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生命ナノシステム科学研究科 阿部 満理奈さんが日本結晶成長学会の講演奨励賞を受賞!

2022.01.07
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「結晶成長過程におけるタンパク質結晶の微小なねじれの観察」についての講演が評価されました!

生命ナノシステム科学研究科 博士後期課程2年の阿部 満理奈さんが、2021年10月27日(水)~10月29日(金)にオンラインで開催された、「第50回結晶成長国内会議(JCCG-50)」で講演を行い、講演奨励賞を受賞しました。
受賞者

生命ナノシステム科学研究科 
物質システム科学専攻 博士後期課程2年  
阿部あべ  満理奈   まりな さん

講演題目 

「結晶成長過程におけるタンパク質結晶の微小なねじれの観察」


発表内容
—今回の受賞に至った研究内容について阿部さんに解説していただきました。

皆さんはタンパク質と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?タンパク質はヒトの体内にも感染症の原因となるウイルスにも存在しています。このようなタンパク質の構造を知ることは、創薬や生命現象の解明において重要とされています。タンパク質分子の3次元構造を知るために、一般的にはタンパク質結晶を作製し、X線構造解析が行われます。この解析の精度は使用する結晶の品質に強く依存します。そのため、高品質なタンパク質結晶の育成が求められています。
私の所属する研究室では2種類のタンパク質結晶が半導体シリコン結晶のような結晶欠陥を含まない極めて高品質な結晶であることを発見してきました。一方で、このような高品質な結晶は他のタンパク質結晶では得られていません。これは、他のタンパク質結晶は何らかの欠陥を含んでいる可能性を示しています。
本研究ではこれまでにX線構造解析が行われていたようなタンパク質結晶が実は微小にねじれていたということを明らかにしました。そのねじれの角度の大きさはおよそ10-5度程度と非常に小さいです。そのため、光学顕微鏡などの一般的な測定方法では見ることができません。今回、X線トポグラフィという手法により、世界で初めて観測に成功しました。このような非常に小さなねじれは、タンパク質結晶のみならず、他の多くの無機結晶や有機結晶においても存在している可能性があります。
また、本研究ではタンパク質結晶の微小なねじれが結晶成長とともに均一に緩和する(ねじれが小さくなる)ことも発見しました。得られたデータの解析により、結晶中のねじれが小さいほど結晶の品質が高いということも分かっています。
以上の結果より、大きく成長した(ねじれが小さい)タンパク質結晶を作製することで、より高品質な結晶が得られると期待されます。本研究は結晶成長学の発展に新たな知見を与えることから、日本結晶成長学会で高い評価を得ることができました。

阿部 満理奈さんのコメント

この度は素晴らしい賞を頂くことができ、大変光栄に思います。これは博士前期(修士)・博士後期(博士)課程を通して取り組んできた研究であり、専門家の先生方に高く評価して頂けたことをとても嬉しく思います。これまで、悩むことも多くありました。しかしながら、日頃から熱心にご指導くださる小島 謙一先生、橘 勝先生、鈴木 凌先生や研究活動を支えてくれた家族、研究室メンバーなど多くの方々のご支援によりこのような成果を上げることができたと思います。心より感謝申し上げます。これからも努力を惜しむことなく、研究活動に努めて参ります。

指導教員 橘 勝 教授のコメント

阿部さん、講演奨励賞おめでとうございます。日ごろの努力が実を結んで本当に良かったと思います。私も発表を聴いていましたが、質疑応答も含め他の発表者と比べて群を抜いていたように思いました。常識を覆すような研究内容であり、これも阿部さんの緻密な実験や解析がなければ達成できなかった成果だと思います。大変なことも多かったと思いますが、研究の面白さや醍醐味を感じることができたのではないでしょうか。この経験を、研究室メンバーをはじめ多くの後輩たちにも共有してもらえると嬉しいです。今回の受賞を機に、阿部さんがさらに飛躍、活躍してくれることを期待しています。

問い合わせ先

横浜市立大学 広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp


 

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