患者さんのために科学的根拠のある
看護ケアの研究を深めたい
この思いは世界へと続きます
医学群 看護生命科学 教授
赤瀬智子
あかせ・ともこ

日本の看護学を変えていきたい
薬剤師から看護師、そして研究者の道へ

赤瀬智子あかせ・ともこ
医学群 看護生命科学 教授
(大学院)医学研究科 看護学専攻
高校生の頃に「患者さんに近い医療者になりたい」と思い、科学が好きだったこともあり、薬学部に進学しました。卒業後は薬剤師の道へ進もうとしたのですが、病院実習の時、患者さんを一番近くで支える看護師さんに接し、憧れを感じるようになりました。そして、進路変更を決心し、受験勉強をして、大学卒業と同時に看護の道に進みました。
看護師免許を取得後、病院で勤務するようになると、現場で疑問に感じることが出てきました。医療は今も日々進化していますが、原因不明の病気やエビデンス(科学的根拠)がはっきりしないものもたくさんあります。当時、感染管理を行ってもある疾患に肺炎を合併すると80%以上の患者さんが亡くなる場合があり、私は担当の医師とともにカルテ調査を行い、原因を追究しました。この経験がきっかけとなり、しっかりとしたエビデンスを持って、患者さんの役に立つ看護を提供したいと強く思うようになりました。そして、「エビデンスがないなら自分で証明しよう!」と決意し、“根拠のある疾病や薬の管理方法、看護ケアの確立”を目指して研究者の道を歩むようになりました。
科学的根拠を伴った看護ケアを提供するために
医師の役割は、病気そのものの診断や治療などですが、一方で看護師は、患者さんに最も近い立場で病気の予防や治療の管理などを行う役割があります。その中でも、私が特に力を入れているのは、看護師だからこそ気付くことができる患者さんの小さな苦しみをケアしていくことです。
小さな苦しみの中にも、はっきりとした原因が分からないものがあるので、私はそのたびに「医師や基礎研究者でなくても根本的な原因を追究すべきだ」と思っていました。例えば、治療中に皮膚が荒れ、かゆみに苦しんでいる患者さんがいたら、その原因を探るべきだと思います。そして、そのメカニズムを解明し、原因に対する科学的根拠のあるケアを提供することが患者さんのためだと考えています。
近年、世界の看護学の中では、バイオロジカルサイエンス分野が重視されているのですが、日本ではこの学問分野はあまり普及していません。私が担当している看護生命科学領域という名称も、この分野の普及を願って私が名付けたもので、私はYCUを日本の看護系大学におけるバイオロジカルサイエンス分野のさきがけにしたいと考えています。YCUの看護学科独自の基礎系研究室は、国内の看護系大学の中で5本の指に入るほどの規模を誇っています。このように、日本の看護学を変えていくことは、「患者さんのために根拠のある看護ケアを提供したい」という一心で突き進んできた私の使命であると思っています。
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