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HOME > 教員からのメッセージ − At the Heart of YCU > 快適のための、笑顔のためのシステムづくり。それもまた、経済学がめざすものです − 中村彰宏教授

快適のための、笑顔のためのシステムづくり。それもまた、経済学がめざすものです − 中村彰宏教授

豊かな社会や人の暮らしに貢献するミクロ経済学

マクロ経済学、ミクロ経済学という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。マクロ経済学が、GDPや国民所得、物価などを指標に、国家や国民という大きな視点から経済のメカニズムを研究するものである一方、ミクロ経済学は、企業や個人などの個々の経済活動から市場メカニズムを分析し、資源の効率的な配分について考察する学問です。

ただ現代においては、マクロ経済学はミクロ経済学の応用分野のひとつという面もあり、両者の区分は必ずしも明確なものではありません。

私の専攻はミクロ経済学ですが、ミクロ経済学の最終的な目的は、経済活動を通しての消費者、あるいは企業の満足度やメリットが、できるだけ大きくなるような道筋や方法論を提示することだと考えています。


中村彰宏(なかむら・あきひろ)
国際総合科学群 教授 (ミクロ経済学)
(学部)国際総合科学部経営科学系経済学コース
(大学院)国際マネジメント研究科
郵政省(現総務省)時代から、携帯電話をはじめとするICT分野の競争政策を研究し、その論文は、Information Economics and PolicyやTelecommunications Policy等の国際論文誌にも取り上げられている。
研究者情報   授業シラバス 

例えば、それを達成する方法のひとつとして、現在、業種ごとにある様々な規制を撤廃、あるいは緩和することで自由競争を促し、結果的に商品やサービスの値下げを実現し、消費者メリットを生み出すという方法も考えられます。

私の研究テーマのひとつである情報通信分野においては、携帯の番号ポータビリティ導入により、会社間の競争から値下げが起こり、消費者の満足向上につながりました。これもミクロ経済的に見れば、ある種の成功例だといえます。より豊かな人の暮らしや、快適な社会づくりに貢献する。それがミクロ経済学の果たすべき役割だと思います。

復興の効率を上げる、的確なニーズのキャッチ

昨年の震災を機に、現在、あらたな研究テーマにも取り組んでいます。
通信機能を備えた電力メーターである「スマートメーター」は、消費者に現在の消費電力や料金を伝えることができ、またメーターに装備された機能を活用することで、再生可能エネルギーの導入も行いやすくなるなど、エネルギー問題の前進にもつながるデバイスです。日本での普及はこれからですが、どのくらいの料金設定であれば消費者に受け入れてもらえるかなど、マーケティングリサーチに近い形でその実用化の研究もしています。

また、復興事業にかかる費用、コストを何に使うかの優先順位をつけることを目的に、インターネットによるアンケート調査を実施しました。調査対象者のうち4〜5割が、東日本大震災や阪神大震災など、何らかの震災の被災経験がある方でしたが、集計したところ意外にも目立つ声がありました。「震災後すぐに大量の水が届いたので、水道は止まっても意外に困らない」。水道、電気、ガス、通信…全てのライフラインが破壊された今回の震災では、技術者は衝撃を受け、後悔と反省から「あれもこれも、完璧に復旧させねば…」との思いを抱いていました。しかし経済学者として有限なコストを念頭に置けば、対象を絞り込む必要があるとの提案を行わねばなりません。そうした提案時に、被災者たちの生の声は大きな意味を持ってきます。

水以外にも、通信面を見てみると、音声、パケット、固定電話など色々な手段があります。当然、災害時にもすべて利用可能な状態がベストなのですが、そのシステムの実現には莫大な費用がかかります。アンケートで一番多かった声は「通話さえできればそれでいい」というものでした。

理想は理想として、人々の声を聞き、それに即した現実的な対策のためのサジェスチョンを行う。今回のアンケートからもわかるように、想定と現実のニーズにはギャップがあります。本当に必要なものが、必要とされている人や場所へ、スムーズに行き渡る社会へ。これからも復興というキーワードに対し、経済学が貢献できることを探り続けていくつもりです。

(右の写真は、2年生のゼミ「ミクロ経済学演習」のようす)

世の中を、経済のフィルターを通して見る意味

私は、授業やゼミを通して、学生にミクロ経済学の考え方を身につけてもらうとともに、経済学を現実の問題に応用できるようになってもらうことを目標にしています。

経営者やマーケッターは、日常の実務を通して、成功や向上のためのそれぞれの法則・方法論を身につけています。だからこそ、他のシチュエーションや業態に直面したとしても、その法則を当てはめ、柔軟に対応することができるのです。

例えば理系の物理や化学などを見れば、まず基礎となる法則を習得し、その後、繰り返し実験を行うことで、その法則を本当に自分のものとしていきます。経済においても同じことが言えます。基礎の理論を身につけたなら、趣味でも何でもいい。関心のある分野を選択し、経済学を用いて分析する。そうしたトレーニング、シミュレーションを繰り返すことで、本物のチカラが備わってきます。社会で活きる実践力、応用力を手に入れて、学生には次のステージを目指してほしいです。

(2012.5.18更新)

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