどのような研究・勉強をされているのでしょうか?

私が所属する大学院医学研究科・臓器再生医学教室は、名前の通り正常な組織を再生する研究室ですが、再生医学は、幹細胞生物学や発生生物学などを学術的背景としています。一方で、「癌」の細胞社会を理解する上でも、幹細胞生物学や発生生物学的視点に基づくアプローチが有効と考えられています。私は癌の再発や転移等の原因の一つと考えられている癌幹細胞やその周囲に存在する腫瘍微小環境を解明するための研究を進めていますが、再生医学の研究で得られる成果は大いに参考になります。同じ研究室で正常組織の再構成法の開発、癌の再構成法の開発を並行して進めることで、様々な研究上のヒントを得られることがメリットと感じています。今回発表した研究も再生医療の研究からヒントを得たものであります。

奥田さんの将来の夢や、目標を教えてください。

癌研究という壮大なテーマを通じて、人々の役に立つ研究をしたいと思います。日本人の死因の第一位である癌を対象として、癌の治療抵抗性機構を解明することが多くの人々の役に立つと考え、現在の研究室に入ることを決めました。研究室に配属後、実際に手を動かして研究するようになり、「癌研究を通して世界の人々の健康を守りたい」という思いが研究職を志望する大きな動機になっています。やはり癌は早期発見が第一ですので、将来は早期発見につながる研究をしたいですね。

上野康晴助教(臓器再生医学)から奥田さんの受賞についてコメントをお願いします。

癌研究は従来の均質な癌細胞株を対象とした研究から、癌組織を対象とする研究にシフトしつつあります。癌の細胞社会の成り立ちや、癌を構成する細胞間の相互作用を明らかにすることで、癌の新たな治療標的の開発が求められています。奥田君の今回の発表は、次世代の癌研究を推進するために必須となる癌を構成する細胞群の新たなハンドリング法の開発に直結するもので、極めて高い医学的価値を持つものと考えています。奥田君は、高いモチベーションを持ちながら日々の研究を推進しており、今後も多くの新しい発見が期待されます。今回の受賞を契機に、癌研究者としての更なる飛躍を期待しています。
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