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【活躍する市大生】日本プロテオーム学会2016大会(東京)で「若手口頭発表優秀演題」を受賞した川崎ナナ研究室の亀田康太郎さん

2016.09.28
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  • 学生の活躍

日本プロテオーム学会2016大会(東京)で「若手口頭発表優秀演題」を受賞した川崎ナナ研究室の亀田康太郎さん

平成28年7月28日(木)・29日(金)に北里大学薬学部白金キャンパスで開催された日本プロテオーム学会2016大会(東京)で、国際総合科学部・理学系・生命医科学コース4年の亀田康太郎さんが「若手口頭発表優秀演題」を受賞しました。
受賞について亀田さんにお話を伺いました。
授与式の様子

◆今回の大会で発表された内容を教えてください。また、どのような点が今回の受賞につながったのでしょうか?

生体は様々な種類のタンパク質が機能することによって維持されています。タンパク質は細胞の遺伝情報をもとに形成されますが、その形成過程において、タンパク質に様々な分子の付加反応が行われます。このことを翻訳後修飾といいます。この、翻訳後修飾の一つにN結合型糖鎖修飾があります。N結合型糖鎖は高マンノース型、混成型、複合型に分類され、疾患や分化に伴って変動したり、タンパク質の機能を調節したりすることが知られています。今回、タンパク質の糖鎖結合部位ごとにN結合型糖鎖のタイプを網羅的かつ高感度に検出、分類する新規の分析法を開発し、同一患者さん由来の原発性大腸がん細胞と転移性リンパ腫細胞を用いて、糖鎖修飾が変化したタンパク質を明らかにできることを示したことが、受賞につながりました。

◆「日本プロテオーム学会」とはどのような組織なのでしょうか?

種々の生物のプロテオーム研究に携わる研究者が一堂に会し、プロテオーム研究やプロテオーム解析技術開発について議論する学術団体です。プロテオームに関する学会では日本で最も大規模な学会で、国際的学会であるヒトプロテオーム学会 (HUPO) の理事もこの学会から選出されることが多いなど実績もあり、非常に活気に溢れています。
表彰状

◆今回の学会に参加することになった経緯や、参加された際の感想、エピソード等あれば、お聞かせください。

川崎ナナ研究室はプロテオーム科学研究室ということもあり、日本プロテオーム学会についてはよく先生方からお話をお聞きしていました。日本プロテオーム学会は、日本では一番大きなプロテオミクスの学会なので、実験の成果をぜひこの学会で発表したいと思い、思い切ってチャレンジしました。
「若手」の部は学生や大学院生までが対象と思っていましたが、40歳までの研究者が対象で産業技術総合研究所や理化学研究所の研究者も参加されていることを知り、驚きました。
今回は口頭発表だったので、たくさんの方が発表を聞きに来られていました。発表では、緊張で頭が真っ白になりました。しかし、7月中旬から、授業・研究の合間や土日を利用して2日に1回のペースで先生方と何度も発表練習を重ねたおかげで何とか無事に発表することができました。

◆参加にあたって、事前準備など特に意識した点や工夫した点があれば、お聞かせください。また、苦労した点と、それをどのように乗り越えられたかも教えてください。

図の描き方、要旨の書き方、発表の仕方等をスーパーバイザーの川崎教授に特に重点的にご指導いただきました。発表を聞いてくださる方に少しでもわかりやすく伝えることを心がけ、スライドのフォントの大きさやアクセントのつけ方、グラフの細かいデザインにも気をつけました。
私は学部4年生なのですが、横浜市立大学の大学院早期履修制度を活用しており、前期は大学院講義をほぼ毎日受講していたため、なかなか実験をする時間が作れない点に苦労しました。休み時間等の空き時間も有効に使い、計画的に実験を進めることでこの点を克服しました。

◆受賞された際の研究室の皆さんや先生の反応はいかがでしたか?

総勢17名の研究室の仲間や、先生方も喜んでくださいました。受賞した日は、仲間や先生方が打ち上げをしてくださり、非常に楽しく、受賞の喜びがこみ上げてくると同時に、今後の研究も頑張っていこうという気持ちが更に強くなりました。
実験中の亀田さん

◆研究室では普段どのような研究・勉強をされているのでしょうか?

研究室では主に質量分析、糖鎖解析、液体高速クロマトグラフィー等の分析化学の研究、勉強をしています。私は発生、分化に興味があるため、これからはiPS細胞等を用いて発生、分化と糖鎖の関係について質量分析法を用いて研究していく予定です。

◆亀田さんの将来の夢や、目標を教えてください。

横浜サイエンスフロンティア高等学校を卒業し、YCU型高大院一貫科学者養成プログラム(現理数マスター)で大学2年生から研究室で実際に研究というものに触れることができました。その結果、研究者になるという明確な目標を持つことができました。横浜市立大学で博士後期課程に進学し、再生医療、分析化学分野の研究者になるのが夢です。
研究はデータが出るまでは苦しく感じることがありますが、データが出ると何とも言えない達成感を味わうことができ、これが癖になります。また、培地交換を怠ると「細胞が怒っている」ように見えることがありますが、こうした自分の感覚に従って進めると培養がうまくいくことも多いです。私はこうした感覚を「細胞に対する愛」と捉えていますが、こうした想いをこれまで以上に大切にし、いずれはiPS細胞を用いて心臓をつくりたいという大きな目標を実現させたいです!
川崎ナナ教授と亀田さん

◆川崎ナナ教授(プロテオーム科学)から亀田さんの受賞についてコメントをお願いします。

亀田さんはプロテオーム科学研究室に配属されて短期間に、質量分析や糖鎖解析など新しいことを次々と吸収していきました。これらを理数マスターで身につけた細胞生物学の知識・経験と上手く融合させたことが、受賞につながったと思います。これからも持ち前の好奇心とパワーで、また、今回受賞した分析ツールを用いて、発生、分化と糖鎖の関係の解明という新しい分野に挑戦していってほしいと思っています。
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