難病の原因を解明し、
病気に苦しむ子どもたちを笑顔にしたい
医学群 小児科学(発生成育小児医療学)教授
伊藤秀一
いとう・しゅういち

未来を見据えて取り組んでいるもの
小児医療の未来を切り開く環境省プロジェクトに参加

日々、患者さんと接している中で、「いつから、なぜこのような病気になったのか」とよく聞かれますが、その多くの場合が答えようがなく、明確に原因を説明できるのは、感染症や先天的に遺伝子に異常があるなど、実は一部に限られています。遺伝子に異常がある場合でも、発症する人としない人がいますから、確実なことは言えません。
私の専門分野でも、ネフローゼ症候群[keyword2]は原因不明ですし、他にも近年、特に患者数が増えている川崎病[keyword3]も原因不明です。川崎病はまさに右肩上がりで患者数が増えている病気で、年間約1万4,000人、200人に1人くらいの子どもがこの病気を発症しています。
研究とともに、人材育成に力を入れていきたい

私はリウマチ疾患や腎臓病など、長期に治療を必要とする病気のお子さんを沢山診させて頂いておりますが、その過程で時々、思いがけないことがあります。例えば、小さい頃に重症な病気を発症したお子さんが、新たに開発された治療法により、普通に学校生活を送れるようになり、ある時外来で「医師になるために医学部に入りました」とか「看護師を目指して頑張っています」などと言ってくれることです。そのたびに自分たちの仕事に喜びとやりがいを感じており、私は小児科医という仕事が大好きです。若い皆さんには、どの分野であれ社会に貢献し、自分らしく活躍できる仕事を見つけてほしいと思います。私はこれまで本当に恵まれていて、さまざまな人に育てられ、教えられ、支えられてきました。小児科医は未来のために献身する仕事で、これからも小児科医という仕事にプライドと愛情を持って、診療に研究に活躍する人材の育成に一層力を入れたいと思っています。
私は、医学生や若い医師に次のABCが大切だと言っています。それは、「A(AMBITION)、B(BORDERLESS)、C(CHALLENGE)」です。(A)大志と情熱を持ち、(B)人種、国、専門性、さらには自分の限界を乗り越え、(C)挑戦し続けること。YCUのOBとして、学生や若い医師がYCUで自分の人生の目標となるABCを見つけてもらえれば嬉しいです。Keyword 2ネフローゼ症候群
尿の中に大量の蛋白質が漏れ出て、血液中の蛋白質が減ることで浮腫(むくみ)、血液中のコレステロールなどの脂質の上昇等が現れる疾患。主に3~5歳の子どもによく見られる病気で、年間1,000人ほどの小児患者が発症しているが、30%程度の患者は成人まで症状が続く。
Keyword 3川崎病
5歳以下の子ども、特に1歳前後の乳幼児によく見られる病気。高熱が5日以上続いて全身に赤い発疹ができ、唇が腫れて出血したり、手足が赤く腫れたり、目が充血したり、リンパ節が腫れる。いまだに原因は不明で、心臓の冠状動脈に動脈瘤などに重い後遺症が残ることもある。病名は、発見者の川崎富作博士の名前に由来している。(2015年3月掲載)
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伊藤秀一