進化する医療技術を駆使し、
婦人科がんの治療に挑んでいます
医学群 がん総合医科学 教授
宮城悦子
みやぎ・えつこ

責任ある研究者として社会に貢献したい
大学への感謝の気持ちを忘れずに

医師、教員でもあり、研究者でもある私は、基礎研究と臨床研究の橋渡しをすることも重要な役割だと考えています。基礎研究の成果を臨床の現場でスムーズに生かすことは、よりよい医療を提供するために必要なことです。
YCUで医学を学んでいた私は4年生の時に、後に学長に就任された梅田誠先生の抗がん剤に関する薬理学の講義で、基礎研究の奥深さに衝撃を受けたことをよく覚えています。その後、「梅田先生の下で研究したい」と思い大学院に進学し、当時先生が所長を務められていたYCUの附置研究所である木原生物学研究所で学びました。そして、現在も卵巣がんの腫瘍マーカー[keyword3]の研究に力を入れています。卵巣がんの腫瘍マーカーは血液で測定しますが、初期のがんでは陰性を示すタイプもあり、症状が出る前の早期発見にはつながらないのが現状です。そのため、より精度の高い腫瘍マーカーを研究し、卵巣がんの早期発見の実現を目指しています。私たちが進めている研究が実を結ぶことで、未来の医療に貢献できるならば、研究者としてこれ以上ない喜びです。
私はYCUで学び、医師・教員・研究者になって本当に良かったと思っています。そして、母校にとても感謝しています。先生方に指導をしていただいたことはもちろん、カリフォルニア大学サンディエゴ校への派遣教員として短期留学させていただいたこと、子どもを育てながらもみなさんのサポートのおかげで働き続けることができたこと、素晴らしい化学療法センターを新たに作っていただいたことなど、数え出したらきりがないほどです。その恩返しとして、私は自身の後輩である学生たちの育成にも力を入れていく決意です。
YCUで医師になって良かったと思ってほしい
数年前から、産婦人科の医師不足の問題が表面化し、妊娠しても出産できる病院がないことが社会的な問題になりました。この時期は私たちの病院も例外ではなく、関係者全員で苦しい時期を切り抜けてきたのですが、引き続き多くの地域に貢献できる産婦人科医を輩出するための努力を続けています。例えば、1年生の最初の講義で、「婦人科がんを科学する」という講義を担当しています。この講義は医学科や看護学科の学生のほか、地元の横浜市立金沢高校からも申し込みがあり、数人の高校生が参加してくれています。この学生の中から、将来の産婦人科を担う医師が数多く育ってほしいとの願いを込めながら、講義では産婦人科医のやりがいと魅力を伝える努力をしています。
全国的にはまだ産婦人科医師が不足していると言われる中、様々な取り組みにより附属病院には多くの若い産婦人科医が集まるようになりました。そのような恵まれた環境にあるからこそ、集まってくれた人材を大切に育てていくことは私たち教員の責務であると考えています。
講義ではいつも、学生が興味を持ち、旺盛な好奇心をくすぐることができるようにと心がけています。また、「今日はこんな講義があったんだよ」と家庭や友人に話をしてもらえるよう、資料にも話す内容にも気を遣っています。そして、将来医師として自立した時、私のようにYCUで学んで本当に良かったと思ってもらいたいと、心から願っています。
Keyword 3腫瘍マーカー
がんにより産生される物質で、腫瘍の目印(マーカー)となるもの。がんの診断や患者の再発の有無や進行の状況を知るなど、100%特異的ではないが臨床で有用な検査方法。臨床検査の場で多数の血液中の腫瘍マーカーが使用されているが、現在はまだ理想的な検査とは言えない。
また、ピアノの練習を10年ほど前から始めました。最初はクラシックピアノだったのですが、最近はとてもキレイな音を出す電子ピアノを購入し、夜中でもヘッドホンをしながらいろいろなジャンルの曲を弾いてストレス発散しています。
(2015年3月掲載)
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