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生命医科学研究科修士2年 菊地杏美香さんが、第23回日本蛋白質科学会年会にてポスター賞を受賞!

2023.08.02
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  • 研究
  • 理学部

DNMT1の酵素活性化機構の構造基盤について発表し、数多くの演題から見事受賞

生命医科学研究科 構造生物学研究室 修士2年の菊地 杏美香さんが、2023年7月5日(水)から7月7日(金)に名古屋国際会議場で開催された第23回 日本蛋白質科学会年会において、「DNMT1の酵素活性化機構の構造基盤」について発表し、ポスター賞を受賞しました。
「構造生物学」分野には約170人が応募し、12人がポスター賞を受賞しました。かなり低い採択率の中、菊地さんは見事受賞しました。評価項目は、「研究内容」と「発表の工夫」の2項目とのことで、ポスター発表に加えて実施されたポスター賞フラッシュトーク(スライド1枚と持ち時間1分間のプレゼンテーション)も評価されました。
受賞者
生命医科学研究科 構造生物学研究室
修士課程2年

菊地 杏美香きくち あみかさん

指導教員:有田恭平 教授
(https://researchmap.jp/read0146480)

発表題目
Structural basis for the novel activation mechanism of DNA methyltransferase DNMT1
(和訳)DNMT1の酵素活性化機構の構造基盤
 
今回、受賞した研究内容について、菊地さんに解説していただきました。
私たちの身体は約300種類の細胞で構成されています。これらの細胞は基本的に同じ塩基配列を持っていますが、形や働き (形質) はそれぞれ異なっています。DNAメチル化は、多様な細胞の形質を決める重要な目印です。細胞の形質を維持するため、DNAメチル化の情報は細胞分裂後も正確に伝達される必要があり、この伝達にはDNA維持メチル化と呼ばれるメカニズムが働きます。
本研究では、DNA維持メチル化に必須のタンパク質、DNAメチル化酵素DNMT1の構造に着目しました。DNMT1は、自らの酵素活性化にユビキチン化されたヒストンH3 (ユビキチン化ヒストンH3) を必要とします。しかし、ユビキチン化ヒストンH3の結合後、DNMT1が活性化状態に至るまでの分子機構はこれまで不明でした。私は、DNMT1の活性化機構の解明のために、ユビキチン化ヒストンH3と基質である片鎖メチル化DNAが結合したDNMT1の構造を、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析で決定しました。そして、決定した構造からDNMT1中に活性を制御する新しいモチーフを発見し、試験管内や哺乳類細胞を用いた実験で、わずか2つのアミノ酸残基がDNMT1の活性化に重要であることを明らかにしました。
DNMT1による異常なDNAメチル化は、細胞をがん化することが知られています。本研究で発見した新規の活性制御部位は、DNAメチル化を制御する創薬開発への展開にもつながると期待されます。
 
図:実際のフラッシュトークで使用したスライド
受賞者「菊地さん」のコメント
この度は、本学会で多くのポスター発表者の中から名誉ある賞を受賞することができましたこと、大変嬉しく思います。これも有田教授をはじめ、構造生物学研究室のみなさまが日頃から熱心にご指導くださった賜物です。この場をお借りして心より感謝申し上げます。
私が所属研究室を決めたきっかけは、有田研に所属していた郡聡実さんの本学会の受賞記事でした (https://www.yokohama-cu.ac.jp/admissions/yokoshiri/students/2018/satomi_kori.html) 。活躍されている先輩の姿をみて、私もこの研究室で頑張りたい!と強く思ったのを今でも覚えています。そんな思い入れのある本学会のポスター賞を受賞することができてとても感慨深いです。
ポスター発表では多角的な視点から研究についてアドバイスをいただき、大変有意義な時間を過ごせたと同時に、今後の研究に対するモチベーションの向上にもつながりました。これからもより一層研究に励み、研究の面白さを多くの人に伝えられるように精進します。


指導教員:有田教授のコメント

おめでとー!!!
今回もマジすごいです!!!

何がマジすごいかと言うと、横浜市大鶴見キャンパスは蛋白質の構造解析、計算科学、機能解析など蛋白質科学全般の研究が盛んです。蛋白質科学に特化した学会でこのような賞を獲得したことは、横浜市大鶴見キャンパスの研究力と存在を大いにアピールしました。蛋白質科学会のポスター賞の応募者は近年増加しており、その採択率は10%を切っており、科研費 基盤研究の採択率よりも低い(‘Д’)。 採択はよほどの研究成果とプレゼン能力がないと難しい状況です。このような状況で、日本の蛋白質科学の名だたる研究室の猛者どもとガチで争い、栄誉を得たことはほんとうにすばらしいです(#^.^#)。
現在修士2年生の菊地さんは今後博士後期課程に進学する予定です。有田研はまだまだ発展途上で、さらに飛躍しないといけない立場にあります。今後も菊地さんが研究室を牽引して高いレベルに引き上げていくリーダーシップを発揮することを期待しています。そして、菊地さんに刺激を受けた次の世代の学生が育っていき、有田研究室そして鶴見キャンパスがさらに盛り上がっていくことを期待しています。
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