臨床の現場や子育て支援に役立つ
心理学の研究を目指したい

国際総合科学群 臨床心理学 准教授

平井美佳

ひらい・みか

平井美佳

YCUの新たな取り組みと、学生に伝えたい研究の魅力

ジェンダーの視点でキャリア形成を考えるユニット研究

 2015年度からの学内の新たな取り組みとして、「現代社会とジェンダー[keyword2]」という総合講義を開講します。これは、コミュニケーション論が専門の佐藤響子先生を研究代表者として、専門分野の異なる教員が集まって行う「ジェンダーの視点から大学におけるキャリア形成教育プログラムを構築する」というユニット研究プロジェクトの成果の1つで、私も関わらせていただいています。女性や男性が共に働くことや子育てをすることについて、我々が持っている思い込みや、現在の社会に何が足りないかに意識を向け、これからの社会を担う学生たちに考えてもらうことを目的としていています。
 言語学、生命科学、経営学、文化人類学、心理学の各分野のメンバーで勉強会や調査をしてきました。勉強会では、それぞれが専門分野の視点で発表を行い、議論し、問題を共有してきました。たとえば、男女間のコミュニケーション場面で生じる摩擦の事例を取り上げ、お互いの専門領域からどのようにアプローチできるのかを話し合いました。さらに、このユニット研究の一環として、YCUの卒業生の卒業後のライフコースについて調べるアンケートや大学生のグループインタビューも実施しました。
 この講義は、毎回講師が変わるスタイルで実施予定で、それぞれの分野の視点からジェンダーに関する問題を話していきます。また、行政や企業からのゲスト講師にも登場していただき、男女が共に働く社会環境について話をしていただく予定です。

 

素朴な疑問、最初の「なぜ?」を大切に

 心理学研究の魅力のひとつは、日常の中で抱いた人間の心や行動に対する素朴な疑問について、データで示していくことにあると思います。もちろん、このためには先行研究を徹底的に調べ、実験や調査を綿密に計画することが大切です。ですから、苦しい時もあるでしょう。けれども、学生にはこのおもしろさをぜひ知ってほしいので、ニュース、映画、ドラマを観て思ったことなど、日々の生活の中で感じた素朴な疑問、自分が抱いた「なぜ?」という気持ちを大切にしてほしいと思っています。
 私のゼミに所属する学生も、それぞれ素朴な疑問を基にユニークな研究を進めています。卒業論文では、たとえば自身が「スマホ依存」であると気づいた経験から、大学生のスマホの利用状況や心理的依存の程度、他者の過度な利用についての認知について調査した学生もいます。また、ある学生はサークルでの仲間関係の体験から、集団の中でメンバーの関係を故意に操作してダメージを与える「関係性攻撃」をテーマにしました。この学生は、まず、どのような時に人は関係性攻撃をすると思うかについて幅広く意見を集めた上で、具体的なシーンを作成して提示し、「あなただったらどうするか?」、「どう思うか?」を大学生らに尋ねました。このように、私は学びとはこうしたちょっとした疑問をきっかけに始まるもので、学生たちにはそういった自分自身の好奇心を大切にして、ワクワクしながら自分の研究に取り組んでほしいと思っています。

Keyword 2ジェンダー

社会的・文化的な性差。いわゆる「女性らしさ」や「男性らしさ」といったステレオタイプ(思い込み)や、性別による役割期待がある。ファッションや言葉遣い、家庭や仕事上の分担、価値観や考え方、コミュニケーションの取り方にも影響が及ぶ。

専門家としても子育て支援に積極的に関わりたいと考えていますが、私自身も働きながら子育ての苦楽を経験しました。子どもが育った保育園で知り合った「ママ・パパ友」たちは、子どもが大きくなった今でもよく集まったり、旅行したりするほどの大切な存在です。地域における人との繋がりは、とても重要だと思います。災害などのいざという時や、日々の小さな悩みについても、このようなネットワークに支えられ、救われることがあるでしょう。私自身もずいぶん支えてもらいました。これはとても恵まれたことであり、日々、そのありがたみを噛みしめています。

(2015年3月掲載)

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