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HOME > 教員からのメッセージ − At the Heart of YCU > 育みたいのは、日本発信でなく、世界仕様のグローバリズムです - 赤羽 淳 准教授

育みたいのは、日本発信でなく、世界仕様のグローバリズムです - 赤羽 淳 准教授

シンクタンクにて企業へのコンサルティング業務を推進

私は2012年の4月に横浜市大に着任しましたが、それまでは大手総合研究所(シンクタンク)に15年ほど勤務し、官公庁や企業といったクライアントを相手にしたコンサルティング業務を行っていました。

シンクタンクの仕事というのは、なかなか外の人にはわかりにくい面があるように思います。クライアントは官公庁と民間企業に分かれるのですが、官公庁では経済政策や環境政策などの政策提言が主な業務である一方、民間企業においては、現状認識や市場調査・分析に基づき、経営に関する課題解決や事業の立ち上げ、推進などのための提言・提案を行うコンサルティングがメインとなってきます。

 新興国における自動車、IT産業を分析。留学も経験

所属部署が製造業をメインに手がけていたこともあり、私は主に自動車産業と半導体などの電子デバイス関連のクライアントを担当していました。両分野の動向を左右するキーワードとして「新興国」の存在が大きくなってきていた背景もあり、中国、インドをはじめとしたアジア、ブラジル、アルゼンチンなどの中南米へも現地視察、調査のために度々出かけていました。

日本の自動車メーカーは、一部を除き中国やインドといった巨大市場のニーズをうまく捉えきれていない面(CLOSE UP 1)があり、苦戦が続いていました。現地での日本車のイメージなどの実態を調査し、シェア拡大のために必要な考え方を提案しました。

また伝統的に電子産業が盛んな台湾へは、一時休職して現地の大学へ留学。中国語を学びながら、液晶やIT産業の研究を行いました。

赤羽 淳(あかばね・じゅん)
国際総合科学群 准教授
(学部)国際総合科学部経営科学系経営学コース 
(大学院)国際マネジメント研究科 

CLOSE UP 1

なぜ、新興国において日本車メーカーは弱いのか?

米国や東南アジアと比較すると、中国、インドなどの新興国では日本メ−カ−のシェアは低く、韓国の現代自動車や現地メーカーのシェアが高くなっています。その理由としては日本メーカーの多くが北米市場などでの成功例モデルを、新興国向けにアレンジした形で市場に切り込もうとしていることが考えられます。

例えば乗用車の価格を見ると、日本車の100万円前後に対し、中国やインドの現地メーカーは50万円を切るものを販売しています。その低価格を実現できるのも、新興国メーカーでは製造段階において、従来の車づくりのプロセスを踏襲せず、規格化されたユニットの組み合わせ型を採用しているからです。

日本車メーカーが現地における支持拡大を実現するには、発想を根本的に転換し、新興国市場のニーズ、特性に合わせた製品を、ゼロベースから設計・開発することが必要だと思われます。

ビジネスの現場で得たものを、学生に伝えるために

キャリプランとしての「教育」への思い

学生時代から、私はキャリアの最終段階に「教育」というものを思い描いていました。シンクタンクで忙しい日々を過ごしているうちに、じっくりとその思いに向き合うこともなくなっていたのですが、ここ2、3年、国際社会における日本企業、ひいては日本人のプレゼンスが低下しているのを肌で感じることが多くなっていました。

これは何とか建て直さなければいけない。次世代を担う若い人に、グローバル社会で日本をアピールしてもらいたい、そのためにも、自分がこれまでビジネスの現場で吸収したものを若者に伝えたいと感じました。

同時に自分の経験をアカデミックな視点で考察したい、残したいという思いも沸き上がってきました。そんな時、ご縁をいただき、横浜市大に着任することになりました。

主体的に、自ら動ける人材育成のために

大学では現在「企業論」の授業を担当し、ビジネスシーンにおいて、実際に企業がどんなことを考え、どんな風に意思決定しているのか。どんなトラブルや問題が発生し、それに対しどう対処しているのか。といったことを具体的な事例をまじえ、リアルな形で伝えています。一方通行でなく、学生にも積極的な発言を促したり、資料中のキーワードを隠して考えてもらったりと、主体的に動いてもらうように心がけています。

また、ゼミにおいても実践的であることを意識し、原発や消費税に関し、賛成派と反対派に分かれてのディベートを行ったりしています。今の学生は潜在能力はすごくあるのに、それをうまく表現できない。自己主張する術を知らないという印象があります。私たち教員がそれを引き上げることが使命だと考えています。

多様な価値観を備え、世界へ

求められるのは、新しいものさし

若者に限らず、私たち日本人は無意識に「日本のものさし」が身に付いてしまっています。その理由には、島国という地理的な特性や、モノや文化の多くが国内のみで完結できていたという背景もあるでしょう。日本語という言語も独立した存在のものです。しかしこれからを担う若い人には、もっと多彩なものさしがあることを知ってほしい(CLOSE UP 2)。そのものさしを手に、世界で羽ばたいてほしいと願います。

違うものさしを手に入れるには、やはり現地の空気に身を置くのが一番です。早いうちから海外旅行を経験するのもいいですし、留学や海外でのインターンシップももちろん確かな手段です。私のゼミでも、企業時代のネットワークを活かした、海外フィールドワークの実施を考えています。

CLOSE UP 2

日本の常識は海外の非常識?

ものさしの違いは、大きな事でなくとも、日常の何気ないシーンにあります。例えば中国や台湾でカラオケに行くと、日本だと歌う順番は、メンバーがひと回りすると、また最初の人からという感じですが、向こうでは歌いたい人が、順番などお構いなしにどんどん入れていくのが普通です。言葉でも向こうの人は英語の発音が違っていても全く気にしません。

国際会議などの場でも、日本人は議長が話を振ってくれるだろうと待っていますが、それでは世界では通用しません。時には手をあげて、人を押しのけてでも自分をアピールする。そんな発想の転換も、海外に出て、現地のものさしに触れることで、見えてくるはずです。

日本の再生を担える人材を

私自身が今一番関心のあるテーマは、やはり「日本企業及び日本の再生」です。昨今、韓国や台湾企業の躍進、それと対照的な日本の家電メーカーの凋落がニュースを賑わせています。なぜこういう現象が起きているのかを、総合的に考察していきたいと思っています。

日本企業はこれまで「技術」をベースに、それを安く提供する方向で事業を拡大してきましたが、どう世界でブランド構築し、どうシェアを獲得していくかといった「ビジネスモデル」のアイデアが足りなかったのではないかと思います。そんな現状の打破に必要なのは、日本国内でなく、世界から日本の今と未来を見る目です。私のこれまでの経験が、真のグローバリズムを備え、これからの日本を牽引してくれる。そんな人材の育成に寄与できればうれしいですね。

(2012.12.21 広報担当)

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