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抗腫瘍細胞活性を持つムラサキイガイ由来タンパク質の立体構造を決定

2016.07.06
  • プレスリリース
  • 研究

抗腫瘍細胞活性を持つムラサキイガイ由来タンパク質の立体構造を決定

MytiLec サブユニット構造と、二量体MytiLecの抗腫瘍細胞活性の図

~「Scientific Reports」誌に掲載~

研究成果のポイント

○ムラサキイガイ(ムール貝)の、バーキットリンパ腫培養細胞に抗腫瘍活性を示すレクチンタンパク質「MytiLec (マイティレック)」の立体構造を決定しました。
○本構造情報を糖鎖結合や抗腫瘍活性の機能をもつ人工タンパク質の設計、創出に応用することが期待されます。

研究者

横浜市立大学大学院生命医科学研究科後期博士課程 寺田大樹、同教授 ジェレミー テイム(構造創薬科学)、生命ナノシステム科学研究科後期博士課程 イムティアジ・ハサン、同教授 大関泰裕(糖鎖生物学)らの研究チーム

研究の背景

動物の細胞表面のタンパク質と脂質には、糖鎖が結合した糖タンパクと糖脂質が存在します。このため、細胞の表面は糖鎖で覆われています。レクチンは糖鎖と結合するタンパク質の総称(糖鎖結合抗体を除く)で、糖鎖と結合して細胞の働きを調節することが知られています。レクチンは細菌から植物、動物まで全ての生物で見つかっていますが、海産無脊椎動物を含む下等生物のレクチンには、腫瘍化や再生中の細胞の表面タンパク質に出現する糖鎖と結合するものが知られていました。
MytiLecは、ムラサキイガイ (ムール貝)から発見されたレクチンで、α-ガラクトース糖を末端に持つGb3とよばれる糖鎖と結合します。このMytiLecをGb3糖鎖を多く持つヒト・バーキットリンパ腫培養細胞に加えたところ、細胞死が起きて増殖が抑えられました※1。Gb3と結合したMytiLecが細胞内部のタンパク質を活性化させ、細胞死を起こすという生化学的なしくみも明らかにされています※2が、こうした機能を持つMytiLecの立体構造については、未解明でした。

研究の概要と成果

今回の研究では、 MytiLecを結晶化してその立体構造をX線回折により決定しました。
その結果、このタンパク質は分子内に3回の繰り返しアミノ酸配列を持ち、三つ葉のクローバー状の形をした「ベータ トレフォイル構造」を持つことを明らかにしました。また、MytiLecは二個のサブユニットから成る二量体分子として存在し、細胞死を起こすためには二量体であることが不可欠であることも分かりました(図)。今回、MytiLecが標的とするGb3糖鎖との結合に働くアミノ酸配列と、一分子あたり6個の糖鎖と結合している状態も決定されました。本研究の成果が加わり、MytiLecについてはそのゲノム※3から分子の立体構造までが解明されたことになります。

今後の展開

本立体構造情報を計算機科学と組み合わせ、将来的にはMytiLecの持つ糖鎖や細胞との結合、抗腫瘍細胞活性と同様の機能を持った人工タンパク質の設計などを通じて生命医科学研究の発展に役立てたいと考えています。

研究費情報

本研究は公立大学法人横浜市立大学基礎研究費を受けて行われました。

論文情報

タイトル:"Crystal structure of MytiLec, a galactose-binding lectin from the mussel Mytilus galloprovincialis with cytotoxicity against certain cancer cell types"
著者:Daiki Terada, Fumihiko Kawai, Hiroki Noguchi, Satoru Unzai, Imtiaj Hasan, Yuki Fujii, Sam-Yong Park, Yasuhiro Ozeki, Jeremy R.H. Tame
掲載雑誌:Scientific Reports 6巻 28344 2016年
お問い合わせ先

(本資料の内容に関するお問合せ)
大学院生命医科学研究科 教授 ジェレミー R. H. テイム
http://www.tsurumi.yokohama-cu.ac.jp/lab/pdl.html
Tel : 045-508-7228
E-mail: jtame@tsurumi.yokohama-cu.ac.jp

大学院生命ナノシステム科学研究科 教授 大関 泰裕
http://researchmap.jp/1124/
Tel : 045-787-2221
E-mail: ozeki@yokohama-cu.ac.jp

(取材対応窓口、資料請求など)
研究企画・産学連携推進課長 渡邊 誠
Tel 045-787-2510
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