人々が生き生きと暮らす現代の
ニーズに合ったまちづくりを考える
国際総合科学群 都市計画論 准教授
中西正彦
なかにし・まさひこ

時代に合わせた法制度改正が必要に
制定時の状況とその後の変遷を調査・研究

快適な市街地空間を実現するには、法律や条例を整備する必要がありますが、過去に設けられた制度の中には、当時の目的が現在の状況に当てはまらなくなったり、運用されているうちに本来の目的を失ってしまうなど、時代に合わなくなったというケースがよく見受けられます。そうした問題点を分析するため、私は制度が設けられた当時にまでさかのぼり、その制度が設けられた理由や過程を調査する研究にもグループで取り組んでいます。
例えば、日影規制[keyword2]の研究もその一つです。日影規制ができたのは日照に関する紛争が多発した1970年代ですが、自治体の中には独自の取り組みで、いち早く制度化していたところがありました。そこへ、国が新たに建築基準法として日影規制を定めたのですが、その中には自治体が独自に制度化していた内容が反映されておらず、結果的に住民の権利を守れなくなってしまったケースもありました。そこで私たちの研究グループは、制度が導入された当時の状況を知るため、当時の関係者に議論のプロセスを聞いたり、議事録などの当時の記録を分析することで、「日影規制の成立に関する研究」という論文をまとめ、日本都市計画学会に提出しました。
高齢化社会の実情に合わせた、規制が必要に

既存の制度が時代に合わなくなり、現代のまちづくりを阻害しているケースは、他にも多数あります。そういったケースの中で、私は特に人口減少社会・衰退社会における建物や土地の用途規制についての研究を進めています。
高齢化が進む昨今でよくあるのが、高齢者介護サービス施設を必要としている地域に、過去に定められた規制のため開設できないという問題です。元をたどれば、この用途規制は、「閑静な住宅地に不特定多数の人が集まる施設は必要ない」という発想から設けられたもので、「住宅地にオフィスなどの施設を作ることはできない」と定めたものでした。しかし、高齢者の割合が高くなってくると、たとえば高齢者サービス業種が必要になるなど、そのようなことは言っていられなくなります。とはいえ、単純に規制を緩めるだけではまた別の問題が発生しますし、規制が設けられた当時に危惧したようなことにもつながりかねません。
そこで、その時代に合った新しい用途規制を考える必要が出てきますが、この用途規制を変えるとすると、今度は変えてほしい人と変えてほしくない人の権利調整が難しく、思うように計画が進みません。そうした時にどう対処すべきかということも、私にとっての大きな研究テーマになっています。
Keyword 2日影規制
日影を一定の時間内に抑えるため、建築物の形態を制限し、周辺の居住環境を保護した規制。日本では、マンションなど中高層建築物の建築が盛んになった1970年代に、日照権を巡る訴訟が頻発。これに伴い、高さを制限するなどの規制が設けられた。-
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