進化する医療技術を駆使し、
婦人科がんの治療に挑んでいます
医学群 がん総合医科学 教授
宮城悦子
みやぎ・えつこ
婦人科がんで苦しむ患者さんとともに
卵巣がんと子宮頸がんの研究に注力
宮城悦子みやぎ・えつこ
医学群 がん総合医科学 教授
(大学院)医学研究科
(附属病院)産婦人科
YCUには2014年4月、医学群に「がん総合医科学領域(教室)」が新設され、私も担当教員のひとりとして活動しています。がん治療には外科手術、放射線治療、抗がん剤治療(化学療法)と三つの柱となる治療法がありますが、がん総合医科学領域ではそれぞれの治療の枠を越え連携し、患者さんにとってよりよい医療を提供することをコンセプトとしています。
私は婦人科腫瘍専門医としてメンバーに加わっており、主に婦人科がんの診療と研究をしています。婦人科がんの中で最も長く研究しているのは「卵巣がん」です。卵巣は女性ホルモンを分泌している臓器ですが、閉経するとホルモンを分泌しなくなり、小さくなっていきます。その卵巣や卵巣と子宮を結ぶ卵管に悪性腫瘍ができ他の部位に転移すると、腹水や胸水がお腹や胸にたまり、進行すると完治することが難しくなってきます。
この卵巣がんは特に欧米で発症頻度が高く、「生涯の出産人数が少ない」、「出産経験がない」、「動物性脂肪の摂取の増加」なども要因のひとつと考えられており、さらに「家族性に卵巣がんと乳がんの発症が多くなる遺伝子の関与」も知られています。近年、生活スタイルの欧米化や晩婚化が進むにつれ、日本でも患者数が増えてきています。
もう一つ、近年私が特に力を入れて取り組んでいるのが「子宮頸がん」の研究です。子宮頸がんのほとんどは、性交渉で感染することで知られるヒトパピローマウイルス[keyword1]の感染が契機となって発症することがわかっており、子宮の入り口である子宮頸部から発生します。ウイルスそのものは多くの男女が感染するありふれたもので、感染しても多くの場合は排除され、明らかな病変をつくるのはその一部であるとされています。このウイルスが子宮頸がん発症の主な要因とわかっているため、早期に発見されれば比較的治療しやすいがんと言われています。
子宮頸がんは予防できる
私が子宮頸がんに強い思い入れをもっているのは、若い女性の罹患率が高いことと、早期発見が容易で予防ができるからです。私が研修医だった頃は、若くして亡くなる方を何人も見てきました。その中には、出産時に子宮頸がんが見つかり、2歳のお子さんを残して亡くなった方もいました。また、一人娘を子宮頸がんで亡くし、悲しみに暮れる親御さんを前に、いたたまれない気持ちを味わったこともありました。そんな悲しい思いをするたびに、「何とかしなければ」という気持ちでいっぱいになりました。
その子宮頸がんも、現在は医学の進歩により、「予防できるがん」「早期発見できるがん」のひとつになっています。現在、子宮頸がんの予防策としては、定期的な検診が重要で、20歳以上の女性に対し、2年に一度、異常がなくても検診を受けることを勧めています。若い女性たちが定期的に検診を受けることで、子宮頸がんで苦しむ人を大幅に減らすことができますが、日本は欧米に比べ受診率が著しく低いという現状があります。また、感染を予防するワクチンも開発され世界中では広く思春期の女性に接種されていますが、日本では副反応の問題により、現在定期接種の積極的勧奨が見合わされている状況です。そこで、どうすれば検診の必要性を含む子宮頸がん予防の重要性を若い女性に伝えられるかを研究テーマとして、「横浜・神奈川子宮頸がん予防プロジェクト」のプロジェクトリーダーとして取り組んでいます。
Keyword 1ヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)
性交渉経験のある男女の多くが、生涯に一度は感染するとされるウイルス。子宮頸がんのほか、肛門がん、腟がん、陰茎がん、頭頸部のがんなど、さまざまな病気の発生に関わっていると言われている。-
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