人々が生き生きと暮らす現代の
ニーズに合ったまちづくりを考える

国際総合科学群 都市計画論 准教授

中西正彦

なかにし・まさひこ

中西正彦

理想的な「都市計画」に必要なこととは?

「公共の利益」と「個人の権利」のバランスが重要

中西正彦なかにし・まさひこ

国際総合科学群 都市計画論 准教授

(大学)国際総合科学部 国際都市学系 まちづくりコース
(大学院)都市社会文化研究科
土地利用計画を中心とした都市計画の制度を専門に研究。自治体の都市計画策定にも関わり、時代のニーズに合った都市計画・まちづくりのあり方を研究している。

 都市計画と聞いてイメージするものは、「整然とした都市の整備」、「道路整備や橋の建設といった土木工事」、「公園を作ったり緑を守ること」など、人によってさまざまでしょう。これらはすべて都市計画といえますが、共通しているのは「良好な都市空間や住環境を実現したい」ということです。これが都市計画の大きな目的なのですが、そのためには、建物の建設やインフラ整備といったハード面だけでなく、法制度の整備や近年では多様な主体の合意形成の仕組みづくりなど、ソフト面も重要な課題となります。
 良好な都市計画を実現するには、まずそこに関わる人々の合意形成を経て進めていく必要があります。例えば、望ましい都市とはどんなものか、都市の将来像についてどんなイメージを持っているか、人によってさまざまな意見、理想があるはずです。その中で話し合いの場を持ち、合意、計画、実現へと進んでいくわけですが、このプロセスの中には多くの壁が待ち受けています。
 話し合いの中で、特に問題になりやすいのは、公共の利益と個人の権利の衝突です。立場や価値観により個々の意見が異なる中、このバランスをどう保つかが非常に難しく、現代の都市計画では、「権利調整」が最も重要なポイントになっています。私の研究テーマのひとつは、そうした問題を解決するための法制度整備です。

 

横浜で実施している二つの取り組み

 私が現在取り組んでいる研究の中で、力を入れているものの一つが、「環境に配慮した都市計画のあり方」です。例えば、横浜市の環境施策を支援する調査・研究を行う「環境科学研究所」には、ヒートアイランド現象を研究している部門があり、建物の形や数、配置が風通しなどにどのような影響があるかなどについて研究しています。
 熱環境は、生活の快適性に大きな影響を与えますので、私はこの研究部門の協力を得て、建物の規制がかかっているところではどのような変化があるか、今後シミュレーションによって検討する予定です。対象は、横浜市の関内地区を考えていますが、余裕があれば金沢区役所の近辺も候補地として考えています。実現すれば、都市部(関内)と郊外(金沢区)で、それぞれの熱環境と都市計画の関係を研究することができます。
 このようにYCUの地元で行っている実践的研究ではもうひとつ、大学COC事業[keyword1]として、同じまちづくりコースの三輪律江准教授と共に取り組んでいることがあります。高齢化が急速に進む横浜市金沢区の金沢シーサイドタウン(並木地区)を対象とした、街の再生・活性化のモデル事業で、商店街の空き店舗を活用し、サテライト拠点を設けました。ここを拠点として高齢化に備えた健康まちづくりやコミュニティの活性化に取り組んでいますが、普段は、地域の方々がお茶を楽しんだり、打ち合わせに使ったり、イベントを開催できるスペースとなっています。まずは3年間で、地域の方々が主体となって運営できる体制を整え、それ以降は側面から支援する形で私たちも関わっていくことを目指しています。並木地区の事例がモデルケースとなり、他のまちでもYCUが確立した手法を部分的にでも取り入れて地域活性化につなげてもらえるようになる、というのが私たちの理想です。

Keyword 1大学COC事業
文部科学省が選定した、「地(知)の拠点整備事業」。自治体を中心に地域社会と連携し、全学的に地域を志向した教育・研究・社会貢献を進める大学などを支援するもの。課題解決に資するさまざまな人材や情報・技術が集まる、地域コミュニティの中核的存在としての大学の機能強化を図ることを目的としている。YCUは2013年度に「環境未来都市構想推進を目的とした地域人材開発・拠点づくり事業」を提案し、採択された。COCはCenter Of Communityの略。

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